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「スーパーマリオブラザーズ」宇宙戦争映画に足りないものがここにある。

 5月1日映画の日、公開されたばかりの映画「スーパーマリオブラザーズ」を観に行った。直前まで別日にしようかと思うほどの満席状態。映画が安い日というのもあるだろうが、意外とみんな映画館に来るんだなあ。若いおしゃれなカップルがいたり、当然ファミリーも多めで多様な客層だった。

 映画はブルックリンから始まる。明らかにマリオってアメリカ人ではないよな…と思ったが、移民の国アメリカではこういうことは珍しくないのかもしれない。
 落ちこぼれの配管工兄弟マリオブラザーズ。まさかの父母も登場。二人に認められるために大規模配管工事を勝手にやろうとするが、謎の土管に吸い込まれてキノコ王国に飛ばされてしまう。
 マリオの映画と言えばボブ・ホスキンスの愛すべき「魔界帝国の女神」があるが、あちらは明らかにマリオを知らない人が作った珍品だった(ボブホスキンスにとってはロジャーラビットと並ぶ、監督がキャラのことを知らない名作シリーズだ!)
 対してこちらはさすがに21世紀のアニメ映画というべきか。任天堂が字幕にもかかわるくらいにがっつりゲームを移植している。
 冒頭からペンギン王国を襲うクッパ。なぜペンギン?とやや違和感を覚えるが、マリオ64に確かにペンギンのキャラはいたようだ。クッパの太鼓持ちのようにへこへこするカメックが良い。確かにゲームでは一度やられた大魔王を復活させたりと、クッパに次ぐ強敵だった印象だ。
 ところでそのカメックや、途中で出てくるタヌキマリオ。結構最近の要素が詰め込まれている印象。こういう歴史のあるものの映画化は、シンプルな初代をベースにすることが多い気がしていた。なのでゲームの「3」で出てきて近年復活したタヌキマリオや、ゲームをやったことがある人でないと知らないカメックが普通に重要なキャラとして出てくるのがマリオのものすごさを表している。
 それに、まったく嫌みがない。大人はつい「このキャラ知ってる?」的にマニアックな要素や小ネタをはさみたがるものだが(マーベルとか!)、この映画は大人が子どもたちの目線でプロとして作り上げた感じがした。作品愛、とかもあったろうがそんなものでごまかしていない凄み。スターウォーズに足りないものがここにある。
 とはいえ原作を子供のころ遊んだ身からすると敵キャラの代表クリボーが極端に出てこなかったり、同じく代表的な変身のファイヤマリオにはならんのかい、「ギャラクシー」のチコ的な自殺志願キャラは何だったの、など謎もあるが、作品のノイズにはならない。
 原作のマリオはセリフがない印象だったが、吹き替え版では見事に違和感のないマリオが出来上がっていた。ルイージ、ピーチはもちろん、クッパの憎めない悪役ぶりも一番いいバランスに収まっている。

 ちなみに公開前にピーチ姫が戦うのを「ポリコレだ!」と難癖付けてきた人たちは映画を見てどういう感想を持ったのだろうか。正直ピーチ姫なんてだいぶ昔からクリボーを踏みつけていた気がするが。

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