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Excelで複式簿記をするシステム「クルス会計システム」


Excelは立派な会計ソフトになる

1.会計ソフトは便利になったが高くなった

会社の経理などで使う様々な複式簿記の会計ソフトがありますが、いずれのソフトウェアも、初心者でも入力できるように手の込んだ機能が用意されているようです。ボタン一つで仕訳帳画面、元帳画面、試算表画面、固定資産管理画面、などなど様々な画面を切り替えたりできるものがほとんどです。また、簿記の知識がなくても入力できるように、会計科目や仕訳について解説をしてくれたりなど、便利な機能を取りそろえ、優れた会計ソフトとなっています。

しかし、このような機能が備わっている分、どの会計ソフトも値段が高く、5万円から7万円、あるいは毎月数千円の使用料を払うタイプのものまであります。しかも、昨今の物価上昇に伴い、購入価格や使用料が上昇してきています。

それに比べエクセルは、多くのパソコンに、標準装備されているか、または、自分で購入などして、すでの持っている方が多いでしょう。エクセルの搭載されていないパソコンの場合、後付けでマイクロソフトのオフィスなどを購入すると相当高くつきますが、それよりもKingsoftのSpreadsheetを購入すれば、格安で、Excelとほぼ同じ操作で使用することができます。ここで解説するエクセル会計のシステムも、どちらのソフトでも同じように使うことができます。Googleのスプレッドシートは、無料で利用できますが、コマンドの使い方などがエクセルと違っているため、ここでは解説しません。エクセルとKingsoftのSpreadsheetも、コマンドは微妙に違ってはいますが、それはこちらで多少説明をすることによって問題なく使えるでしょう。

2.Excelはシンプルな会計ソフトに早変わり

 Microsoft・Excel(エクセル)、または、KingsoftのSpreadSheetは、最も一般的な表計算ソフトですが、わずかばかりの関数機能を利用すれば、シンプルな会計ソフトとして非常に有効です。当「Excelで複式簿記をするシステム」を私の屋号名を冠して「クルス会計システム」と名付けさせていただきました。
 シンプルであるということは、大変理解しやすいということでもあり、利用者の判断でさらに改良することもできるのです。簿記会計に専門的な知識がすでにある方にとっては、詳しい会計の解説などは不要ですから、シンプルな機能だけもっているクルス会計システムの方がずっと使いやすく感じられるかもしれません。クルス会計システムは立派な会計ソフトなのです。なお、ここでいう会計ソフトというのは、複式簿記を使用した会計帳簿として、仕訳帳も元帳も試算表も財務諸表も何でも対応できる、有効なソフトであるということです。

クルス会計システムの紹介

1.クルス会計システムの長所

 クルス会計システムのデータをUSBメモリに保存しておけば、パソコンを持ち歩かなくても、自分自身がどこにいても入力作業をすることができます。あるいは、入力途中のデータでも、Google Driveにアップロードしておけば、USBメモリを持っていなくても最新の入力状態をダウンロードして、また入力作業をすることができます。
 また、これは在宅リモートワークを可能にするだけでなく、自分だけでなく、他の従業員も社長も、そのクルス会計システムの中身を閲覧することができますので会社に導入する上でも便利です。(これは、定かではありませんが、単に便利というだけでなく、電子帳簿保存法の観点から見てもGoogle Driveにアップロードして、そのアップロード日付を証拠としておくことができるかもしれません。)

 また、Excel自体は事務職経験者ならだれでも基本的なことを使いこなすことができますので、あえてExcelの基本的使用法を学んだり、あるいは従業員に教える必要もありません。

 クルス会計システムは、Excelで作表した仕訳帳に入力していくわけですが、関数によって試算表も自動で作成されるように組んでありますので、仕訳入力したと同時に、これがそのまま月次試算表の数字が同時進行で変動していきます。さらにその月次試算表は年間試算表へと同時進行で集計されていきます。

 貸借対照表や損益計算書や利益処分計算書や損益金処理計算書などもExcelで作成しますし、固定資産台帳や内訳明細書、確定申告書の種々の別表までExcelで作成できますので、会計すべてがExcel一つでまかなうことができます。

また、購入する品物によって、消費税率は8%や10%や0%(非課税)などがあります。普通の会計ソフトでは、一つの科目の中に複数の消費税率タイプを混ぜるので、非常に入力が面倒で、かつ、複雑になります。それに対し、エクセル会計では、勘定科目を分ける方式をとっています。消費税率8%になる品物を購入したときはこの科目、10%ならこの科目、そして、非課税の場合はこの科目というように、科目で区別して入力することで対応しています。これでエクセル会計では、消費税問題をすべて解決できています。

 そればかりか、このように大変便利なこのエクセル会計では、私自身も会社決算で利用していく中で改良されてきましたし、何よりも、大量仕訳を入力しても、動作が遅くなったりしないということです。使い方さえ誤らなければ、データサイズも比較的小さくて使いやすくなっています。動作が遅くならないのは、使っているコマンドが必要最小限にとどめてあるからでしょう。

 なお、VBA(ビジュアルベーシック・エクセルに標準で備わっているスクリプト言語)を使ってさらに便利に改良することもできるでしょう。しかし、あまりにも便利に改良しすぎると、大量のデータを入力したとき、動作が遅くなることも考えられます。ですから、便利さを追い求めてVBAまで利用したりしない方がよいかもしれません。いずれにしても、それぞれのExcelのアイデアを用いて、クルス会計システムを独自のスタイルへと進化させていくことも可能です。

2.クルス会計システムの仕訳入力

 当クルス会計システムの仕訳入力は、普通の仕訳より、やや面倒かもしれません。しかし、決算のプロである筆者としての見解では、これは大きな欠点ではないと考えます。きっと皆さまにとっても、慣れるまでの辛抱というところだと思います。

①仕訳の書き方
複式簿記での仕訳の記入は、たいていの方は、左右に会計科目を書くものです。例としてこうなります。

借方科目 金額 貸方科目 金額  摘要
消耗品費  xxx 現金    xxx  〇〇店 文房具

市販の会計ソフトで入力する際は、下記のようなタイプが多いもしれません。

借方科目 貸方科目 借方金額 貸方金額  摘要
消耗品費  現金    xxx    xxx   〇〇店 文房具

しかし、このクルス会計システムでは、考え方としてはこうなります。

当科目    相手科目  借方金額 貸方金額   摘要
消耗品費 現金        xxx          〇〇店 文房具
現金      消耗品費           xxx     〇〇店 文房具

 勘定科目コードの利用については、市販ソフトでは、コードを入力すると、自動的に勘定科目に変換されます。
 しかし、このクルス会計システムでは、コードを入力しても勘定科目に変換しません。これは会計のプロであれば特に不要と考えているからです。

当科目    相手科目  借方金額 貸方金額   摘要
 527.00      100.00         xxx                 〇〇店 文房具
 100.00         527.00                        xxx     〇〇店 文房具

 上記の例では、小数点以下2桁まで入力しているように見えますが、単に、527とか100とかのように、3桁の数字で入力しています。勘定科目の入力は3桁ですが、自動的に少数第2位まで表示されます。小数点以下は枝番として利用しています。未払金や売掛金は枝番を多用しますので、便利です。枝番を利用しない科目は無視してもよいです。ただ自動的に少数以下が00となって現れます。
 勘定科目とコードを暗記する必要はありませんが、よく使うものは自然と覚えるでしょう。また、勘定科目コードを見れば、だいたいどんなタイプの勘定科目かがわかるようになっています。

 また、借方科目と貸方科目という入力欄にはなっていません。当科目と相手科目となっています。当科目のうち、上段のものが借方科目、下段が貸方科目です。また相手科目のうち、上段のは貸方科目、下段のは借方科目です。

 このように、やや変わった書式ですし、入力が2行になるため、少し手間がかかるように感じるかもしれませんが、摘要欄については、Ctrl + D の利用で、すぐ上段入力の摘要がコピペされます。また、↓→の同時押しなどの利用で、比較的素早く入力が可能です。

 たとえば、摘要欄については、1行目の摘要欄は手入力しますが、
2行目の摘要欄は同じことを入力するのですから、Ctrl + D で上の行と同じものが下の行にコピーされます。

 コードの入力では、上記の例の場合、1行目に527を入力したら、エンターキーを押して、次に下の行で100と入力したら、→↑を同時に押してカーソル移動できます。
 また、一つ上に同様の取引(2行の入力行)があれば、それを利用できます。↑を押してから、Shift + ↑・→で範囲指定して、Ctrl + C、それから↓を押してから Ctrl + V で、貼り付けされて、既入力である上の仕訳をそのままコピペできます。
 このような機能をうまくつかって、たとえ1つの取引につき2行に渡る仕訳入力も楽々簡単に素早く入力できるのです。

3.仕訳帳の構造

 仕訳帳は、上から、開始仕訳入力エリア、第1ヶ月目入力エリア、第2ヶ月目入力エリア、・・・、第12ヶ月目入力エリア、というように、全部で13区分に分かれています。

 開始仕訳入力エリアには、貸借対照表科目の開始仕訳を入力します。このときは、仕訳番号は全部00で良いでしょう。

 開始仕訳を入れるのは、仕訳帳全体を元帳画面にコピペして並べ替えたとき、開始仕訳をしていないと残高計算ができないからです。

4.クルス会計システムの元帳について

 クルス会計システムの試算表は、入力と同時に作成されていくのですが、元帳はそうではありません。総勘定元帳形式への並べ替えが必要です。並べ替えるので、仕訳帳の画面で並べ替えたら、仕訳帳ではなくなってしまいますので、一旦、仕訳帳のA列(No.)からG列(摘要)までを選択します。選択の仕方は、上部タイトルのところを左クリックしながら移動させれば、それらの列を選択できます。そしてCtrl+Cでコピー取得し、隣の元帳ページ(Ledger)のA1にカーソルを合わせてCtrl+Vで貼付けします。それから、そのA列からG列を並べ替えます。勘定科目、日付、No.の優先順位で並べ替えます。こうすれば、元帳ができます。右側に■マークがある行が、その科目の最終残高となっています。

 普通の会計ソフトでは、ボタン一つで元帳画面を出すことができますが、このクルス会計システムでは、現在、マクロを組んでいませんので、元帳画面へのコピーと並べ替えが必要です。

 まずは、元帳ページを1ページ増やします。そして、仕訳帳ページに戻り、仕訳した表を丸ごとコピーするための範囲選択をします。大量のデータであっても、範囲選択は一瞬です。全選択でも良いのですが、使用列(数式だけの列も含む)だけを選択する方が良いでしょう。それを元帳ページに移動して、そこの左上の最初のセルでCtrl+Vをして貼り付けます。そして、そのページの使用している列を範囲選択して、データボタンを押します。当勘定科目の列を最優先にし、日付を第2優先にし、伝票番号を第3優先にして並べ替えて元帳とします。
 少々面倒に思われるかもしれませんが、たとえば、エクセル表の左上の見出し行のマスをクリックすると、全選択になります。列の最上部をシフトを押しながら右→で列の範囲選択もできます。エクセルにはCtrl+A(全選択)や、Ctrl+C(コピーのための取得)や、Ctrl+V(コピーしたものを貼り付け)などたくさんの便利機能があり、コピペや並べ替えが比較的楽にできます。

5.試算表について

 試算表は、仕訳入力すれば、つねに自動的に集計されていきます。ただし、第1月は1月はじまりなら1月ですが、4月はじまりの会社では、4月となります。
 また、第1月の左の列(開始残高)の部分は最初に入力していなければなりません。
 つまり、仕訳帳の一番上(始まり部分)は、開始残高計上の仕訳を入力します。それとは別に、第1の月の試算表は開始残高に前期末貸借対照表の数字を入力しておかなければなりません。

クルス会計システムで使うツール紹介

1.勘定科目コードの利用

 当エクセル会計では、勘定科目にコードを割り当てています。コードをそのまま覚えることは不要ですが、主なものは覚えた方が良いでしょう。
私が使用している各勘定科目グループのコードの範囲は、下記のようになります。各勘定科目ごとのコードは別章で紹介します。

100-149 流動資産           
151-159 有形固定資産
161-179 無形固定資産
180-189 投資等
191-199 繰延資産
201-269 流動負債
271-289 固定負債
291-298 引当金
299 残高
300 資本
320 未処分利益
400-409 営業収益
410-499 売上原価 (棚卸勘定含む)
500-599 販管費
600-609 営業外収益
610-619 営業外費用
700-709 特別利益
710-719 特別損失
801 法人税等
999 目印用仕訳用科目(範囲選択で利用するための目印・架空仕訳)

2.関数の利用

 このクルス会計システムでは、if関数は残高計算で、いたるところで使っています。最初の行の残高なのか、2行目以降の残高なのかで、計算が変わりますので、それはif関数で判別して残高を計算しています。

 そのほかに重要な関数を2つ使います。一番重要な関数はsumif(サムイフ)関数です。sumif関数とは、条件に当てはまったものだけを合計する関数です。

 エクセル会計では、仕訳帳に入力すると自動的に試算表のページに情報が伝わり、自動的に各勘定科目ごとに合計をしてくれます。特定の条件に当てはまる勘定科目の借方の合計、および貸方の合計を自動計算で算出してくれます。それをするのがsumif関数です。これのおかげでこのエクセル会計が成り立っていると言ってもよいでしょう。

 そしてもう一つはvlookup(ブイルックアップ)関数です。これは元帳を作る上で必要になります。
 元帳を作るには、仕訳帳のいくつかの列をそのまま別のページにコピペします。それからそれを並べ替えると元帳になります。しかし、元帳の各勘定科目ごとの残高を計算するのは、借方科目の場合と貸方科目の場合とでは計算方法が異なります。単純計算ではありますが、借方科目を足して貸方科目を引くのか、それとも借方科目を引いて貸方科目を足すのか、違います。ですから、その科目が借方科目なのか、貸方科目なのかを判別させなければなりません。そこで、元帳ページに、科目コードと勘定科目名と借方科目「1」・貸方科目「2」を表示させておくのです。そしてこの表を参照しながら判断させていくことで、借方科目か貸方科目かを判別しているのです。そうすることで、借方科目の計算と貸方科目の計算がそれぞれ正しく割り当てられ、残高が正しく計算されるのです。このvlookup関数のおかげで元帳を作ることができると言ってもよいでしょう。

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