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宝物みたいな言葉たち

2020年4月15日、上田映劇定期上映復活3周年。
何か言葉を綴りたいなと思っていたところに「上田映劇で出会った人々」という素敵なテーマをいただいた。上田映劇は3周年、もぎりのやぎちゃんはだいたい2周年というところだ。この2年間、上田映劇を通して本当にたくさんの人に出会った。基本的にお客様について書かないようにしてるが今日だけは、頂いた宝物みたいな言葉の数々を振り返らせてほしい。普段は私の胸の奥にそっと大事にしまってるこの宝物たちを今日という日だけは、そっと陽の光に当ててみたい。

「良い映画やってるよね」「観たい作品ばっかりだよ」

そう言っていつもニコニコと素敵な笑顔を見せてくれる常連さんたち。いつ頃からだろう…でも気が付いた時にはもう常連さんたちは口々にそう言ってくれていた。「映劇は良い映画やってるんだよ」と映劇以外の場所でそんな風に紹介している場面に居合わせたことがある。ちょっと照れ臭くて、こそばゆくて、そして誇らしかった。良い映画が映劇で上映されているのは、原番組編成の奮闘によるものだ。私は番組に関わることはあまりない。だからこそ、この言葉を聞くたびに1人でも多くの人に上映作品を届けようと気を引き締める。


「俺の青春を守ってくれてありがとう」

上田映劇が定期上映を復活させて3年経つ。でも開館から数えると今年で103年になる。そう、映劇は長いこと上田の街でたくさんの人たちに映画を観せてきたのだ。その中には青春時代を映劇と共に過ごした人もいる。「俺の青春を守ってくれてありがとう」この言葉をかけてくれた方もまた映劇で青春時代を過ごしたひとりだ。私は定期上映復活前の映劇の様子を知らない。だから、この言葉を貰うまで想像もしていなかった。映画という文化だけでなく、誰かの青春を、誰かの思い出の場所を守ってるだなんて。思わず襟を正した。ここはただ映画を上映するだけの場所じゃない、100年以上の時間をかけて集まった人々の想いと思い出の場所なのだと。


「映劇用のドリンクホルダー作って良い?」

上田映劇の座席にはドリンクホルダーがない。編み物が得意なその方は、あれよあれよという間に「上田映劇専用ドリンクホルダー」を作ってくれた。それを常連さんが買い、映劇に来る度に持ってきては映画のお供にしている。その姿に思わずふふっと口元が綻ぶ。また別の常連さんはその方からドリンクホルダーのパーツだけを買い、マイドリンクホルダーを編み上げた。映劇には足りないものがいっぱいある。手が回らないところもいっぱいある。でも、こんな風に素敵なアイディアで映劇に力を貸してくれる方がいるのはすごく心強い。そしてお客様と一緒に上田映劇を作っているような、そんな感じがして勝手に心躍らせている。

「踊ってるのを見たら、映画も気になって」

真顔で淡々と躍る動画をTwitterに投稿した。二宮健監督の映画『疑惑とダンス』で登場人物たちが踊っていた踊りだ。東京の映画館・キネカ大森さんのスタッフさんたちが踊ってみたを投稿しているのを見て、いても立ってもいられずに投稿。ちょっと話題になったら良いなくらいに思っていたら、その投稿を見て映劇に足を運んでくれた方がいた。嬉しくて、嬉しくて、思い出してはたまにニヤつく。久々に踊ろうかな、なんてね。(ちなみに投稿した動画は「ちょっと話題」どころか結構話題になり、会う人会う人に「踊ってたね〜」とにやにやされたのはまた別の話。)

「なぜか差し入れしたくなる映画館」

雪国からサンタさんみたいにニコニコと美味しいものをたくさん差し入れてくれる方がいる。持ってきてくれるお菓子はどれも美味しくてほっぺたが落ちる。でも数少ないスタッフでは食べきれないので居合わせた他のお客様にも配っている。なんだかちょっとハッピーな空気がロビーに流れる。差し入れといえば、地元のお客様たちはよく映劇からすぐの富士アイスさんで売っている「志゛まん焼き(じまんやき)」を差し入れてくれる。あんことクリーム、その優しい甘さにほっとする。どうやらなぜか差し入れしたくなるのは、ひとりだけではないみたい。美味しい差し入れによる幸せ太りが心配。

「やぎちゃんが映劇にいるから」

そう言って特別会員になってくれた方がいる。もぎりのやぎちゃんが映劇にいるから。こんなにもシンプルで胸が熱くなる理由があるだろうか、いや無い。このことを折に触れ思い返す。そして、また一歩ずつ頑張っていこうと小さな一歩を踏み出す。

おわりに

上田映劇で出会った人々は皆、私にとってかけがえのない宝物だと思う。ここに書ききれなかった人や言葉もたくさんある。記念すべき3周年を迎えながらも、静まりかえった映画館で出会った人々の顔を思い浮かべる。お客様をはじめ映画人の方々、いつも映劇を支えてくれる人々……。きっとこの寂しさは忘れない。でも、今日はこうして宝物を引っ張り出して眺めてる。ぽかぽかの陽気も相まって心はじんわりあたたかい。4年目の上田映劇でも、もぎりのやぎちゃんでありたい。しっかりと胸を張って、笑顔でまたお出迎えできるように。

もぎりからのお願い

上田映劇が休館して1週間が経ちました。まだまだ先が見えない暗闇の中を歩いているような気分です。それでも #SaveTheCinema への署名や、ミニシアター・エイド基金のクラウドファンディングに沢山の支援が集まっている状況を見ていると、こんなにもたくさんの人が映画や映画館を応援してくれているんだ!と俯きがちな顔がちょっと上向きます。多くの応援やご支援に心からの感謝を。そして大変恐縮ではありますが、引き続き上田映劇もしくはお近くの推し映画館への応援、何卒よろしくお願いいたします。


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