ポール・スミスとチャールズ・イームズ、または創作の源

ある時ふいに、この2人のデザイナーが似ている気がしたのです。

と言うと、驚く人がいるかも知れませんね。そんな馬鹿な、ぜんぜん違うでしょうという人も。あるいは、その前に、誰ですかその人?と訊く人だっているかも。

2人は確かに違う点が多い。

片やイギリス人、片やアメリカ人。活躍した時代も20世紀後半から現在(いまでも大人気)に対し、20世紀半ば前後で既に故人(少し前のミッドセンチュリー・ブームで再び脚光を浴びた)。洋服のデザイナーと建築・家具デザイナー。伝統にユーモアを加えるのが身上の人と革新性・シンプルを信条とした人。少年の頃は、一方が自転車選手志望に対し他方は建築家志望だった、等々。この他にもまだまだ挙げられそうです。

でも、顔立ちが似ていますよ。例えば細面に太い眉、痩身。そして、いずれのデザインも、僕のお気に入り。これは冗談としても、2人ともが旅行好き、写真好きで、収集癖があり、好奇心が強い。さらに自身の思いを実現することにかける熱意が際立っています。

ね、けっこう類似点があるでしょう。

で、結局何が言いたいのか。だからどうした?と訊かれたら、実はそれだけ、と答えなければいけなかった。はじめ、2人が似ているなと気づいた時は、ただ面白いなと思っただけなのでした。

ところが、こうして書いているうちにも、いろいろと気づくことがある。たとえば、思いを実現しようとする熱意、これは、デザインをする場合(職業であるか否かにかかわらず、あるいはデザインする場合じゃなくても)に、求められる大事な資質のひとつである気がするのです。そして、これは何をおいてもまずは「好き」が原点ということ。

はじめは、ただの思いつきから始めて結構。というか、むしろそれがいいのではあるまいか(この文のことを言っているのではありませんよ。くれぐれも誤解のないように)。好奇心も同じです。それをゆっくり育てることを考えれば良い。そのためには、常に「なぜだろう」と疑問を持って、考え続けること(学生はあんまりしなくなったようですが、どうすればいいのだろう)。そこから、新しいことが生まれる可能性があるという気がしたのです。はじめから、コンセプトやら理屈から始めるのではなくて。そうすることは、とくに若い人にとって有用ではないかと思った次第。

イームズを好きな人は、彼は理が勝っている人だと言うかもしれません。建築やいくつかの家具を見ていると、確かにそういう気がする。でも彼の隠れた名作である短編映画を観たら、決してそうとばかりは言えない(名高い『パワーズ・オブ・テン』はむしろ例外の部類ではあるまいか)、と思ったのです。

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