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日記|V.Schoolサロン「大学とフードコミュニティ」に参加した

最近、神戸大V.Schoolのセミナーやサロンに参加させてもらっている。
昨日のサロン、「大学とフードコミュニティ -神戸大学の食を変えよう-」はとても良かった。

とにかくゲストのフードピクト社の菊池信孝さんの話が良かった。
おそらく話し慣れた内容なのだろうが、キーワードをテンポよく並べていただいて、

1. 主体的な選択|Desire for Choice
2. コミュニティへの帰属|Desire for Belonging
3. パーパスの発見|Desire for Purpose

という3つの役割とそれらに紐づく9つのキーワードから消費者のインサイトを分析するという内容。
いやぁ我々、キーワードを並べてもらえれば勝手にその先勉強しますのでね。新鮮なサラダを食べているようなご講演でした。
インサイトの話とか、フードピクト、食習慣の話をまとめて読みたいと思って調べたら、HPからPDFと冊子版を購入できる。さっそくPDFを購入した。

地域における大学の価値

会場からの(内輪な)質問で、地域のニーズを吸い上げる部署があるかという質問があって、その答えは「ない」、というかそれぞれの教員が地域で働き、質問とかお願いを聞く中で見つけていかないと、というのが答えだったが、それはそのとおりだと思った。

大学が地域に貢献できる価値は多いが、何を求められているのかは掴みづらい。
たとえば食やフードテックであれば、培養肉(細胞を培養して食肉をつくる)などの先端的な技術なのか、「神戸大がつくる培養肉なら安心」という安心感やオーソライズ感なのか、あるいはフードロスの問題のように、事業として金になりづらいけど大事だよねというテーマをやってほしいのか。あるいは同じく金にならない基礎研究をやってほしいのか。はたまた学生世代の被験者に価値があるのか。

こういった大学が持つ価値は、地域の課題とか大学の性格によって変わってくる。
代替タンパク質というテーマ一つでも、水の乏しい地域ならブタやエビの培養肉が期待されるかもしれないし、神戸のような土地なら、点在する中山間農村をつないだプラント(植物)ベース食糧の活用が期待されるかもしれない。
神戸という土地でプラントベースの取り組みをされているゲストということで、ぜひその辺を聞きたかったがなかなか時間もなく。(せっかくゲストが来ているので内輪な質問よりぜひ菊池さんの話を聞きたかったのだがお偉いさんの雰囲気に押された感はある)

個人的には安心感というのは曖昧ながら、いや曖昧だからこそ先端技術とプロダクト化の境目を橋渡しするという部分は、大学のもつ一つの大きな価値だと思う。
培養肉はシンガポールで認証を得たが、本当にだいじょうぶか?というところはよくわからないし、倫理的な問題をセットで論じないといけない。

倫理的な問題とか、いわゆる気持ちの問題っていうのは、培養肉を売りたい会社がいくら主張しても、なんか100で得心できない
できればアクセルとブレーキを一つの組織が両方もっているようなところが、ちゃんと考えてほしい。できればわかりやすく教えてほしい。そういうのって、総合大学のお家芸なはず。

先端技術っていうのは、AIに限らず、作る人が倫理面をケアしないといけない。たとえばAIの倫理委員会はAI学会にある。倫理系の学会にAIのこと考えてください、というわけにはいかない。
いわゆる「悪いのは包丁ではなく使う人間」という論法は成立しない。
最近読んだ『人工知能とどうつきあうかー哲学から考える』という本の中の最終章、ご存知堀浩一先生の章を引用しておこう。

(悪いのは技術ではなく使う人という考え方は)包丁のような単純な道具においては、成立していたかもしれない。しかし、AIに代表されるような、複雑に人々の意思決定や行動に関係してくる技術の領域においては、そのような古い考え方を維持することは、技術者としての責任を放棄するに等しい

10章「人工物の倫理性と人工知能」堀浩一・関口海良


培養肉にしても、先端的なフードテックにしても、倫理観や哲学は、作る側が責任を持って考えないといけない。「我々は作りますんで」で消費者に判断丸投げ、第三者に判断を委ねるというのは「責任放棄」だ。
とはいえ食肉メーカーが、レストランが、いきなり倫理・哲学をできるわけがない。アクセルとブレーキを両方もった大学発のベンチャーが、開発者でありつつ責任をもって「考える」という役割を果たすモデルケースを作るというのは、食テクノロジーのみならずこれから多く求められることだろうと思う。

消費者にはそんな議論は届かないとしても、それ込みで「神戸大が出してるならまあ安心な気がする」というのは、一つの大きな価値かもしれない。



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