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海外で体調を崩すと大変だ、という話

今回も、架空の話などしたいと思う。

小さいころ、まだバブル経済が崩壊する前、父がよく海外に出張に行っていた。帰国した父のスーツケースから見たこともないカラフルなパッケージのお菓子やチーズが出てきて感動したのをよく覚えている。私が小学生のころに、海外の仕事先の人が我が家に来たこともあった。美しいインド系の女性だった。まさにバリキャリという感じで、おそらくカーストも教育水準も相当高かったのだろうと今では思う。

その女性と父が和やかに英語で会話していた。休日はいつもテレビの前でトドみたいに寝転がっている父が、よくわからない言葉でしゃべっているのを見るのは衝撃だった。なんかよくわからないけどすごい、そう思った。なお、すごいと思ったのに勉強はしなかった。

時は過ぎ、就職した私はなんだかんだあって海外出張をするようになった。

ある時、サンフランシスコに行くことになった。秘書がいないので、チケットは自分で手配している。会場に近いところで何となくよさそうなところを見つけた。テンダーロインという地名だった。

滞りなく予約した後に、父親に出張する旨を伝えたところ、サンフランシスコは治安が悪いから気を付けるように、と注意された。なんでも麻薬の売人が多いらしい。

慌てて調べてみたところ、テンダーロインという地名の由来は、あまりにも治安が悪いために、そこに赴任した警察官が危険手当でテンダーロインを食べられるから、という話だそうだ。テンダーロインとはサーロインよりも上級の部位らしい。私は頭を抱えた。

実際に行ってみると、予想以上に治安が悪かった。町から危険さが伝わってくる。しかも風邪をひいていた。海外出張をした際、一番困るのが体調を崩すことである。買い物に行くこともできず、ずっとベッドに横たわって、白湯だけ飲んでいたような気がする。心細いが、仕方がない。だれにも頼れず野生生物のようにじっと回復を待った。

幸い1日くらいでよくなったので、外に出かけることができたが、今度は積極的なホームレスに度肝を抜かれた。ずいぶん前のことなのだが、スタバのカップに小銭を入れてジャカジャカならしながらこっちに向かってくるのである。一度などは道を通せんぼされて、泣きそうになってフェイントかけて逃げた。失敗してしてたらやばかった。

父の言ったとおりに麻薬の売人もいて、取引しているようなところも見た。麻薬中毒らしい人も多くて、明らかに挙動のおかしな人もたくさんいた。やばすぎる。

それでも、サンフランシスコは素晴らしかった。英語の教科書に載っていたあのケーブルカーに乗った。サムネイルの写真はその時のものである。リスクはあるのだが、海外の電車に乗るのがすごく好きなのである。その時は行くことができなかったが、次に行くときはケーブルカー博物館にぜひ行きたいものである。

海外出張はできるだけ行きたいと思っている。葛根湯など、普段使っている薬を忘れないようにしたい。国内でも、英語を使う仕事はどんなにしょうもないものでも絶対に断らないことにしている。

再度申し上げるが、この話は架空のものである。

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