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すぅぱぁ・ほろう(10)

学校へ行くと、クラスの数人が集まって話をしていた。
「昨日の交通事故、凄かったらしいね」
「フロントガラスに頭をぶつけて即死だったらしいよ」
「そのあと別の車に巻き込まれて右腕が千切れたみたい」
「マジか、怖いな」
「うちの姉ちゃん、その人と同じ会社なんだって、凄いビックリしてたよ」
今朝のニュースについて話しているようだ。

「ちょっと、その話聞かせてくれない?」
その中の一人に声をかけた。
「その人って、もしかしてこの人?」
スマホを差し出し、サラリーマン風の男性の写真を見せる。
しおり・クヒナとの残業でカメラから転送しておいた写真だ。
「俺はわからないけど…」
困ったような表情をされた。
「この写真を送るから、お姉さんに聞いてもらなえない?」
「うん…、わかった聞いてみる」
「よろしく」
半ば強引に写真を送りつけた。

そして暫くすると、その子が血相を変えて近づいてきた。
「なんであんたがその人の写真を持ってるの!?って姉ちゃんに言われたよ!」

そのあとの事はあまり憶えていない。
何の授業を受けたのか、お昼に何を食べたのかも曖昧だ。
ただ、神川とおるに「大丈夫か?」と心配されたのだけは憶えている。
バイト中も記憶が混濁している。
誰かに「大丈夫?」と声をかけられた様な気がする。
伊東のぞみにだったか他のパートの人だったか思い出せない。

そしてその日の夜も残業だった。
僕はしおり・クヒナの車の助手席に座っていた。
「しおりさん。この間写真を撮った男の人が死にました」
「そう…」
「何でそんなに落ち着いてられるんですか?何か知ってますよね?」
「そうね」
「しおりさんが殺したんですか?」
「違うわ」
「じゃあ、誰が殺したんですか?」
「わからない」
「そんなわけはない!あの人は僕が、この目で見た通りに死んだんですよ!」
「聞いて、みのる君」
しおり・クヒナは捲し立てる僕を制止しようとした。
だが、僕は問い詰めねばならなかった。
「しおりさん。面接の時に僕が浄山上人の子孫だと言っら、あなたは上人を恩人だと言った。でも上人があなたにした事はわかっていますよね?」
「…」
「本当に、あなたの頭は自宅にあるんですか?最近掘りだしたんじゃないんですか?」
しおり・クヒナは黙って聞いていた。
「しおりさんは鬼なんですか?」
「ちがう…」
「じゃあ、デュラハンなんですか?」
「…」
「僕が助手席に座っている時に、一度も橋を渡った事がありませんよね。川を渡るのが怖いですか?」
「…」
「デュラハンは死を予言して、殺すんですよね?」
「…聞いて、みのる君」
「あの男の人も殺したんですか?」
「…あの人は死ぬ運命だったの」
「死ぬ運命?僕には全然わからないです!」
「みのる君、聞いて。ちゃんと理解していないのは君の方なの」
「何を理解しろって言うんですか!」
「君のその目は、死を予言する目なの」
「死を予言する目?何ですかそれは?」
「あの男の人の死を予言したのは、あなたなのよ」
「何を、何言ってるかわかりませんよ!」
「今までちゃんと説明しなかった私が悪い。でもね、今は君が危ないの」
「今度は、僕を殺すんですか?」
「君は自分が死ぬ夢をみたでしょ?だからここにいちゃダメなの、ここから離れなくちゃいけないの」
ギュルルルとエンジンがかかった。
そしていつもの様にユーロビートが流れた。
「降ります!降ろしてください!」
「ちょっと待ってみのる君!」
僕はポケットにしまってあった木札を取り出し、しおり・クヒナに向けた。
「きゃ」っという短い悲鳴が聞こえた。
そして制止を振り切ってドアを開けた。
車は発進したばかりだった。
僕は飛び降りた。
アスファルトに右肩が当たって数回転がった。
肩は痛むが、大丈夫、走れる。
僕は立ち上がって車と反対方向へ走った。

走り出してすぐだった。
ドルルルッ、という音が後ろから近づいて来た。
「乗れ!みのる!」
神川とおるのバイクだった。
言葉を交わす間もなく、僕は原付バイクのせまい後部スペースへ飛び乗った。
「なんで!?」
「お前が心配だったからだよ、千川大橋を渡って北へ行くぞ!」
バイクはぐんぐんスピードを上げた。

そして千川大橋が見えてきた時だった。

橋の入り口の真ん中に人が飛び出し、手を大きく広げた。
神川とおるはとっさに急ブレーキをかけた。
だが、スピードが出ていて、しかも僕も乗っている状態ではバイクの制御がきかなかった。
キュゥー!っという派手なスリップ音とともに左右に振られて転倒してしまった。

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