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「ハラスメントは病気だからカウンセリング受けろ」をカウンセラーがぶった切る

こんにちは。
㈱ヒューマンリソースマネジメント研究所
なつカウンセリングルーム 代表
土肥なつみです。

「人生を彩る居場所をつくる」を理念とし、
企業研修・カウンセリング・人材育成コンサルティング等を行っています。
私の自己紹介はこちらのマガジンをご覧ください。

今日は私のお仕事である「カウンセリング」についてのお話です。
カウンセラーでなくても、会社の中でカウンセリングや傾聴の研修を受けた経験のある人はいらっしゃるのではないかと思います。
今回はそんなカウンセリングについてよくある誤解をぶった切る(?)回にしたいと思います。


カウンセリングは魔法ではありません

先日、とある企業の人事の方から相談を受けることがありました。
パワハラを繰り返す社員さんの処分について、頭を悩ませているようでした。

「パワハラは病気なので、カウンセリングを受けた方が良いと思うんです」

その方は私にそう言ってこられました。
皆さんはカウンセリングについて、どのような認識をお持ちでしょうか。

心がしんどくなったら精神科や心療内科に行って受けるもの、
キャリアセンターで受けるもの、
美容メンテナンスで受けるものもカウンセリングですね。

全てジャンルが違いますが、共通しているのは
カウンセリングは魔法ではない、カウンセラーは魔法使いではないということです。

文章にすると至極当然のことのように思いますが、
カウンセラーやセラピストが相手の問題を解決すると思っている人が多すぎます。
冒頭の人事担当の方も、恐らくそう思っておられたのではないでしょうか。

美容関係やスピリチュアルの人たちはどうしているか分かりませんが
カウンセリングの基本スタンスとして
「問題を解決するのはクライエント自身である」
という考え方があります。
(これについてはコーチングも同じです)。
カウンセラーはあくまでも
「クライエントの話を聞き、問題を整理したり解決のための方法を一緒に考えていく」
というスタンスで関わっています。

時には情報提供をしたりアドバイスすることもありますが、
それを実行するかどうかはクライエント自身に決めてもらいます。
そしてカウンセリングの効果についても、クライエントが心から「変わりたい!」という気持ちがないと、その効果は限定的であると言われています。

つまり、

①クライエントが自ら変わりたいという意志を持つ
②カウンセラーとともに思考感情の整理、情報提供など支援を受ける
③その問題を最終的に自分で解決する

これがカウンセリングによる問題解決のプロセスです。

ハラスメントを繰り返す社員さんを半ば強制的に相談室に連れてきて
「何とかしてください」と言ったところで、
社員さん本人が「変わりたい」と思わなければ、何十回何百回面談しても結果は変わりません。

これがまずひとつめの、カウンセリングにおける大きな誤解です。

メンタルヘルス指針から学ぶハラスメント対応

労働者の心の健康の保持増進のための指針

そして次はハラスメント対応についての考え方です。
ハラスメント対応というと、加害者に何らかの処分を下すことを想像する方が多いですがそれでは遅すぎます。

ここで参考にしたいのが、厚生労働省が発表している
「労働者の心の健康の保持増進のための指針(通称:メンタルヘルス指針)」です。

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000153859.pdf

事業場におけるメンタルヘルス対策として挙げられるのが、
心の健康に関する一次予防、二次予防、三次予防です。
これらを総合的に進めることで、国はメンタルヘルス不調に対処しようとしています。

・一次予防
メンタルヘルス不調の未然防止
メンタルヘルス研修、事業場内外における相談窓口の整備
ストレスチェック

・二次予防
 メンタルヘルス不調の早期発見ならびに早期治療。
上司や産業保健スタッフなどによる相談対応
定期健康診断による早期発見と適切な対応など

・三次予防
休職者への職場復帰支援やメンタルヘルス不調の再発防止。
休職者への精神的なフォロー
職場復帰支援プログラムの実施
主治医との連携
管理職に対する職場復帰時における対応研修など

出典:労働者の心の健康の保持増進のための指針

メンタルヘルス予防は上記のように3ステップあるわけですが、
最も大切なのは一次予防(=未然防止)だと言われています。
なってからでは遅い、からなんです。
それは例えば治療に想像以上に時間がかかってしまったり、復職しても不安定な状態が続いたりすることがよくあります。
風邪を治すのとは訳が違います。

ハラスメント対応も全く同じことが言えます。
加害者を作ってしまってからでは遅いのです。

「ハラスメント加害者にはカウンセリングを受けてもらう」
というのは二次予防、三次予防をひたすら繰り返しているに過ぎません。
大切なのは一次予防(=未然防止)です。

未然防止のためにできること

では、未然防止のためにできることに何があるでしょうか。
定期的にカウンセリングを受けさせること?
年に1回研修を受けてもらうこと?
社長や役員が常に巡回すること?

答えは、現場にあります。
一緒に働く仲間や上司が、メンバー(ハラスメント加害者になる可能性のある人)のちょっとした変化や違和感に気が付いてあげることです。

ハラスメント加害者の主な特徴として、以下のようなものがあります。

①加害者本人のメンタル不調
 以前は温和だったのに、最近急に怒りっぽくなった
②加害者の持つ発達的特性
 ADHD,ASDなど

①のメンタル不調については、いかにメンバーの「いつもとちょっと違う」に気が付けるか、「いつも」をどれだけ把握出来ているか。
つまり日々のコミュニケーションが鍵になっています。

あなたは職場やメンバーの「いつも」をどれだけ知っていますか?

②の発達的特性についても、こういった特性への理解を深める研修を受ける、最近だとYoutubeやSNSでも当事者の方が積極的に発信されています。
普段からどれだけアンテナを立てているかが重要です。

知識があれば“予防”できる

ハラスメント(特にパワハラ)については、加害者一人の問題ではなく組織全体の問題だと思っています。

数年前、まだ飲食店でフルタイムで働いていたころ、何人かパワハラ店長に遭遇したことがあります(自己紹介に書いた上司以外にも数名います)。
思い返してみて思うのは、あの時の上司たちにはそれぞれ発達的特性がありました。
(決めつけるわけではないけど、特性の一つとして持っていたよなぁと思うのです)

え?そんなことで?っていうようなこだわりが強すぎる、
作業に余裕がなくなると感情のコントロールが恐ろしくきかない(部下やスタッフを突然怒鳴り散らす)、
カッとなると衝動的な行動に出る(絶対やったらいけないって本人だって分かってるはずのこと。部下を殴ったり廃棄食材を弁償させたり)。

だけど共通しているのはみんなすごく真っ直ぐで根は真面目だったってこと。
落ち着いてスタッフルームで話しているとすごく仕事に対して真摯に向き合っていて、会社や仕事が好きで、提出物の期限はしっかり守り、手を抜くことが出来ない。
そんな真っ直ぐな店長たちでした。

持っている特性として“店長”という職務が難しかっただけのことかもしれない。
(これは当事者の方に聞いたのですが、プレイングマネジャーの中でも“飲食店の店長”って恐ろしいくらいマルチタスクで難易度が桁違いなんだそうです)

もしあの時自分や周りにその知識があったら。
配属や部署異動を考慮してあげることができたら。
部下を殴ってクビになることも、アルバイトに弁償させて降格になることもなかったのかもしれない。

そう思うとハラスメントって、加害者本人だけの問題ではないよね。
こういう啓蒙活動がこれからももっと必要なんだと思います。

研修でこれからももっと伝えていこうと思います。
待っててね!!!!


最後までお読みいただきありがとうございました。
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