うつの「どん底」からはばたくの記

うつは心の中に咲く花14 -小さな喫茶店ー

さて話は戻りますが、最初に休職をしたとき、朝夫を送りながら途中で別れて、よく近所の公園を散歩していました。

朝早い公園は人影もまばらで、春まだ浅い薄い朝日の中を一周しては帰ったものです。日中はちびっこたちで賑わう遊具乗り場も人っ子一人なく、私は童心に帰ったつもりで、恐る恐るブランコに乗っていました。最初は体重制限があるのではないかと思ったのと(落ちたら痛いし)、誰かに見つかったら咎められるのではないかと思ったのです。

しかしそんなこともなく、私は毎日100回漕ぐと、静かにブランコを降りて家に帰るのでした。朝の風は冷たく、でも気持ちよく、静かな毎日でした。

昼散歩に行くときもありました。その時に、公園の近くに小さな喫茶店を見つけました。ちょっと入ってみたいけど、どうだろう?少しためらって、何回目かにやっと入る決心をつけて、ドアを開けました。

幸いお客様は誰もいなくて、若い女性がそこのオーナーらしく、「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ。」と声をかけてくれました。見渡すとカウンターに6席、4人掛けのテーブルが一つだけの居心地のよさそうな喫茶店です。

私はどういうわけか、あまり飲まなかったコーヒーを頼んで、並んでいた雑誌「暮らしの手帖」の最新号を手に取って、何も話さず、運ばれてきたコーヒーを飲みました。香りが鼻をついて、アロマの匂いがしました。オーナーの女性も何も話さず、静かなBGMと時計の音だけが聞こえる願ってもない環境でした。

その後、たまに店先まで行き、混んでいたら遠慮して、なるべく誰もいないときに入るようにして、1週間に1回か2回は行くようになりました。コーヒーとオーナーの作る小さくてかわいい、そして優しい味のお菓子(パウンドケーキやタルト、シフォンケーキなど)をちょこっと食べて、それがお昼でした。

しばらくたった頃、オーナーの女性(のちにNさんという名前と判明)に「今日はいい天気ですね。」と話しかけられたのをきっかけに、ぼちぼち話をするようになります。

3か月たって会社に復帰することになった時に、初めて今までその喫茶店に来ていた事情を話し、平日は来られなくなるので、これからは土曜日に来ます、と言って会社に復帰しました。

このOという喫茶店とはそれから深い縁で結ばれることになります。

続きはまた後日。

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