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死に顔はきれいだ。

祖母が亡くなった。誰かの葬儀はこれで2度目だ。1度目は、おととしに母方の祖父が亡くなった時。今回は父方のおばあちゃんだった。

こういうご時勢でもあるから、葬儀は身内だけで執り行った。父の兄である叔父さん夫婦が葬儀の準備を進めてくれ、私はただ喪服を着て、式に参列するだけだった。

おばあちゃんは本当に眠っているように見えた。少し口を開けたままで、静かに息をしているんじゃないかと思えた。もう生きていないのに、その顔は穏やかで、おばあちゃんの寝顔はこんななのかなとぼんやり思った。

納棺が終わり、死に化粧を施され、開いていた口もしっかり閉じられた。少し血色がよくなった気がして、生きていなくても死んでもいないように思う。納棺の様子を見ていた叔母さんがぽつりと言った。

「おばあちゃん、きれいね。美人さんやね。」

「ほんまやね〜」と、隣のお姉さんが続ける。

「背丈もあるし、手足もすらっとしてて美人よね」

確かに、そうだな。
生前のおばあちゃんは小さく見えていたけれど、よくよく見たらそうだった。私は父親に似ているが、背が高くて細身なところはおばあちゃん譲りだと知った。

告別式が終われば、おばあちゃんの顔を見るのは本当に最後だ。切ないような悲しいような気分のまま、おばあちゃんのまわりを花で埋め尽くす。葬儀屋さんがどんどん花を渡してくれるので、ぎゅうぎゅうなほどに花を詰め込んだ。出棺の前に、もう一度、おばあちゃんの顔を見る。やはり穏やかで微笑んでいるように見えて、花のじゅうたんの上で眠っているよう。紫色の胡蝶蘭がひときわ大きく佇んでいて、それがおばあちゃんみたいにとても綺麗だと思った。涙が流れた。

もうこの世では会えなくて、それはやっぱり重く悲しいけれど、おばあちゃんの最後の顔を見て思うのは悲しみだけじゃない。あの花いっぱいに祝福されて、嬉しそうに笑っているおばあちゃんが目に浮かぶ。最後に、綺麗な姿を見れてよかった。

今までありがとう。どうか安らかに。


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