Web3が変える組織の形〜『DAO』のマスアダプションに向けて必要な要素と次なるユースケースとは〜
2022年8月20日、「Web3とDAO」出版イベント〜Web3時代における新たなトレンドとグローバルエコシステム〜を福岡にて開催いたしました。Web3界隈で活躍するインキュベーターであるFracton Venturesのメンバーを迎え、配信ありの形式でオフラインイベントを開催いたしました。この記事では、当イベントのパネルディスカッションの内容をお伝えします。
暗号資産・ブロックチェーンに特化したメディアプロジェクト「あたらしい経済」の編集長、設楽悠介氏、Web3の未来を支援者ではなく貢献者として共創していく専門家集団Fracton Ventures Co-Founder 鈴木 雄大氏、亀井 聡彦氏、赤澤直樹氏をお呼びして『Web3とDAO』についてざっくばらんに語っていただきました。モデレーターは「あたらしい経済」編集長、設楽悠介氏が務めています。
面白いDAOの事例
設楽:
はじめに、面白いDAOの事例などありますか?
鈴木:
直近ネタなんですが、8月中旬のKorea Blockchain Weekでイベントを一緒にやらせてもらったところに、StatesDAOというDAOがありました。実は彼らの母体は、Code Statesというエンジニアの人材発掘事業のようなことをやっていて、そこから生まれたエンジニアを、LG、サムスン、カカオなどに送るという、大企業が採りたいような人材をエンジニアとして育てて送り出すということをやっていて、今度Web3人材版をやろうとしていて、StatesDAOというのを立ち上げているのですよ。実はこの裏側に韓国のHASHEDというクリプトVCが関わったりとかしていて、結構大がかりに、地場のローカルエコシステムを作ろうとしていました。まだ本当に出始めのものでDAOというよりはまだギルドに近いような組織なんですけど、非常に面白い動きをしているなと思っていて、今まで居なかった人たちをWeb3に連れてくるために、DAO型の組織を持って、皆で学び合おうといった場所を提供するみたいなものはすごいニーズがあるなと思って、個人的にはすごい興味があります。
亀井:
すごいのが母体のCode Statesのほうが、売り上げが今年数十億ぐらいあって、ほとんどが、To B と To Gなんですよね。韓国の政府的には、日本もそうですけど、プログラミングできる人材を増やすというので、そこからのお金も入っているみたいで、日本もプログラミングスクールって数年前に何個も出たと思うんですが、国家的にそんな勢いがあって力を入れてやっているんだというのが如実に数字に表れているなと思っています。今後それをDAOにしてWeb3版にしていくということです。
あと他には、Dream DAOというところに最近僕も入りまして。若い18歳から20歳ぐらいの若者向けのDAOで、実際に参加しているのは若者プラス、そこのメンター的な大人で、Fracton Venturesもそうですが、インキュベーションみたいな形で、個人プラスプロジェクトを支援するためのDAOになっています。しかも、その支援の仕方が、インパクト系の世界課題を解決するための課題意識を持っている学生たち向けのDAOなんです。そういう中長期な思考を持っている人材が集まっていて、Fracton Venturesとしても短期的な視点ではなく、ロングターム思考でWeb3を見ていきたいので、そのような人たちに会えるということで参加してみたんですけど、そういった特徴を持ったDAOが増えているという気はします。
DAOの定義
設楽:
最近色々なDAOが立ち上がっていると思うのですが、改めてDAOの定義を聞きたいです。
赤澤:
DAOはやはりブロックチェーンというのがバックグラウンドにあって、そのうえで動くスマートコントラクトがあって、そのアルゴリズムがルールになり、人々がコラボレーションをしているものを指すと思います。例えば、投資DAOのように、VCのモデルというのをDAOという形で置き直したらどうなるのだろうかというものとか、本来最初ブロックチェーンが出てきた時に、金融機関をアンバンドリングするみたいな感じでよく言われましたけど、今まで普通の組織がやっていたものが、機能ごとにバラバラにされて、もう一回再構築される、といったことが今後DAOで起こっていくんだろうなとは思っています。
亀井:
DAOの定義というと、中心が自動化されていて、周りに人がいる、という定義が元なんですが、それしかDAOとして認めないという派閥と、認める派閥に分かれています。僕らとしては、人が介在しているDAOも認める方がイノベーションが起きうるかなと思っています。
鈴木:
海外の人に会うと、なんとかDAOのHead○○(肩書き)ですとか言われたりするのですが、それは時期だと思うのですよね。DAOという組織、DAOという名前のついたグループが立ち上がって、それが本当の意味でのDAOになるまでのステップがあると思います。MakerDAOで言っても、Maker Foundation自体が解散の決議を経て解散をしている。そうすると、結局散り散りになったMakerの人たちが、個々人としてずっと貢献するという本来のDAOの組織になっていく。ここまででも彼らは数年かかっているので、こういうものをこれから数年かけて我々は見ていかなければいけないのかなと思っていて、まだDAOになりうる未来が見えていれば、今は別に完全なDAOになろうとしているDAOを全力で否定することもないと思います。
設楽:
一番ピュアなDAOはビットコインだと思うんです。でもビットコインも初めは分散化していないし、サトシナカモトがいたし、という状況ですよね。だから、DAO準備組織を経てDAOになっていくというのが多分フローで、ビットコインだって何年もかかったし、イーサリウムだって途中だし、などといったことですもんね。
赤澤:
世の中にDAOがあるという言い方としてはおかしくて、DAOになるためのプロセスがあるのであって、DAOそのものは多分ないんですよね。組織とか人が集まってコラボレーションしましょうという動きはあるわけじゃないですか。そのプロセスがあって、その時のスナップショットを撮った時に、その時々の構造が、どのぐらい中心があるのか、分散しているのかという話だけであって、皆でバラバラに分散してやったほうがいいよねという領域であれば、どんどんDAOに向けて頑張っていくプロセスがあって、それがブロックチェーンやスマートコントラクトという技術で支えられているというぐらいの認識のほうが色々なアイディアが出てきて良いのかなと思ったりはします。
鈴木:
あとはDAOが成長をしていく上で、限りなく一般的に使われてくるプロトコルは生まれてくるんじゃないかなと思っています。例えば今だと中の人たちがどのように貢献したかをスプレッドシートで付けている、といったことがまだ起きているんです。それは全然効率的ではないのですが、完全にフルオンチェーン、自動化されるコーディング、例えば誰でも作れるノーコードツールみたいなものが生まれて、本当に誰でも定義を設定できますとなったら、それがスマートコントラクトでデプロイ出来た瞬間に、一気にオンチェーン化される。ちゃんと自動で執行されるということになる。そういうツールが一個出てくると、急速に本質のDAOに近づいていくみたいなことがどんどん起きていくと思っています。大事なのはそういうマインドを持ってDAOを作っていこう、関わっていこうという人がどれぐらいいるのかというところで、今のなあなあの感じの方が良いなと感じてしまうと、自分たちの都合の良い方向にすがってしまうので、そうではないものを作れるように視座を高めることが重要だと思います。
設楽:
要はDAOという組織形態をみるのではなく、それを構成するためのプロトコルというパーツがいっぱい出来てきていて、こちらのパーツの方がいい、といったようなことが始まっているというところですよね。そこでコミュニティがより新しい形になっていくという段階だと思います。ちなみに、FractonさんもDAO化するとか、もしくはDAOを作ろうということは考えたりしていないんですか。
鈴木:
我々の今の立ち位置は、DAOをインキュベーションするみたいな意味は有り得ると思っています。我々はインキュベーションという言葉を使っていますが、2段階あると思っていて、最初のインキュベーションは基本的に開発者その人をインキュベーションしなければいけないと思っています。2段階目はそれが本当にDAOとして成り立つときに、DAOとしてのインキュベーションをするというフェーズで、本当に運営者が介在しなくても回るような仕組みが出来ているのか、などを見ます。あとは、Fractonで言うと、弊社はチームでDAOに貢献するというのを結構大事にしています。DAOのフォーラムを見たことがある方は分かると思いますけど、本当に掲示板みたいなもので、難しい会話を個人でしている。ですけれど、本来であれば会社やチームという単位で意見を出せればもっと質の高いアウトプットが出せると思っていて、だからこそFractonの中には、色んなものに詳しい人、例えば最近も入ったメンバーに、zk(ゼロ知識証明)に詳しいメンバーが入っているんですけれど、そういうメンバーを中に内包することで、我々の中でのアウトプットの質を上げていくことやチームでDAOに貢献するということをすごく今大事にしています。
設楽:
ここまでの話をまとめると、DAOは組織そのものよりも、組織の考え方や思考の意味合いが大きいのでしょうか?
赤澤:
そうですね。どちらかと言うと、考え方や思想のほうが強く出てくるのかなというところがあります。FractonではDAOを作らないのですかという先ほどの質問も、DAO=環境があって、その環境を良くするために庭師みたいな人が必要なわけです。庭師はプレイヤーです。だからちょっと位置づけが違っていて、DAOというものを、一般的な組織と同じレイヤーで考えてしまうと、少しかみ合わせが悪くて、組織そのものというよりは環境といった意味合いでまず考えてみる方がすごい見通しは良くなるのかなとは思います。
設楽:
構成要素として思想みたいなものって重要ですよね。人が中心にいないけれど、皆がやろうとしている目的などが一緒だとか。一言であれはDAOじゃない、DAOだとか言うのは不毛で、こういう風に自然発生的に色々と出てきながら広がっていく、といった感じなのでしょうか。
鈴木:
見ながら考えて行けば良いんです。結局、自分の時間って有限なので、DAOに貢献したいと思っても自分で使える時間は有限じゃないですか。だから全部のDAOに同様の熱量でコミットするなんてことは出来ないので、その時に自分の居心地の良いDAOって何だろうってことを考える事しかないのだろうと思います。それが有名な方が立ち上げたものについていくというのだったら、それはそれでありなのかもしれないし、誰も知らないところで1人輝く自分を見せたいのかもしれないし、そこの目的が見えると良いのではと思います。
DAOと親和性が高い分野
設楽:
DAOと親和性が高い分野ってなんですか?
赤澤:
DAOって一人勝ちは出来にくくするという言い方はおかしいですけれど、皆で参加して、皆で良くなって、その果実を皆で分け合うみたいな側面があるんです。だからそういう意味でいくと、公共事業のような側面のものは割と使いやすいだろうなと。実際にNFTを使っているDAOで、山古志村のNFTの話であるとか、徐々にそういう系の話は出てきていますが、思いつきですけれど、オリンピックや万博、お祭りなどとDAOは絶対に合うと思っています。別に誰かが勝つという目的のものではなくて、それを皆で盛り上げて良くなることがそもそもの目的だから相性いいと思いますね。
亀井:
最近だと、Desciと言われるような学問や教育の分野などは、集合知のようなアプローチで、しかもかつ分散なので、世界中の人たちの意見を集約できるという形で相性が良いなと思ったり、あとは最近Tornado cashの事件がありましたけど、中心がいないことで逮捕されにくいみたいな、ちょっとグレーな使われ方も本来は相性が良いとは思っています。プラットフォームを提供して事件が起きても、プラットフォーム提供者側が本当は罪があるんだっけという議論が昔からあるじゃないですか。そういう時に中心がない組織がやっていることによって、ある意味誰も逮捕されないという、本当にプロトコルっぽい使われ方をするなどは本来相性が良いんだろうなと思います。
Web3のマスアダプションに必要な要素
設楽:
Web3のマスアダプションに必要な要素はなんでしょう?
鈴木:
マスアダプションって必要なのかなと思っている側です私は。Web3がある未来が万人にとって良い未来かと言われると、私はNOなのではと思うたちです。今のアプリで、今の社会制度の中で生活している方がすごく安泰と言ったら失礼ですけど、大きな自分の人生の大失敗を起こさなくて済む可能性が高いなと思っています。Web3の目指す世界って、それを突き抜けて天地をひっくり返そうみたいな世界観にいると思っているので、天地ひっくり返すところまでモチベーションがあったら面白いなと思っています。そのような人たちが見ているマーケットが、表と裏みたいな感じで、地球の表面はある種今の経済の延長線上にあって、地球の裏面は、本当にクリプトの思想になっている人たちがちょっとパンク的な思想で、ひっくり返した世界になっているみたいなもので、中間の境目がカオスになっているということがギリギリ、マスアダプションなのかなということを日々よく考えます。
亀井:
時間をかけていくのかなと思っています。すでにマスアダプションは世界ではしているんじゃないかという気もしていて、グローバルニッチではもう成り立っている。例えばVtuberとかすごい市場もあって、ある意味マスアダプションしているではないですか。ただあれって、好きな人とか興味がある人しか触っていないけれど、世界ではもう認知されていると。そのレベルには既になっているので、時間はかかるけど、ゆっくりしていくのかなと思います。
赤澤:
シンプルに考えると、何の課題を解決しているのかだと思うんです。例えば、Uniswapという、トークンとトークンをスマートコントラクトで無人で交換できるプロトコルがあるんです。ふと考えた時に、Uniswapがあることで、僕の生活はなんか良くなったかなと考えるんです。美味しいものを食べられたかなとか。自分が抱えているペインをどれだけ、解決できているのかというところが、多分最終的な答えになってくると思うんです。例えばUniswapの例を出しましたけど、今は第一段階だからそれで良いんです。そういうUniswapなどといった色々なプロトコルが、ある意味1個のパーツとなって、それを組み合わせて課題を解決すれば良いと思っています。そちらが第二段階だと思うんです。だから、いかにその段階まで行けるかだと思っていて、そのための1個のヒントになると思うのが、僕らが生活する中で間違いなく使っている具体的なリソース、ヒト・モノ・カネ・情報・時間みたいなものですね。そういうものに対してどれだけインパクトを与えられるかだと思っていて、そのために使える武器が今世界中でどんどん出てきているというふうに僕は捉えているので。
多分マスアダプションに行くのにもう一段階、二段階ぐらい、ステップが必要で、そこまで行くと今のインターネットみたいに、スマホ一個で食べ物が家に届くみたいな状態になると思います。昔は無かったですけど、それが出来てマスアダプションしましたよね、普通にあのデリバリーアプリが。そのような感じで、自分のデータを自分の許可の元で売ることでそれがお金になる世界がもしかしたら来るかもしれないし。それによって機械学習の精度が大きく向上して、例えば新しい未知のウイルスが出てきたとしても、半年でデータの力で薬が出来るようになりましたと。それはある意味ペインを解決しているし、そのようなことがどれだけできるかだと思うので、普通のスタートアップが会社を作る時に何の課題を解決しますか、など考えたりすることと同じことだと思ってはいます。
Web3の次なるユースケース
設楽:
Web3のユースケースで次来そうなものはなんですか?
鈴木:
私はそれこそウィキリークスなどの政治暴露みたいなものを、いかに止められずにインターネットで公開するかが必要な国や地域があると思っています。表現したいものがあるんだけど、世界中に声が届いていないような人たちをエンパワーする手段としてWeb3があるとすごい面白いなって思います。私が好きなのはそういう反体制派ですね。Web3を使って社会をより良い方に進めたり、場合によってはグローバルでは支援者がいるんだけど、自分の村の周りには誰も味方がいないような人たちに、寄付としての暗号通貨を募って、その寄付によって活動を続けていくことなんか面白いと思いますね。どちらかというと、日本というよりは発展途上の国や地域からそのようなものが出てくると面白いと思います。
赤澤:
次のユースケースは「データの流通」がくるんじゃないかなと思っています。データのアダプションの仕方として、スマートシティがあると思っています。スマートシティって、今色々な議論がされているんですけど、都市OSという概念があって、街の色々な動きや決まり、プロセスを制御するためのOSが必要だよね、という議論があるんです。例えば、スマートグリッドというエネルギーの話であったり、医療、モビリティの話があります。色々なもののデータをなめらかに動かして、かつ機械学習でフィードバックもできるようにして、都市を回そう、と。その為に何が必要かという事が今議論されていて、そこに応用されるんじゃないかなと思っています。街はそもそも皆のものじゃないですか。Web3とかDAOって相性が良いんですよね。そういう意味でいくと、データやDIDというものが扱えるようになるとそこのピースが埋まるんですよ。なのでスマートシティにおけるデータの活用というところに期待をしています。
亀井:
データの話で行くと、フェムテックってそもそも女性特有の健康問題や人体の話なので、なかなかこれまでの技術では、そもそも参入企業も少なくて、取れていないデータが多いらしいんです。そこでWeb3を活用していくと割と相性がいいのかなと思います。
地方とWeb3の相性
設楽:
Web3が山古志DAOの例のように地方で活用される例は今後増えていくと思いますか?
亀井:
一個思うのは、そもそも地方と都市みたいなやり方ではなくて、Web3自体が分散じゃないですか。その一部に地方があると言うだけでもう良いんじゃないかなと思っています。地方でWeb3をやるというよりは、Web3は完全に分散したコミュニティだからこそ東京でやる必要は無くて地方でもやれると。地方でやりたいのならばこれまでWeb2的な資本主義においてやりづらかったビジネスをWeb3でやればと思うのです。例えば一次産業系など。都内よりは絶対地方の方がそのような課題が多いはずなので。
赤澤:
本来、インターネットに国境はないですからね。僕は出身が岡山なんですけど、岡山や広島が抱えている大きな課題として、山間部や離島で、必要なインフラが届かない、という問題があるんですよ。当然インターネットが無かったら多分もっと酷いことにはなるのだと思うんですよね。一方で、インターネットがあることで色々なことが出来るようになるという側面はあると思っています。その意味でいくとWeb3が出てきて、インターネットで扱えるリソースというものが大きく増えてきて山間部や離島などで暮らしている人たちに必要な生活のインフラを届けるなど出来るかもしれないなと思ったりはします。今後過疎化って地方になればなるほどどんどん進んでいくので、Web3がそういった課題を解決する可能性はありますね。
設楽:
今回福岡市でのイベント開催ですけれども、福岡市はかなりWeb3に積極的な印象が有りますよね。
鈴木:
本当にそうですよね。新しいことにトライするというのはいつの時代もすごく大事だと思っていますし、考え方が大きく変わってしまうWeb3やDAOの考え方を自治体側で積極的に推進して頂けるというのはすごく励みになるなと思っています。
設楽:
本当にクリプトのイベントは東京の次に多いのが福岡だと思います。実際開発企業も多いし、福岡市を特区にしようという話もしているのですごいですよね。他の自治体も動かないとやばいという雰囲気になってきているので、日本全体を引っ張っていってほしいなと思います。
亀井:
福岡市って若い人も多いし、人口が増えているので、クリプトって年齢は関係無いですが、どう考えてもアンラーンすることが多いので、若い人の方が相性が良いので、結果的に福岡市との相性がすごくいいんだろうなって思います。
Web3の情報収集方法
設楽:
Web3、DAO、ブロックチェーンに関してどういう情報収集をしているのでしょうか。
鈴木:
私はポッドキャストを聴いています。皆さん記事を読むと思うんです。記事ってやっぱりコンテキストが3行〜4行に詰まっているので、想いとか何故この人がやっているのか、この人は誰なのかみたいなところが全然分からないのですよね。一方、英語のポッドキャストを聴いていると、そもそもこの人は誰で、どのような経歴を持っていて、なぜこのなんとかプロトコルやなんとかDAOを始めたのか、彼が目指している世界観は何なのかなどといったストーリーが出てくることが多いです。そういう話って海外に行って直接聞かないと聞けないような話だと思うんですけど、ポッドキャストを使えば聞くことができます。それこそ番組によってはYouTubeに動画が残っていたりするので、そうすると結構話し手や、話し手がうつしている画面が見えたりするので、あまり英語が完璧に分からなくても、言っていることが大体わかります。得られる情報量が全然違うので、私も30分~40分時間があると、1エピソードは聴くようにしています。
おすすめは、Bankless DAOのやっているポッドキャストの番外編で、Layer Zeroという名前のポッドキャストのシリーズです。そこではVitalik Buterinのお父さんなどが出てきて、Vitalik子育て論を喋ってくれたりします。そういう人たちのバックグラウンドであったり、エピソードトークが多く、あんまり難しい専門用語はいらずに聴けるので、是非そういう所から、人となりを含めて聴いてもらうと勉強になるのではと思っています。そういうところに出てくる節々の言葉がまさにトレンドの一端だと思っていて。例えば最近だと、サービスDAOという言葉をよく聞くんですが、例えば美容院のヘアカットDAOがあったとしたら、専門性としてDAOのメンバーは髪を切ると言う専門職を外側に提供する、対価として提供されたDAOからDAOのトークンをもらうというモデル。いわゆるスペシャリストの集団なんですよね。このようにサービスDAOが流行っているなという情報が得られたりするので、是非頑張って聴いてもらえると面白いかなと思います。
亀井:
海外カンファレンスはやはり行くと良いと思っていて、それも海外カンファレンスの中身のセッションの様子はYouTubeでもあがるし全然興味が無いんですけど、そこに集まる人たちってティアが高い人達で、彼らのインサイトはかなり貴重でして、オンラインでなかなか会えたり出来ない中、現場に行くと絶対会えますし、コミュニケーションが始まるんですよね。すごく逆説的ですけど、分散型でかつオンライン完結のWeb3のはずなのに、皆がある意味デジタルノマドなので、世界中のカンファレンスを転々としてるんですよね。コロナが明けて毎月のように何かしらやっているので、そこに行くのは重要です。向こうでのふるまい方、戦い方もあるのですが。
設楽:
まず分からなくても行ってみるって大事ですよね。国内でもカンファレンスはこの後も福岡でもあるし、とりあえずどんどん行ってみることが重要ですね。
鈴木:
ハッカソン系はお勧めですね。ETHなんとか等。今、ETH Mexicoをやってますけど。今月もETH Seoulが開催されていました。そういうハッカソン系のイベントとかは割と分かりやすくて、ハッカソンをやっている裏で、技術的なプレゼンテーションをやっていて、両方に人が群がっているので、ハッカソンに出るのも良し、出ないで会場だけ行って来ている人たちと交流するもよしです。そういう感じの方が結構面白い人といっぱい出会えると思います。
設楽:
先ほどのポッドキャストの話なんですが、とはいえ英語で聴くのは大変だという方は、あたらしい経済でポッドキャストやっているので、皆様今Spotify開いてお気に入り登録をしてください(会場笑)。というのと、実は僕も英語あまり得意じゃないんですよ。で、海外のポッドキャストでもBanklessなどちゃんと把握したいじゃないですか。僕がやっているのは、ポッドキャストはRSSで配信されているので、MP3ファイル抜けるんですね。Banklessのポッドキャストはブラウザから保存できます。それを、僕の場合はNottaというアプリで文字起こしをします。Nottaにそのまま携帯でダウンロードして、携帯でアップロードするんですね。さらにNottaは翻訳機能が付いているんです。翻訳を押すと全部日本語になります。それをやると英語の勉強にもなるし、実際に僕もCZのインタビューなどをあげて、CZが何を言っているのかなというのをガーって読んで把握しています。海外のポッドキャストの英語の文字起こしの精度はかなり良いので。音も綺麗だし結構お勧めですね。
設楽:
(会場からの質問)現実社会で力を持っている人、つまり従来の資本主義の世界で力のある人はDAO社会が訪れるとどうなると思いますか?
亀井:
全然パフォーマンスを出せる部分はあると思うんです。結局DAOも、先ほどのサービスDAOもそうですし、DAOとDAOのやり取りなどで、DAO的な営業も必要であったり、割と古臭い事をやってると思うんです。
設楽:
意外と今のクリプトに抜けているピースだと思っています。というのもクリプトってやはりノリで動いているところがあるじゃないですか。でもアダプションをするには、それこそ一般企業や自治体、政府とも重なっていかないとダメな時に、意外とこういう従来のビジネススキルが大事かなと思っていますけれど。
赤澤:
そうですね。それまで新聞のようなマスメディアがある中で、インターネットが出てきて、ニュースアプリが出てきてとなった時に、ニュースアプリがあるなら新聞は要らないよねと多くの人が思ったはずなんです。でも、新聞は絶滅していないですよね。結局そういう事だと思っていて、影響力があった新聞や雑誌は、インターネットが出てきても、役割が変わるかもしれないし、影響力の強さは変わるかもしれないけど、残ってはいるわけです。それは一定数のニーズがあり、何か解決しているものがあるんです。欲しがってる人がいるっていうところもあるので。物が残るというところで、物理的なものが欲しいとか。僕らだって、この本、kindleで買えば良いじゃん、となるんですが、やはりリアルな本があると嬉しいですよね。
そういったことが、人材でも起こると思っていて、今までミドルマンとして大活躍していた人たちは、DAOが出てくると確かに分は悪いんですけど、別にミドルマンをやってたから生き残っていたわけじゃないと思うんです。目利き力や色々なところと交渉して話を付けて、座組みを作る力、っていうのは結局あるわけなので、力の発揮の仕方を変えれば、十分活躍出来ると思うんです。結局腕力のある人たち(現実世界で力を持っている人たち)が発想を切り替えられるかどうかの勝負だと思うので、どうなると思いますかという問いに関しては、その人たち次第かなと思います。べつに、これは今に始まった特別な話ではなくて、ずっと何百年も同じことを繰り返している中の1ページが今来ているだけだと思うので、別にそんな大きな違いを感じなくて良いのかなと思っています。
Web3の未来
設楽:
Web3が5年後10年後の未来にどうなっていると想像しますか?
鈴木:
私はDAOで国を買うというのが見たいですね。DAOでお金を集めて、小国の自主権を持っている国を買ってしまうというDAOが出てきてもおかしくないと思います。皆デジタルノマドなので、絶対どこかに国民として存在しなければいけないじゃないですか。住民登録しないといけない。そのための国を買ってしまう可能性って全然このマーケットならばあるなと思っています。現地の方が立ち退かなくても、彼らにちゃんとお金でインセンティブを与えた上で、調和をとり、そこのパスポートを持って、皆がデジタルノマド的に行き来する世界が来ても不思議じゃない。DAOが買えるものの限界を知りたいと思っています。国を買うという状況が生まれそうな瞬間に、世の中ってどういう風に動くんだろう、と考えたりしています。
亀井:
CoinbaseのBalaji(元CTO)が最近出したThe Network Stateなどにはまさにそれに絡む話が書かれているんですよね。(人々は)もともと神が拠り所になっていて、そこから国によるガバナンスになり、その次にネットワークがきているという話。結局、クリプトやDAOの話も、ネットワークが国を凌駕してしまっている。Web2時代にもFacebookが国を超えると言われていたが、中国からの撤退もそうだったように結局国に抗えなかった。でも、今回暗号技術も絡んでいるので、クリプトは国を超えるかもしれないと期待されていて、鈴木が今言ったように、まさにDAOが最終的に彼らのアイデンティティのためにどこかのアセットを買うのはあると思っていて、そこで国を買うは全然ありえない話ではないですね。
赤澤:
僕からは技術者の目線から話したいと思うんですが、技術って面白くて、例えばAIが出てきたときに、「あれ?人間の知性ってなんだっけ?」という問いを問いかけてきたんですよ。だって、AIがなかったら、人間の知性が絶対的なもので、人間の中でそもそも疑問を抱くことはなかったわけですよ。技術が出てくるとそういうことが良く起こるんです。ブロックチェーンやWeb3、DAOというのは、人間が今まで全く疑問に思ってこなかった国家や経済、資本主義などという、僕らが当たり前にその中で暮らしていたものに対して、ある種問いかけを投げかけてきたんですよ。だから今、国という話が出てきましたが、こういう話が出てきたのもやはり自分の外側にそういうものが出てきたから、「あれ?そういえば、今自分たちの住んでいる世界って何だろう?」、という問いかけをしてきているわけです。そういう比較できるものが出てきたことで、比べてしまうわけです。ある意味これは技術が進展していく中で起こってきた面白い現象でもあるし、せっかくであれば、より良い在り方をその中で見つけていければ良いなとも思います。
例えば、人間がイーロンマスク筆頭に宇宙に行くと思うんですよ。それで、もし人間が火星に住んだら、月に住んだら、コロニーに住んだら、自治はどうするのという話は出てくると思うんです。それは絶対DAOだと僕は思うんですよ。だから、国を買うという話に近い話ですけれど、人間が今まで住んでいなかったところに住む世界が広がった時の統治の仕方ってどうだろう、秩序の作り方ってどうだろう、となった時に、「あれ?こういうの使えるのかな?」というふうに想像力を広げてみるのです。SFの世界ですけれど、そういう話が真面目な顔をして出来るようになっているというのは面白い時代だなとは思っています。
設楽:
愛以外は買えてしまうかもしれないですね、DAOで。書籍ではもっと具体的なお話が書かれているので、ぜひご覧いただければ幸いです。ありがとうございました。
次回開催『NFT Fukuoka meet up』
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