4月29日

昨日、夜ご飯を食べないで寝てしまったから、おなかがすいて目が覚める。朝ごはんにほうれん草入りのオムレツを焼いた。そういえば今日は祝日、両親の結婚記念日だったな、と思いLINEを送る。今日で結婚してから29年になるのだそう。外はとても晴れていて気持ちがいい。だんだんと曜日の感覚が鈍くなってきているのを感じるけれど、祝日にはちゃんと祝日っぽい天候、祝日っぽい空気が街の中にあるような気がする。

2つ先の駅に住んでいる友人と中間地点で待ち合わせて散歩をした。「最近何してる?ゴールデンウィークはどうする?」最近は、誰にでもこの質問を聞いてしまう。そしてみんな口をそろえて「何もないよ」と言う。

歩いていると、飲食店がずらりと並ぶ通りがあり、テイクアウト専用のお店がたくさん出店していた。わたしがお祭りみたいだ、と思っていたら友人が「お祭りみたいだね」って言った。タイ料理のお弁当とタイのビールを買って、公園で食べる。お箸が入っていなくて、どうしようって困っていると隣の夫婦が「これ」ってプラスチックのスプーンをくれた。わたしはパッタイのお弁当だったからスプーンで食べるのが結構むずかしかったけど、ひとがやさしくしてくれて嬉しかった。

街を歩いているひとの服装が、ゴールデンウィークを思わせた。半袖の人や足を出してひらひらのスカートを履いているひとがいた。わたしは今日こんなに気温が高くなるなんて知らなくて、自分の服装をちょっと後悔する(インナーにはヒートテックまで着てしまって)。普段使っている天気のアプリが速度制限で見られなくて、最近はほとんど感覚で今日の気温を予想しているのだけど、春は気候が変わりやすくて急に雨が降ったりするし判断がむずかしい。夕方突然降る雨に、ひとりだけずぶ濡れになったりする。スマホをあまり見なくなってから、よく空を見るようになった。昼間は空と雲のかたち、夜は月の色を見ている。ここ数日、三日月のかたちがとても綺麗。

家に帰ってくると佐々木から「ラジオ録ろうよ」って電話がきた。たけやすも誘って「YMKラジオ」の収録。最近また習慣化しつつある。ただ話すだけなのにたのしい。2回収録して、一回目はただの雑談。わたしの頭が全然はたらかなくて会話がふわふわした。やっぱりゴールデンウィークの話や、10万円が給付されたら何に使うかの話、お便りのメールを読んで、気が付けば1時間。話すことが尽きたところで、たけやすが「今から2本目録ろうよ」って言い出す。話したいこともうないな、って思ったけどなんとなく応じた。2本目も最初はなんてことない話を続けていたのだけど、気が付いたら「自分が大切にしたいこと」を話す流れになっていた。誰かが放った言葉の端っこをつかまえて、それを真剣に考えてみる。いろいろな角度から眺めてみたり、自分のことに当てはめて思ったことを言葉にしてみる、そんなことをこの2人とずーっとやってるな、と思った。

「他人を変えるんじゃなくて、自分を変えてみようと思ってる。自分をそっくりあたらしくするのではなくて、自分の一部をメンテナンスするみたいに」たけやすの言葉が自分のなかに入ってきて、響く。わたしはどうだろう、どのようにしたいだろう。

会話を録音するようになったのは、今年に入ってからのこと。何気なく話していることだって、考えてみたらそれはその時だけの、たった一度きりのことで、二度と同じ温度でその話をすることなんて無いってことに気が付いた。わたしは話をすることが大好きで、誰かと心が通い合う瞬間には何にも代えがたいよろこびを感じる。この時のことをわたしの脳がずっとずっと忘れませんようにと強く祈ってみるけれど、時間の経過とともにその輪郭はゆっくりと溶けていってしまう。ラジオはどう考えても自分のために続けていて、あの時こんな話をこんな話し方でしたな、とか、すごく笑ったな、とか既に過去になった時間のことを思い出して、それからそんな積み重ねの上に立っている今の自分のことを思う。

誰かにとってはまったく意味を持たないかもしれないただの会話。だけど、わたしにとってはこれほど重大で切実な営みはなくて、こんな場所をこれからも大切にまもっていきたいな、と思う。そして、そう思ったことを、また忘れてしまわないように、いまこうして書いて残している。


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