見出し画像

そもそも「ブックカフェ」とは 『本の読める場所を求めて』全文公開(7)

第2章 いったいなんなのか、ブックカフェ
⑦そもそも「ブックカフェ」とは

手元にちょうどいいものがあった。ブックカフェ特集の雑誌だ。リード文を見てみれば、そこにあるのは「本にぴたりと寄り添って……思わず長居したくなるような……椅子に深く腰掛けて……一杯のコーヒーと一冊の本を手に……」というような、ブックカフェリサーチを重ねつつある者にとっては見慣れた、常套の言葉たちだ。この文章が描き出している光景は、傍らにコーヒーを置いて、ゆっくりゆっくり、読書に没頭している、そういうものだ。
やはり、読める場所ということだろうか。
公式の見解はどうなっているだろう。「日本ブックカフェ協会」という組織の定義によると、「カフェと本屋が合体」し、「本棚に並ぶ本を自由に手に取り読むことができ」、本は「購入でき」る(「閲覧のみのカフェ」もあり)とのことだ。
次に「なぜブックカフェが「生まれた」のか?」という項目。

現在の日本では年間7万点から8万点が出版されています。同時にネット社会が進化して、膨大な情報に誰でもいつでも簡単にアクセスできる時代になりました。膨大な出版物や情報にあふれる一方で、書店に並んでいる本はどこも同じような品揃えの店が多く、何となく物足りない。自分の関心のあるテーマや趣味、嗜好にあった店に行きたいというニーズからブックカフェが生まれました。
日本ブックカフェ協会ホームページ「ブックカフェとは」

「書店はどこも同じで退屈だが、ブックカフェなら、自分の嗜好に合った本を見つけることができる」ということなのだろうか。理路がわからない。書店は怒ってみてもいいかもしれない。ともあれ、ブックカフェの主たる機能のひとつは「本と出会う」ということにあるようだ。
それから「なぜブックカフェが「増えている」のか?」。全国的な書店数の減少に触れたあと、唐突に「もうひとつは希薄になりつつある人間関係と孤独です」と続く。

〔…〕現代は「個」というものが重視される時代です。家庭や学校、会社組織においても「個性」を伸ばすということが盛んに言われています。それ自体はいいことだと思いますが、一方で人間関係が表面的で希薄なものになってきています。ネット社会になり「つながる」時代になってきたと言われていますが本当に「つながっている」のでしょうか? 人は一人では生きていけません。ファーストプレイスである「家庭」、セカンドプレイスの「職場」に加えてサードプレイスとして「ブックカフェ」のニーズが高まってきています。このような時代の変化が「ブックカフェ」の増加につながっていると考えられます。本とカフェは相性がいいことと小資本で開業できることもブックカフェが「増えている」大きな要因のひとつです。
同前

人と人とのつながりを取り戻す必要がある。それはわかった。でも、だからといって、そのための「サードプレイス」が「ブックカフェ」である必然性はわからないし、強引で飛躍のある説明だとは思うが、本好き同士でつながりたいという人たちが存在することは理解できる。
まとめると、ブックカフェとは「本のあるカフェ」のことで、主だった機能は「本と出会う」「人とつながる」ということだった。「本を読む」という言葉はここにはない。ブックカフェには「本を読む」という機能はないのか。それとも、言わずもがなのものとして内包されているのか。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?