読書の日記(11/11-17)
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11月11日(月)
起きると部屋から出てきた遊ちゃんに誕生日おめでとう、と言われてそのことを思い出して、僕の頭にあったのは『正反対な君の僕』のことたった。読んだか聞くと「あっ!」ということで僕がトイレに行ったり歯を磨いたりしているあいだに読み、少しするとぶぶぶぶぶ、という音が聞こえて見ると床に座り込んでぐすんぐすんと泣いていた。それを見ただけで僕も涙が込み上げた。
家を出て歩きながらもあの場面この場面と思い出され、涙が込み上げた。わかるよ、わかる。ありがとう、ずっとありがとう。やっぱり、濱口竜介の映画を思うし、滝口悠生の小説を思う。こんなふうに人に伝えられたらいいなとこいねがう言葉を、照れや恐れを突き破って発すること。それがどれだけ「なかなかこうは言えないよ」というものであっても、あるいはそうであればあるほど、フィクションというものの意義があるのではないか、と歩きながら私は考えた。濱口竜介、滝口悠生、阿賀沢紅茶、と私は考えた。
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