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オリジナル小説 高所で会いましょう。#4

「ケント様、本当によろしかったのですか?あの御方ともっと一緒に居たいと思ってらっしゃったのではないですか?」
「えっ?何でそう思うんだ?」
「それは……その……なんといいましょうか……雰囲気……でしょうか?」
「うーん……俺にはよく分からないな。」
「そう……なのですね……。」
どこか寂しげな表情を浮かべるサーシャを見て、ケントは不思議に思った。
(どうして、この子はこんなにも悲しそうな顔をしているのだろう?)
(やっぱり俺がサーシャさんの傍を離れてしまったのが原因なのか?)
(でも、そんなに長い間離れていたわけじゃないのに……。)
するとその時――
「あっ!あれは何だ!?」
「ひゃっ!」
ケントの突然の大声に驚くサーシャ。
「な、何かありましたか!?」
「いやいや、ちょっと待ってくれ!」
そう言うとケントは、慌てて鞄の中を漁りだす。
「確か、ここに入っていたはずだけど……」
「…………」
「よし、あった!」
「それは一体?」
「これだよ。」
ケントが取り出した物は『魔力探知器』であった。
以前、王都を訪れた際に、貴族の屋敷にあった本を読みながら作った物である。
「これはね、離れた場所にある特定の物体を見つけることが出来るんだよ。」
「なんですって?」
「ほら、こっちに来てくれる?」
「はい。」
「よし、じゃあちょっと手を繋いでくれる?」
「手を繋ぐのですか?」
「うん。そしたら目を瞑っててね。」
「分かりました。こうでしょうか?」
サーシャは言われた通りに目を閉じる。
「よし、いくよ。3、2、1!」
「んん……」
するとサーシャは一瞬だけ体を震わせる。しかし、何も起こらないことに首を傾げるサーシャ。
「ん?終わりましたか?」
「いやいや、これからだよ。」
「そうですか……。んん……。」
「どうだい?」
「あっ、なにか見つけることができました。」
「どこだい?」
「あそこの木陰ですわ。」
「おお、ちゃんと見つけたみたいだな。」
「これが例の物なのですね。」
「そうだよ。これを作れば、離れた距離にいる人間を探すことができるようになるはずなんだ。」
「なるほど。」
サーシャは大きく納得すると同時に、疑問を感じた。
なぜそんなものを作る必要があるのかと。
しかしすぐに、それが自分のためだと気づくことになる。
サーシャの予想は当たっていた。
というのも、サーシャとの待ち合わせの場所を決める時、彼女は非常に困ることになったのだ。
それは、この街でのケントがどんな扱いになっているかということが関係していた。
ケントは現在、冒険者として活動していることになっている。
つまり、その活動のために必要な施設や装備が街にはあるということだ。
では、ケントがそれらを利用することは出来るのだろうか?答えはノーである。
当然と言えば当然だが、ケントはこの国での冒険者登録を行っていない。
なので、仮にギルドに登録したとしても、利用することができない。
そして、それだけではなく、ケントが街中で買い物をしたり、宿に泊まったりすることは不可能なのだ。
なぜなら、ケントの顔を知る者がいないからだ。
それならば、変装すればいいの
「それなら問題ありませんわ!」とサーシャは言い切った。
そしてケントと共に服屋に足を運んだのだった。
そして、その結果、ケントは全身をローブで覆い隠しながら、顔を隠すためのマスクまでつけることになったのだった。
もちろんその代金は全てケントが支払うことになった
「はい。」
サーシャから返された魔力探知器を受け取ると、再びそれを鞄の中に入れる。
「よし、これで準備は整ったぞ!」
「いよいよ行くのですね。」
「ああ。それじゃあ行こうか。」
「はい!」
こうしてケント達の
「まずは、ここから一番近い町を目指して進もうか。」
「はい。」
ケント達の初めての外出は続くのだった。

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