見出し画像

【イベントレポート】メンタルヘルス講座「クソすぎる世の中にどう対応するか」編 後編


前編はこちらから


―生物学的な話?



参加者B)話をずっと聴いていて、単純でとても変な質問なんですけど、手島さんにお聞きしたいんですが、私息子も育てて、その子供もいておばあちゃんなんですけけど、私自身嫌な思いをいっぱいしてきて、、、男性って、本能的に抑えられない、という言説などはどうなんでしょうか。女の人ももちろんあると思うし、どちらも理性で抑えてると思うんですけど。性的な衝動は男の人は抑えられないものなんでしょうか?すみません、すごく聞きづらいことなんですけど。

手島)うーん、どう言ったらいいんでしょう。…性衝動はあるわけですが、価値観の問題で、「それで楽しいですか?」って思うっていう。例えば相手の同意もないとかあるいはなんでもいいんですが、うーん、どう説明したらいいんでしょうね。難しいな。
 
フユコ)答えになってるかわからないんですけど…関係あるかな、と思って。「男は生物学的に仕方ないよ」みたいなこと無茶苦茶言われるんですよ。「男女の違いじゃん」みたいな。「男女の違い」で済まされることがムカつくなと思ってて。最近。例えば、youtubeとかで恋愛心理学のような動画で、バイナルの「男か女か」というようなものの中で、「男はこうだから女はそれを理解しましょう」「女はこうだから男は理解しましょう」みたいなのを言ってて、そうなんだ、と思うのもあるんですけど、なんかその性別への固定観念の再生産みたいな面もあるなとも思うし、「生物学的にそういうものになってます」みたいなのを言っていて、「男は子孫を作るために浮気は仕方ない」とか(笑)それってそうじゃない男の人にも失礼だし、うーん、なんだろ…
参加者A)生物的な話をすると、ほんとに女性って毎日エストロゲンという性ホルモンがあるので、毎月の生理もそうですけど、7年ごとの周期でとにかく年と月日で毎日違う体になるんです。だからP M S(月経前症候群 人によって抑うつ、睡眠障害、過食、食欲不振、頭痛、腰痛など様々)とかがあったりするんですけど、男性の場合は、17歳くらいから上ったテストステロン(男性ホルモン)がずっと40代まで一定なんです。人によって条件はあるんですが、性ホルモンと性欲が結びついてるので、仮にですけど、女性のホルモンが一定であれば、生物学上の女性の話にはなるんですけど、そういう人たちにとっても、性欲っていうものが常に湧いてる状態かもしれない。こと生物学上の男性に関しては性欲が常に一定で高い状態なのかもしれないですけど、それが科学の話をしているのか社会の話をしているのかは全く別の話なので、それを根拠にしてもらっては困る、わけなんですよね。(性欲があるから仕方がないというのは)自分は力が強いから、筋肉があるから、いろんな人を自分の思い通りにできるって言ってるのと同じようなもので、それが結び付けられては困るんですよね。
手島)すっごいわかりやすいです。
会場)(笑)
手島)でもほんとですよね。だから人間の性質としては、例えば戦国時代だったらバサバサ人を殺してたかもしれないし、そういう一面もありますが、だからと言って現代社会で目の前に通ったやつを切り捨て御免しますかっていう話だったりもするじゃないですか。いやしないですよねっていうところもあるし、我々も少しずつ積み重ねてきた社会っていうのもあるから。
参加者B)まさに「クソみたいな」って言い方にピッタリだと思うんですけど、いろんな、当たり前に与えられてきた、生まれてきてから男らしさとか女らしさみたいなことを親から自動的に「こうしなさい」っていうのは全てにおいてあるじゃないですか。生まれてから植え付けられた後天的な価値観と、本来自分が持っている性欲とかって違うんじゃないかなって思うんですよね。それが変な教育を受けずに生きていける時代がいいのか、それともある程度確立した、理想とする社会があった方がいいのか…何が理想なのかなあとか最近思ったりもします。すみません、コアな話をしてしまって。

フユコ)いや、私も「生物学的な」っていう話をしたかったので。飲み会とかで、挑んできてるよな?って思う時あるので(笑)この前も動物の生物学的な研究の話をされて、「生物的には男はこういうふうに作られていて、だから暴力を振るう」みたいな。私が何か切り返してくるのを期待してたかもしれないんですけど、その動物の話をしたかっただけなのかもしれないですけど…「男性性に暴力性が伴うのはしょうがなくて人間だと、これくらいの割合で男女の間に暴力があって、アフリカに行くと日本より高くてこうで…」みたいな話とかをされて、私は「それで言ったら教育の意味がないじゃないですか」って言ったんですけど。(笑)男女の性の問題になった途端後天的に何かを学んで作ってきた人間の文化が無視される(笑)

参加者A)男性が自分の行動を正当化するためにそういった動物など生物の話を出すのであれば、女性の低容量ピルは全部無償化して欲しいなと思いますね。私、去年から、低用量ピルを飲み始めたんですね、これはさっき言ったエストロゲンというものの量を調整するお薬なんですけど、本当にめちゃめちゃ楽なんですね。波が一切ない。言い方あれなんですけど男性と近くなったかな、と一瞬思っちゃうくらい、高山順子さんっていう去年芥川賞を受賞した、「美味しいご飯が食べられますように」っていう作品を書いた作家の方の、「犬の形をしているもの」っていう、それより前に出た本の中にあったのが、おそらく低容量ピルを飲んでる女性の話で、「子宮が黙っているだけで体はこんなに楽なんだ」っていうの文章にしていたんですけど、ほんとにもうん、わかりみしかなくて。もし、男性に
フユコ)男性に合わせるっていう意味では
参加者A)そう、合わせるっていう意味では、性欲が強かったり、ついつい手が出ちゃったり、暴力的であったりするのが生物学的な話だよって言いたいんだったら、ピル無料にしろって、高いんだよ、って。毎月毎月払っても価値があるから、体がめちゃめちゃ楽だから、払いますけど、本当は3割負担(※)とかでもいいから、やってほしい。(※処方の種類、本人の症状により負担率は異なる)(※2追記あり)
フユコ)最近、実は、男女の平等を達成するのは無理だと思ってる人は多いんじゃないかなとも思ってて、
手島)うんうん
フユコ)表向きには差別はだめだよねっていうけど、そういう話をしてる本人も、「女性に活躍してほしい」っていうんですけど、女性の何を期待してるのかよくわからなくて。だけど、生理があるのとかピルを飲まなきゃいけないのとか、(女性自身に)受け入れてもらって、さらに何か、という感じがします…。男はこういうところあるよね、女はこういうところあるよね、でもまあ多様性だし!で片付けられてるというか。
参加者C)今の話を聞いていて、僕はどっちかというと男性で、女性のことは全然わからなくて、こういうところに来て…今姉と一緒に住んでるんですけど、ある時姉が体調がすごく悪かったんです。で、今まで何もしてこなかったんですけど「大丈夫?」って言ったらその時泣かれて。「そんなこと言われると思わなかった」っていうんです。自分で思ってるよりも女性の負担とか全然違うんだなって。実感としてわかったんです。で多分他の部分でそういうこともあるじゃないですか。そういうのって、結構強い言葉とかで(フユコさんが)いうじゃないですか。で僕は前だったら「なんでそんなこと言うの?」って思ってたんです。どこでも習ったことないしって。でもそういうの自分で学んでいこうと思います。こう言うところに来るのもそうだけど、発信とかもできればって思うんです。怖いし、他の人にどう思われるかとかあるんですが。
参加者D)(プライバシーのため公開不可の話:LGBTQなどジェンダー関連を含めた性教育が女子生徒のみに行われており、男子生徒にはおこなわれていない学校があるよという内容)
会場)驚
フユコ)だから!男性に全然そういうこと(女性の性、身体にまつわること)を知らなかったと言われても、責めれないですよね!?
 

―「個人的なこと」などない


参加者B)関連してなんですけど、何かを発信した時に中指を「立てられる」こともあるじゃないですか。そういう時に自分の心をどうしたらいいかっていうアドバイスもらえますか?そういうつもりはないけど、発信した言葉がその人たちにとっては地雷だったりするわけじゃないですか。中指を立てられた時に自分を正常に切り替える方法というか。
参加者A)いいですか(笑)個人の問題っていうのはないに等しいくらいだと思うんですね。社会の側が教育を与えてなかったりするという点では仮に、私も絶対あると思うんです。私自身、シスヘテロ女性で、特権だと思ってるんです。私は男性のことが好きだと思ってるし、その点で、シスでない女性に対して、何かしらのストレスを与えることって、私自身がツイッターで発信してるものでもあるかもしれないし、そこで、一旦訂正されたことについては学んでいけばいいと思うし、でもそこで、100%自分が悪いのではなくて、自分に教育の機会を与えていなかった社会がっていうような思い方をして、進んでいくしかないのかなと思います。自分が特権側ということはどこかで、嫌な思いをしながら気付かされるっていうのはあるとは思うんですけど、それを恐れて行動ができないのはちょっと寂しいかなと思います。
フユコ)素晴らしい回答だと思います。えーっと、私は見当違いな空リプをもらうことが多くて、、
参加者B)正解がわからないことに対して中指立てられた時にどうしたらいいかわからなくて。正解がわかってることに関して中指を立てられるのは、さっき仰ったようにわかるんですけど、それが本当の正解とわからないとき…せっかく発したのに周りの価値観のせいで、せっかく言ったのにそうじゃないよねっていうことにあたっちゃった時に、でもそれって誰も悪くないじゃないですか。潰されちゃうのが私的にはやだなあって。思ったので。
フユコ)答えになってるかわからないですけど、私に空リプをしてきた人は、「この人は、鬱屈してる何かを抱えてるんだな」って思ってます。何か自分が成功していない、我慢を強いられなきゃいけない立場にこの人自身がいるかもしれないな、っていうふうに思って、ミュートしました。
参加者B)(笑)
フユコ)(最近あった出来事に触れつつ)自分への批判で、当てはまらない場合、どこで誤解があるかとか屈折したかとかは考えますけどね。言われたりしますか?
手島)ありますよ。うーん、正直無理ですよね。気持ち乱れますよね。100いいことを言われても1酷いことを言われると心乱れますよね。これはもうそういうものだし、これはあくまで自分の場合はなんですけど、言ってることと若干矛盾してるかもしれないんですが、基本的に人を変えようとは思ってないです。ただ、知って欲しいことは届けたいです。そこはちょっと違うじゃないですか。知って欲しいことを届けた上でその人がどうなるか。こちらとしてはこうなって欲しいな、はあるんですが変えようとはあまり思ってないので、(酷いリプライが)来ても、終了。別にその痛みを無くそうともしない方が。相手に期待はそれ以上しない。生きてれば虫には刺されるじゃないですか。かといって世の中から蚊を全滅させることができるのか、みたいな話でもあるので、そのくらいの感じですかね。できるだけ、信頼できる人と話をする。痛みを無くそうとすると泥沼にハマることもあるんですよね。全ての感情には意味があって、不味いものはないので。
参加者B)痛みも大事。
手島)大事。それでしんどくならないように、僕でもいいので話してもらえると(笑)みたいなことかもしれないんですけど。あるものはなくせない。解決にならないんですけどね。仕方ないです。
さっきの平等ってことに関しても思うんですけど、そもそもジェンダー平等って定着してるからいいんですけど、ジェンダーバイナリーって考え方はやめましょうよ、というところからそもそもスタートしてるんですよね。でもジェンダー平等って言うとやっぱり揚げ足取りというか、固定されていて、そう言うふうに誤解されているところもあるかなあと思います。
参加者A)私もそう思います
手島)平等はいいと思うんですけど、そもそもジェンダーバイナル(男女)の2つしかないみたいな。ジェンダーっていうものがそもそも…じゃないですか。ちょっとそこのところが少しもやるところはありますね。
フユコ)私も前回のジェンダー平等の回の録音を聞いて、自分の価値観の中にまだ「男性女性それ以外」みたいなのが根付いてるなって自分の話を聞いて思って。そうじゃなくて、みんな心の中にグラデーションがあって、どっちかというとこっち、みたいな感じなのかもしれないし。
手島)まあその社会的な力によってなんらかの役割を与えられてしまっているっていうのが本来の問題なわけじゃないですか。そこは固定で、平等を目指すっていうのが変な話で、ややこしいですけど。
参加者A)多様性を認めあいましょうっていうのがそもそもくそって思うんですけど、認め合いましょう、じゃねーんだよ。って。それは圧倒的に今、シス、ヘテロ側の女性男性が言っていることであって。認めるとかじゃないから、って思うんですよね。それはそこにあるものだし、そこで、パワーバランスがあるのにオッケーになる、しょうがない、とか。同性愛の方から見たら、「異性を愛せる、セックスできることってどういうこと?」って話じゃないですか。そこの論点ももう少しいろんな人に持ってほしい。
フユコ)私もめちゃくちゃ勉強中なので、さっき彼女も仰ったように、自分もシスヘテロ女性という点においてまだ理解できてないところがいっぱいある状況で、でも理解したいとすごく思ってます。自分の中で優先順位とかもあると思うし、興味を優先させてると自覚することで自分を納得させてる部分があります。
手島)いうて僕も全然勉強中ですし、絶対差別とかしてるだろうし。ただなんか、対話ができるのがいいですよね。対話していくことで、なんとかなったり、知ることもあるし、最近対話してないですよね。Twitterとかって。対話してるようで全然対話になってなかったりするんで。ちゃんと話をしましょうよって。だからこういう場がやりたいな、って言い出したのが1年前ですね。フユコさんのおかげで続いてます。
フユコ)いえいえ、でも(学ぶことが)面白いと感じてます。本で読んだ男性のセリフがそのまま出てきたりするので(笑)やっぱりそれくらい研究もされてて、社会的ってことですよね。「俺は言っちゃうぜ、コンプラとか気にせず!」みたいな人いるじゃないですか(笑)もうほんと死んでって思うんですけど(笑)
会場)笑
フユコ)でもあなたのことこの本に書いてあった、って思うと、余裕が持てます。ショックも受けますけど。「え、書いてあったこと言ってる…」みたいな(笑)それがまあさっきもおっしゃってましたけど、個人っていうことがどれくらいあり得るのか、っていうことを、その本に出てくる人が現実に現れた時に、これは社会なんだな、って思ったりもします。



あとがき
この記事はライブハウスで配布されるフリーミニコミ、[ b o i ](池田敦也 主宰)に寄稿されたものを一部訂正、加筆したものです。
毎回書き起こすの大変なんですが、過去の録音、書き起こしを見ているとすでに考えが変わって自分のなかでアップロードされているものに気づいたりできるので、記録としてとてもいいなと思っています。



※2生物学的には…のくだりで、生物学的な理由で、男性の性欲や暴力性が何かの加害の言い訳になるのであれば、女性の低容量ピルは無料にして欲しい、とありますが、男性の性欲と女性の生理は非対称なので、あくまで例えだと記しておきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?