昼間のネコになる
薄暗い部屋の中、昼間に見た公園のネコを思い出していた。
三毛ネコと黒っぽいネコ、2匹はほとんど境目が見えないくらい重なり合って1匹になって眠っていた。
草むらは初夏の日差しにほどよく温められて、2匹はもう私たちが近寄っていっても目も開けられないみたいだった。
「なつ」
そう呼ぶときの、彼の声が好きだ。
大切なものを丁寧に包むように呼びかける声。
その優しい声にくるまって、私の名前は私に届く。
「寒くない?」
冷房が効いた部屋の中、足元に押しのけられていた布団を彼は2人の肩まで引き上げる。
私は彼の体温を求めて、もっと深くその胸の中に潜り込んだ。
「もっと強く、ぎゅっとして」
そう言っても、いつも急に力を込めたりはしない。
彼の腕はそっと私を包むと、こわごわと力を強める。
強気でハキハキものを言う私が、こんな風に甘えられるのは、彼だからだ。
他の誰にも、こんなところ恥ずかしくて見せられない。
足を絡ませてこれ以上ないくらい体をピッタリ寄せてみたら、あのネコたちみたいにもっと1つに溶け合えるだろうか。
彼の足に間に、グイッと自分の足を割り込ませると、頭の上で「ふふっ」と吐息が漏れた。
すでに腕枕をさせられていた左手が、ゆっくり折り曲げられて私の頭にたどり着く。
ぽんぽんと、なでる手は、やっぱり私の予測よりもう一回り柔らかで優しい。
こんな人と溶け合えるなら、私さえもう少し優しく素直になれる気がした。