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Photo by
inagakijunya
Knife
思いがけず、その刃はキレイに刺さった。
僕の口から放たれた言葉は、彼女の胸の真ん中に突き刺さり、今その傷口からどくどくと血が流れて出しているのが見える。
彼女も僕も唖然として、その瞬間を眺めていた。
そんなつもりはなかった。こんなはずじゃなかった。
そのことは、きっと2人ともわかっていた。
だけど、血が流れていることは事実。
それは消しようのないこと。
あぁ、僕は、いつの間にこんな恐ろしいものを手にしていたんだろう。
その使い方も分かっていないくせに。
不器用に、不用意に投げたそれが、一瞬で世界を変えた。
「偽善者」
深くは考えずにそう言ったのだ。
なんとなくそういう言葉に例えられそうな気がした。
きっと、言葉の意味をちゃんと分かっていなかったのだ。
彼女の胸に凶器がのめり込む感触。
それを僕は知ってしまった。
決裂の時。それだけならまだいい。
僕は最後に、彼女を深く深く傷つけ、抉ったのだ。
忘れられない、あの瞬間の血の味。
いや、もしかすると僕は本当に、頬の内側を噛んでいたのかもしれない。
『カフェで読む物語』は、毎週金日更新です。
よかったら他のお話も読んでみてね!
次週もお楽しみに☕️
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