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私の半月


目の形だ。
目の形がいいのだろう。

私は、自分でそのことを知っている。
下から見上げたときに「くるり」という表現がぴったりの目。
まさに半月のように、整った形。

周りから「かわいい」と評されることは、もはや挨拶だった。
あまりにあっさり受け流してしまって、「言われ慣れてるんだね」なんて嫌味っぽく言われることもあった。
自分が言ったことなのに。


口紅を塗る。
香水を首筋と手首に。
鏡を見て、ピアスを決める。
そして、カードキーを片手に白いブーツを履く。

私は、今日も私をキレイに仕上げて街へ出る。
誰が見ていなくても、舞台の上を歩くように胸を張って進む。

自分の良さを知っているとは幸運なことだ。
自分を好きでいれるから。

一つにまとめた髪はさらさら揺れる。
今朝、毛先のほうにだけオイルをつけておいたから。
少し長めのピアスも楽しげに揺れる。
靴音はわざとらしくなく軽やかなに。

なんのことはない。
なりたい自分を知っていること、なりたい自分になれること。
それを私は分かっているだけなんだ。


『カフェで読む物語』は、毎週土曜日更新です。
よかったら他のお話も読んでみてね!
次週もお楽しみに☕️

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