僕たちの家に帰ろう

「僕たちの家に帰ろう」~だいたい500字映画レビュー~


僕たちの家に帰ろう

[2014年 中国]
監督 リー・ルイジュン
脚本 リー・ルイジュン
出演 タン・ロン、グオ・ソンタオ、バイ・ウェンシン他
時間 103分


広大で美しいシーンに浮かぶ“現実”

 舞台は中国北西部の乾いた草原地帯。少数民族・ユグル族の幼い兄弟、バーテルとアディカーがラクダに乗り、遠く離れた両親の放牧地まで旅をする。お互いに複雑な思いを持っているが故に、ケンカしてばかりの2人だったが、困難な旅を共に乗り越えていく中で、少しずつ兄弟の関係が変わっていく。

 最初は「子どもだけでこんなに広大な土地を旅するの!?」と心配になるのだが、遊牧民族だけあって、道に迷うことなく進んでいく。兄弟のやりとりも、「こんな子どもいるよね」と思わずクスッとなり、懐かしい気持ちになる。不安を掻き立てられるのはむしろ、彼らを通して見えてくるものだ。

 水不足で干上がった草原と河、荒廃した遺跡に貼り付けられた「人民日報」、滅びゆく寺院。美しいシーンの中に、少数民族の現実が沁みのように浮かび上がっている。幼い兄弟は、自分たちが見たものについて語ることはない。それだけに、一体何が起きているのかと考えさせられずにはいられない。

 中国の若き映画監督リー・ルイジュンが魂をこめて創り上げた作品。ぜひ観て、一緒に考えてほしい。

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