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自宅でも出来なくもないことを金と時間と労力を使ってわざわざ遠くでするという贅沢な週末についてのただの記録①

お盆前。何故か、長野の湯田中温泉にいた。
7月は仕事でイライラし続けた。
仕事から離れて休みが欲しい、と、思ってはいたが、私にとって、帰省する盆と正月は仕事より忙しい。
なぜなら、この十年近く、冠婚葬祭は私が担うことが増え、墓参りも盆の支度もおせち準備も私の仕事だ。私が帰らないとお盆が出来ないため、帰らざるを得ない。

なので、お盆の前に、逃避したい気持ちが抑えられなくなった。
自宅以外のどこかに行きたい。しかも、ひとりで行きたい。さらに一泊ぐらいしたい。
その条件で、この最も人がレジャーで動き回るこの時期に検索して、ヒットしたのが湯田中だった。ハイシーズンの週末に、女一人客を受け入れる、稀有な温泉宿があったからだ。

普段なら、私の旅は興味関心を満たすことが目的になる。去年のシチリア旅行など最たるもので、歴史書まで読み込んで史跡を回った。
が、今回はただただ、家じゃない場所に行きたいだけで、何をしたいわけでも観たいものがあるわけでもない。宿を決めた後もろくにリサーチせず、湯田中の駅に着いて初めて、Google Mapを立ち上げたという、ノープランもいいところだった。

湯田中に着いたのは11時前。
Googleを見ると、近所に神社と寺がある。史跡好きとしては見逃せない。
湯宮神社祭神はタケミナカタ、諏訪大社と同じ。高天原の一族に負けてケツまくって逃げたという話は、長野の人にはやっぱり禁句なんだろうか(ものすごく失礼)。
梅翁寺には、お湯で拭いてあげると同じ場所の不調がよくなるというお地蔵様がいる。妙に新しいのは、磨かれすぎて二代目か三代目だからなのだろうか。でも古刹といっても300年程だしなあ……いや、ツッコむまい。

寺の近くに今日の宿があったので、チェックインの時間前だが、荷物だけ預かってもらう。一番気の抜けた時間帯だからか、女将さんも仲居さんたちもTシャツ短パンで掃除中だった。
「やだー! すみません、こんな格好で!」
うん、この宿、多分性に合うわ。

それにしても、暑い。
湯田中はそこそこ標高があるはずだから、涼しかろうと踏んでいたのに、暑い。
「やだー!」の仲居さんに聞くと、ここ数年、急に暑くなったのだという。エアコンが全然効かないといっていたが、湯田中で訪れた場所は、どこも冷房はぬるかった。
もともと冷房に重きを置いていないらしい。冬場はエアコンぐらいじゃ効かないだろうしね。

身軽になったところで、食事である。
カフェもあるが、信州といえば蕎麦でしょう。ということで、地元の人もいくような、こじんまりとした蕎麦屋に行く。
老夫婦とおそらく娘さんでやっていると思われる店。うまいかまずいかでいわれれば、普通。
だが、見た目よりボリュームがあり、そして天ぷらざるそばが、650円だ。大盛にしても750円。何の文句があろう。

食べ終わると、まだ12時だ。チェックインは15時。あと三時間どうしよう。
そこでまたGoogleにお伺いをたてると、ソラテラスという場所があって、冬ならばスキー場である場所の上の方にケーブルカーで登れて眺望もよいという。駅からの送迎バスは30分後に出発。
下界にいても暑いばかり。よし、登ろう。

が、その30分の時間をどう使うか。蕎麦屋と駅は目と鼻の先。
すると駅舎のそばに足湯があるのに気が付く。よし、これだ。
暑いせいか人がいない。行儀悪く足を上げてパンツの裾をまくりあげ、足を突っ込む。熱い、けど気持ちがいい。足が温まったせいか、相対的に顔が涼しい。

こういうオープンな場所の常で、人が入っていると安全だと本能が言うらしく、兄弟らしい中学生くらいの男子二人と、アジア系カップルもやって来た。人目が恥ずかしくてできない、でも誰かがやっていればできる、ということは良くある。若い頃は特にそうだ。年を重ねて人目が気にならなくなったことは多い。
いいのか悪いのか、それは不明。

足湯で時間を潰した後、送迎バスに乗ってロープウェイ乗り場まで20分余。ロープウェイはかなりデカい。日本で最大級という。
昔、フランスのシャモニーに行った時に乗ったロープウェイもでかかった。
だからとう言うわけでもなかろうが、往復2500円はちょっと驚いた。2000円くらいとふんでいたんだが。
長野~湯田中間が特急料金込みで2620円。鈍行なら2420円。
なんだか腑に落ちない。

それだけ払ってたどり着いた山頂は、何も見えなかった。ロープウェイの途中までは素晴らしい眺望だったんだが。下界はもちろん空も見えない。完全に雲の中だ。
良かったことは、さすがに少し気温が低いことと、湯田中に着いて以来、熱暴走して止まっていたスマホのカメラが動き出したことか。
まあでも撮れたのは真っ白の写真だけだが。

すぐに降りても良かったが、帰りのバスが1時間半もあとなので、カフェに入る。
カフェ名を冠したコーヒーは、雲型のマシュマロをのせて雲海っぽくするモノだが、不器用な私がやると当然こうなる。↓

ううむ、なにかが違う。

(以下につづく)

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