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超年下男子に恋をする①(他人のいう「イケメン」はおおよそ自分の好みではない)

 コロナがなければ、私たちは出会わなかった。

 海外で働いていた私は、一時帰国後、そのままコロナで日本から出られなくなってしまった。

 一方、バイトを探していた彼は、コロナでバイトがなかなかみつからず、交通便が悪い飲食店にバイトが決まった。もう一つ決まったところもあったが、本当にちょっとの差で先に電話がきたのがその飲食店だったので、律儀な彼は先に決まった方を選んだ。

 その飲食店は、私が一時帰国の度に働いていた店で、かれこれもう5年にはなる。
 まさかそのままコロナが長引き、ずっと働き続けることになるとは思ってはいなかった。

 その年の新入社員の夕夏とは特に仲が良かった。家が遠い彼女を、車通勤の私はよく送った。その夕夏が、イケメンが面接に来たと言ったのは5月ぐらいだったか。

 私は他人がいう「イケメン」というのは、おおよそ自分の好みとはかけ離れていることを知っている。私の好みは、一言で言えば脆弱な美少年、血を吐いて倒れそうなタイプだ。乙女ゲームのキャラクターではヤンデレ小悪魔系が大好物。ゲーマーの夕夏とは、推しキャラの好みもちがうので、彼女の言う「イケメン」は自分の好みではないとは思っていたものの、女子ばかり多いバイトの中で、男子がバイトに入るのはめずらしいということもあり、少しは私も期待した。

 けれども面接があっても、実際に採用されるまでには時間もかかる。

 そして忘れかけていたころ、新人バイトとして入ってきたのが彼だった。

 彼は大学二年生。一言で言うと好青年。コロナ下でマスクをしていたというのもあるが、目が特に印象的で、優しそうな眼をしていた。イケメンかといえばまあイケメンだけれど、「イケメンだー」とあっさり本人に軽く言えるぐらい、特に最初は興味もなかった。ただ、新人が入れば、たいてい私が面倒をみることになるので、彼にも仕事を教えることになった。

 以前も飲食店に勤めていたというので、言われたことはそれなりにやるし、反応も悪くはなかった。最初は戦力になると期待したけれど、とんだ期待外れとわかるまで、それほど時間はかからなかった。

 そしてただの「好青年」でしかなかった彼が、自分の中で特別な子になっていくまでの時間もそれほどかからなかったが、この時はまだわからなかった。

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