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現場施工よもやまばなし -廃液処理-


昔とったキネヅカがふるえるうちに、塗装現場のあれこれご紹介。
今回はずばり、現場での廃液処理について。
「廃液処理=現場で出た汚れ水」をどうやって捨てるかです。

長い前置き

塗装や彩色では刷毛や筆を使います。
毎日の作業終わりや休憩前には筆の洗浄が必須。
なにも気にせず水場でジャージャー洗えれば良いのですが、そういうわけにはいきません。
水場を気軽に使えない大きな理由は、塗料中に有害な顔料を含むためです。

社寺建築における単色塗装では、赤色を塗ることが多々あります。
ちょっと極端な単色塗装ですが、こんな感じの。

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この赤色塗料は鉛や水銀、鉄といった鉱物由来の顔料を多く含んでいます。
重金属にあたるものもあり、ほいほい流すとよろしくありません。
加えて建造物の塗装は結構な量ですので、立派な産業廃棄物。
絵具の排水程度であれば大丈夫という声もありますが、蓄積され、容易には分解されず、毒性があるもの。
使い続けるのであれば無自覚なことは避けたいものです。

また、単純に見栄えが悪いという点もあります。
鉛丹や水銀朱の類は比重が重いため、水場で洗浄した際にも、そう簡単には流れてくれません。
道具を洗った後には至る所に赤い顔料が残ります。
しつこく流せばそのうち流れますが、現場で水場をお借りしている際には見た目の印象がすこぶる悪い。
ステンレスのシンクでもわずかな凹みに溜まりますし、石製ならなおのことです。
こうした理由から、塗装道具は工房に持ち帰って洗うのが基本です。

ひと昔は規制もゆるかったため、塗装現場でも美大でも特に気にせず洗い流したり、山の中ならそのあたりに撒いて捨てていたそうですが、今はそういうわけにもいきません。
また、筆を綺麗さっぱり洗うには、お湯や石鹸のある場所が適しているので、やはり持ち帰って洗いたいものです。

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〇 日帰り現場の場合
日帰り現場では、筆や刷毛をバケツの中で軽く洗い、汚れた水は廃液タンクに入れて持ち帰ります。
現場で軽く洗う余裕がないようなら、ラップや濡らしたウエスなどにくるんで持ち帰ります。
くるまないと塗料が乾燥して筆を傷めてしまい、洗い手間も増えます。
ナイロン製のボタ刷毛のような、あまり繊細に扱う必要のないものは、少々乱暴だなとは思いますが、塗料につけたまま帰るという手もあります。

〇 出張現場の場合
問題は出張現場です。
工房に毎日帰れないため、廃液が捨てられません。
廃液タンクにためればいいのですが、いざ工房に帰る日にはタンクが多くなりすぎ、車に積み込めない可能性があります。
また、廃液には膠が含まれており、腐敗してえらい臭いになります。

そこで今回の本題。

現場での廃液処理

この方法を教えてくださったのは、有名絵俱メーカーのナカガワ胡粉さん。Youtubeでその方法を配信されているのでご紹介します。


さる研修にて実演くださったのですが、その後Youtubeでも公開されました。他にも色々と実演動画を公開されておりますので是非。

これが本当に助かりました。
一時期、孤島で施工にあたっていた時がありまして。
船で毎日現場に通うんですね。
天候によっては帰れない日もあるんですね。

帰れる日でも、小船のため荷物がかなり制限されます。
そんな状況でもこの方法なら廃液はすべて現場で処理でき、工房に帰る週末に乾いた顔料を持ち帰るだけで済むのです。
だいたい5リットルバケツに入れてやっていたので、沈殿には少々時間がかかりますがタンクを持ち帰ることを思えば楽なものです。

だいたいの出張現場は1週間単位で帰るため、土曜に帰宅して月曜朝にまた現場へ移動します。
自宅に「リ〇ング」が投函されますので、週末ムフムフ拝読し、週明けに現場へ持参していました。
新聞紙って本当に汎用性が高いです。感謝。


最後に少々余談をば。

お察しかとは思いますが、出張現場は大変です。
あまり声高には言わないようにしていきますが、じわじわ滲み出る黒い何かを否が応でも感じてしまわれたらすみません。

ただ、出張現場には楽しみや素敵な醍醐味があります。
そんな楽しみの1つが、筆を洗うこと。
出張現場でも筆は大切にしたいので、現場で顔料はゆすいで落とし、毛先をラップでくるんで筆巻に包み、持ち帰ってホテルやウィークリーマンションで洗うのです。
その際ただ洗うのではなくて、入浴時に洗ってリンスをしてあげるのです!
あんまり構いすぎも良くありませんが、繊細な筆はたまのケアも大切。
なかなか工房ではリンスまでしてあげられないけれど、出張ならばしてあげられるというささやかな喜びの1つです。

以上、現場での廃液処理についてお話しました。
最後までお読み頂きありがとうございます。それでは。

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