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【第十九回俳樂會】結果公表・選評など

0.ご挨拶

ごきげんよう。芙蓉セツ子と申します。
4月も終わりに差し掛かりまして、いよいよ春も詠み納めといった季節になりましたけれども、皆さま如何お過ごしでしょうか。

さて、ということで先月の【観櫻句會】から早一月。今月も俳樂會を開催させて頂きまして無事に一連の行事が終了致しましたので、こちらにて結果をご報告させていただきたく存じます。

ご投句・ご選句・ご観覧頂きました皆様まことにありがとう存じました。

それでは、まず今回の総合結果と投句並びに選句の記録から参りましょう。

1.総合結果

【第十九回俳樂會】 投句者数 9名 選句者数8名 投句総数 30句
【お題】季語『夏近し』・漢字「茶」・題材〔旅行をしたつもりで一句〕

【一席(12点)】今昔の軋む都や花の宿       芙蓉セツ子
【二席(11点)】出涸らしの茶もまだ冷めぬ春炬燵  ひびの侘助
【三席(10点)】棚に二つカルピスの瓶夏近し    わとし
         豆苗の茎あをあをと夏近し     村蛙

《入選(9点)》 夏近しこゝろの犬の毛繕ひ      よるはねむる

《佳作(6点・5点)》
         車内泊髪に桜の残りをり      わとし
         ヘアゴムの痕を残して夏近し    芙蓉セツ子
         恐竜の目は茶色なり紫木蓮     村蛙
         茶柱の聳へたるごと山笑ふ     芙蓉セツ子
         長閑さや水面光れる御茶ノ水    ペラ男


※詳しくは上記『【第十九回俳樂會】記録帳』を御覧くださいませ。
※発表文のため敬称略とさせていただきます。

2.全体的な感想など

今回の句会は先月とは異なりまして「兼題」形式に戻してみたのですけれども、皆さま結構作句に悩んだというお話をされておりました。
(出題したわたくし自身、今回かなり苦戦いたしました)

いつも「兼題」を決める際は1つは広く解釈できて詠みやすいもの(王道)を入れまして、他は少し捻ってみたり、新手を披露してみたりするのですけれども、今回その王道で出したはずの「夏近し」に苦労してしまいました。

肌寒いのです。

4月下旬の句会なので流石にもう少し夏らしい陽気を感じられるかなと思いまして、春の詠み納めとして『夏近し』をお題にしたのですけれども、今年は朝晩まだまだ薄着にはなれない感じがいたしますわよね。一週間遅ければ違ったのでしょうけれども――。

ということでなんだか晩春の季感を掴めぬまま〆切が近づいてしまいまして、推敲する間もなく撮って出しになってしまいました。こういう時は、「雑詠」形式の募集のほうが良い句が思いつくかもしれませんわね。

あと〔旅行をしたつもりで一句〕というお題を今回出して見たのですけれども如何でしたかしら。皆さまから様々な視点からの句をお寄せ頂きましたけれども、これもわたくし中々難しかったですわ。

個人的に今回気づいたのは想像の旅は五感のうち「香」が一番難しいこと。
例えば寫眞で「見る」ことや「音」を想像することはなんとなく出来るかと思うのですけれども、その街の「匂い」というのは実際にそこに足を運ばない限り詠めないのではないかと感じました。

今回はわたくしが元々京都へ旅行するつもりが流れてしまったのでこのお題を出してみたのですけれども、やはり旅行の句は夢の中ではなく実際に足を運ばないと詠めない感覚がありますわね。古都を歩き回りたいですわ――。

――ということで、春の句会はこれで詠み納め。来月からは「夏」の季語になりますわ。また春とは違った季語と出会えますわね。

今回初めて参加してくださった方もいらっしゃいましてありがとう存じました。嬉しゅうございますわ。
5月の句会はより大規模に催すことができればと準備をしておりますので、皆さまの御参加をお待ちしておりますわ。

次回は「兼題3句+雑詠3句=1人最大6句」のような、兼題と雑詠を組み合わせた方式を試してみたくて色々仕組みを考えておりますわ。
兼題が得意な方、雑詠が得意な方がいらっしゃるかと思うのですけれども、皆さまはどちらがお好きかしら?

3.今回の芙蓉選

さて、ここからは個人的な記録ということで、今回は次の6句を選句で採らせていただきました。

【天】豆苗の茎あをあをと夏近し     村蛙
自然の豆苗ではなくってお台所で育てている豆苗の景が浮かんでまいりました。切る前かしら後かしかね。日常の身近な目線の中にある茎の瑞々しさ。
その細やかな発見に夏の近づきを思わせる誠に精緻な一句かと存じますわ。

【地】車内泊髪に桜の残りをり      わとし
移動しながらの旅というのは常とはまた異なった旅情を生みますけれども、その土地の思い出が一片の桜花となって余韻を残してゆくというところに、車中泊特有の旅情を感じましたわ。

【人】日の伸びて寄り道やせむ夏近し   ペラ男
日が伸びるとなんとなくそのまま家に帰ってしまうのが勿体なくて寄り道したくなりますわよね。「日永」という春の季語がありますけれども、きっとこの時期特有の感覚かと存じますわ。

【福】春うらら渋茶を冷ましさまし飲む  わとし
「冷ましさまし」という緩やかに温んでいくような表現にうららかさを感じましたわ。
上五の「春うらら」は正確には「うらら」で季語ですので「春」は不要なのですけれどもこのあたりは判断が分かれそうですわね。俳句として先例自体はあるのですけれども、わたくしは一応解釈としては避ける立場かしら。
さておき、句全体としては好きなので並選で採らせていただきましたわ。

【禄】長閑さや水面光れる御茶ノ水    ペラ男
谷の起伏と神田川の入り組んだ高低差のある御茶ノ水の風景、わたくしも情感があって好きなのですけれども、とりわけ春の水面は良いですわよね。
都会的な自然と申しますか、特別な響きがありますわ。

【寿】棚に二つカルピスの瓶夏近し    わとし
わたくし前々から「カルピス」は夏の季語にしても良いと思っているのですけれども如何かしら。ここではきっとまだ今夏の出番を待つカルピスの瓶ではないかしら。そんな素朴な光景に夏の近づく楽しさを感じましたわ。

4.今回の拙句

今回、自分でお題を決めておきながら自分で苦戦するという有様だったのですけれども「花の宿」の句で一席を頂きました。ありがとう存じます。
季感を十分に捉えられていたか怪しいので、全体的にもう少し推敲の時間を置いたほうが良かった気がいたしますわ。夏への課題ですわね。

今昔の軋む都や花の宿
この春、本当は京都に遊びに行きたかったのですけれども叶いませんでしたので旅行をしたつもりで一句。今昔の溶け合う街を散歩したかったですわ。モティーフは古民家の軋む戸に感じる歴史の重みですわ。

ヘアゴムの痕を残して夏近し
なんとなくその髪留めの跡に夏を感じみた句ですわ。

茶柱の聳へたるごと山笑ふ
字題「茶」をどう使うか、自分で問題を出しておきながら今回悩みまして、底抜けに明るく縁起の良い句が一句くらいはあっても良いかなと思い作句してみました。完全に大げさな表現ですけれども――。

乳飲み子のほっぺ撫づるや竹の秋
「竹の秋」は春の季語なのですけれども、黄変した春の竹が出す音の感覚を赤ちゃんのほっぺで表現してみたかったのですけれども選句では人気がありませんでしたわね。
ちなみにモティーフは京都東山の「竹林の小路」でしたわ。お題としては、〔旅行をしたつもりで旅先の一句〕でして今回は2句とも京都の旅でした。

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【ご参加者頂いた皆さまの選評】

今回も選句の際に多くの選評を添えて頂きました。ありがとう存じます。
皆さまから頂きました選評は上記『記録帳』より閲覧が可能ですので是非そちらも合わせて御覧くださいませ。

また、こちらでも選評の記事を書いてくださいました。
いつも誠にありがとう存じます。嬉しゅうございますわ。 

俳樂會主催 芙蓉セツ子

平素よりご支援頂きまして誠にありがとう存じます。賜りましたご支援は今後の文芸活動に活用させて頂きたく存じます。