20181010あり塚

これまでありが塔

わたしたちがリフォームしようとしているおうちは
みんなに「はなちゃんち」と呼ばれている。

はなちゃんと呼ばれる
90代でなくなられた
とてもかわいらしかったというおばあちゃんが
住んでいたおうちだからだ。

はなちゃんの暮らしていた
そのままになっているので
まずは暮らしの道具を整理するところから
リフォームをはじめている。

使えないものはすべて捨てる
たき火で燃やせるものは燃やし
燃やせないものは分別する。

使えそうなものや
大切そうなものは
それぞれ決めた場所へ。

はなちゃんのおうちには
はなちゃんの感触が残っている。

ヒールのある革靴
シンプルな形のスカート
オシャレな柄のワンピース
ためこまれたプラスチックの容器
刺繍作品といろいろな太さの刺繍針、、、
丁寧な文字で書かれたお手紙やメモ
木の枠の旅行鞄。

その旅行鞄を侵食するシロアリ
シロアリでふかふかになった床の間に住まう蝙蝠
床下でニャアニャアと餌をねだる迷い猫
おうちに寄り添って実をふくらませるナリ(蘇鉄)
屋根を見下ろすガジュマルと
その横でふんわり笑う赤いハイビスカス
ハイビスカスに戯れる黒い蝶
濃い影をつくる強い陽射し。

くらくらする。

わたしたちは
くらくらしながら
火を焚いて
燃やすものを
投げ込んでゆく。

押入れの旅行鞄と一体化していた
シロアリの塚も
とうとう燃やした。

どこかヨーロッパの塔のような
みごとな蟻塚だった。

カオサンは
「モンサンミッシェルに似てる・・・」と
しみじみとつぶやいている。

そのまま残して展示したいくらい
みごとな作品だが
やはり共存することは難しいだろうという
人間としての判断だ。

はなちゃんや
その後におうちを使っていた
いろいろなものたちに
手をあわせた。

これまで
ありがとうございました。
これからは
わたしたちが
おうちを守りますので
よろしくお願いいたします。

あいさつをして
またすこしだけ
おうちと近くなった気がした。

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