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旧暦元旦

旧暦の新年。
お向かいの89のお婆と過ごす。

鎌を研いで
松は、近くの山から、
真竹は、集落の奥の山裾から、
ゆずり葉は、庭から
いただいて束ねて門の両脇に飾る。

雨の晴れ間に
浜に出てあそぶ。
チヂミ(おばあはチヂンのことをこう言う)と三線と島唄の歌詞集を持って。

わたしがチヂミをたたいておばあが歌う
雨が降りだしたと思ったら
夫が来て私たちに傘をさしてくれる。

ひととき過ごしたら
集落の神さままでお参りにいく。

ウンジュクミィジュク
トオトガナシ

お線香をあげて手を合わせる。

他の家々はどこもお飾りはしていない。
公民館も誰もおらずに静か。

今はもう新暦でお正月お祝いするからね。
旧暦ではやってないね。

わたしゃ旧暦の人だからね
やっぱりやらんば気がすまんのよ。

昔はね一番賑やかな日だったよ。
みんな浜であそんでね
公民館にみんな集まってた。

しとしと雨降る静かな今日の景色にオーバーラップして
その頃の賑やかな風景や音が聴こえてくるよう。
おばあの中には旧暦が流れてる。
おばあが生きた時代
島の人は月のリズムとともに暮らしていたんだ。
わたしはそのリズムが心地よくて好きだ。

いろいろやらねばならぬことに
追われてはいるけれど
元旦のきょうは
ひとときゆっくりと
大切なものに
耳をすましましょうか。

*ふやよみ あおきさとみ*


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