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240825〜31 実家へ出戻り

And all the roads we have to walk are winding
And all the lights that lead us there are blinding
There are many things that
I would like to say to you, but I don’t know how

wonderwall/oasis(アルバム"(What’s The Story) Morning Glory?"収録)

日曜日
実家に戻ってきた。朝に父親と軽トラックで荷物を運んで汗をたくさんかく。荷物をすべて部屋に入れて、近くの洋食屋さんでお昼を食べた。カツレツがおいしかった。両親がどちらもものすごく残すので、もったいないと全部食べた。
日曜日は母親の誕生日だったから、夜はカニとフグを食べた。弟夫婦や妹夫婦といろんな話をしたけれど、こんなに家族っぽい時間はこれまで本当になかったなという気持ちが強く、あまり内容は覚えていない。とてもたのしかった。
夜はあまり眠れず、午前3時に目が覚めた。

月曜日
仕事が休みだったので、9月末まで借りている家へ行き、掃除をした。洗濯機と冷蔵庫をピカピカにして、浴室の鏡の石鹸垢をサンポールとハケとダイヤモンドカットスポンジで綺麗にした。サンポールはすごい。
昼にマクドナルドを買いに出たけど、住んでた街の店に行けばよかったと後悔。次掃除しにいくときはうどんでも食べよう。
夜は何も食べず眠った。寝つきが悪く前日と同じ午前3時に目が覚める。ただおなかがすいていただけかもしれない。

火曜日
淡々と仕事をこなす。何も考えず無心で働きたいが、次から次へと面倒事が舞い込んできて少しうんざりしている。
そもそものOSが違う人と会話をする意味についてすごく考えてしまう。なにを言っても言葉通りに伝わらない不通に対して、暴力というカードを切らず言葉を選ぶことに必死だ。なぜこんなにもわかりあえないのだろうか、というような話を職場の先輩に相談した。「そういうもん、としかいえないし、きみはきっとそれがいつかわかるし、そもそももう薄々わかっているとも思うし、わかったうえでうまくやれると思うけどな」と言ってもらう。買い被りな気もするが、もう少し頑張ってみようと思う。
仕事中ラジオを聴いていると、oasisが再結成するニュースが聞こえてきて驚いた。日本に来るならライブいきてえ。
夜に近所のラーメン屋に両親と行って味噌ラーメンを食べた。

水曜日
昨晩食べたラーメンとチャーハンのせいか、ちゃんと胸焼けをしていた。歳なんだろうかとショックを受ける。
仕事が繁忙期に入り、自分の仕事がほとんどできず、肉体労働に勤しんだ。一時期のことを思うと、おなかがすごく凹んできている気がする。このまま70キロ台に持っていきたい。
後輩のひとりから相談があり、休日出勤するつもりだと言っていたので、そんなことはしなくていいと諭す。私が代理でできる仕事だったので、彼女を諌め休みを取るよう促した。家へ帰ると、母親がお好み焼きを買ってきてくれていて、ありがたくいただいた。

木曜日
新人のころから仕事を教えていた後輩がかれこれ1ヶ月近く無断欠勤をしている穴埋めで、かつて自分が担当していた仕事を代理でおこなった。現役のときの5割にも満たない作業速度しか出せない自分が歯痒かった。
昼から夕方にかけてあった隙間時間で本来の仕事をこなした。台風の影響とほかの人の仕事の進捗状況を鑑みて、少し先の仕事まで終わらせる。自分の匙加減でレンジを広めたり縮めたりできるのはとても都合がよい。そのあとほかの人の仕事に入って、それから3時間ほど残業した。
通勤時の、行きと帰りに交通マナーを守れない老人と衝突しそうになる。口論や掴み合いになる前にグッと堪えた。だってもう三十路だから。
やり場のない怒りを父親に聞いてもらい、どうすればよいのか尋ねた。「その出来事は本質的なことではなく、ほかにさまざまな要因があって、おまえはいま気持ちに余裕がないのでは?」と諭される。ルールを守らない人に対してルールを守るよう伝えることの無意味さと、自身の納得をそのような人に求めていることがそもそも間違いでは? という指摘をされた。「そうやって社会的弱者を糾弾しているときのおまえはものすごく小さく見える。自分を追い込むのはよいが、するならばよい追い込み方をしなさい」とアドバイスをもらう。そういえば、かつてルールを守らない人に対してそんなに腹の立たない時期もあったなと思い出す。中学生のころなんかは、きっとよい追い込み方ができてたのだろうな。そうすると、かれこれ15年ぐらいなにもがんばれてなかったかもなとも思う。よい追い込み方ってなんだろう。
それにしても、くさっても親なのか、ものすごく私への解像度が高く、また私にわかるような言葉でものごとを伝えてくれるのだなと思った。このような存在は私にとっては稀有で、だからこそもう少し話を聞いてほしい。長生きしてほしいなと思う。

金曜日
朝からほかの人の仕事のヘルプに入る。1日中肉体労働だったのでつかれた。
ほんとに台風なんかあるのかってぐらい暑くて職場の人たちも参っている様子だったので、昼ごはんを買いにいくついでにアイスを差し入れた。
夕方から少し自分の仕事をしつつ、木曜に父親と話したことを先輩に聞いてもらう。「きみはよくもわるくも頑固だけど、人の話も素直に聞ける。だからこそ、もう少し流れに身を任せてもいいのではないか? なんでも理屈で理解しようとする点はよいところもある反面、それで損することもあるからね。あんまりなんでも難しく考えなくてもいいんじゃないか」と助言をもらう。小さいころから父親に耳にタコができるほど言われていることを言われたので、少し驚いた。
夜は母親が肉じゃがを作ってくれて、それをおなかいっぱい食べた。

土曜日
朝から雨が降っていて、カッパを羽織って自転車に乗る。当然だけど、職場につくまでにいっぱい濡れて最悪だった。
溜まっていた自分の仕事を着々とこなす。8月ももう終わるなあと思いながら、ひたすらキーボードを叩いた。この仕事の将来性と、自分の年齢と能力と可能性と、ちょっとしたときにすぐそんな言い訳ばかりが頭に靄をかける日々である。やるならやるし、やらないならやらない。定めた目標がぶれないのなら、そのほかはすべて手段なのだからもっと気楽にいけよ、とわかっているつもりだ。その「つもり」が全然わかっていないこともわかっているつもりである。自信はもちろんない。けれど、そればっかりじゃつまらないから、腹をくくってどこかでリスクも取りにいかなくちゃと考えている。
たくさん降った雨は昼頃には止んでいた。働いているビルの下に路駐している車のナンバープレートが"69"だった。すき家でお昼ごはんを食べる。豚汁がおいしい。そのあと戻ってまた淡々と作業をおこなって、一区切りついたところでトイレ掃除をした。
自転車でゆっくり帰路へつく。くじらのおなかみたいな雲や、周辺の雲をすべて吸収して太った帯のような不穏な雲が空のあちこちにあった。
夜は家族で焼肉を食べた。弟は仕事でこれなかった。週のはじめにカニとフグを食べたから、こんな贅沢ゆるされるのだろうかと少しうしろめたかった。妹は明日、哺乳瓶や服など、年の暮れにうまれてくる予定のこどものものを揃えに買い物へ行くと言っていた。「肉は塩とわさびで食べるのがいちばんおいしいんだ」と生意気に講釈も垂れていた。妊娠しているのに生センマイをひとくち食べた妹に父親が怒っていた。
こういう家族っぽい時間があとどれぐらい続いて、うまれてくるこどもがどれだけぼくらを再び家族にするんだろうって、そんなことをふと思った。


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