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夏の思い出

秋が来ると
訳もなくもの哀しくなるのは
あどけない夏の匂いが
跡形もなく
消えてしまうから


青春の頃は
とうの昔に過ぎて

夕焼け色に赤く染まった雲を
ただいつまでも追いかけて
道草を食っていた
少年には
夢を叶えてくれる時間が
無限に続いていくように思えた


あの頃のぼくらは
子供のようで
大人のような
あどけないはにかみと
負けん気の強い
悔し涙と
ことばにできないもどかしさと
ただ 溢れる思いがいっぱいで

日々の儚さなど
想像すらしていなかった


『スタンド・バイ・ミー』の少年たちは
儚さに満ちた
永遠の秘密基地
「大人はわかってくれない。」という
ズキズキする心の傷口から
にじみ出る血のような涙に

ぼくは、時空を越えて
共感した

跡形もなく消えて行く夏と
あの頃のぼくらは
とてもよく似ていて

色褪せた一枚の写真には
それが永遠に続くかのような
屈託のない笑顔が並んでいた


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