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新生活に、シェアハウスはいかが?

 金沢での暮らし、期限は2年間。有期雇用だから、終わりがくる。

 転職先が決まった時、同時に終わりの期日も決まった私。それでも、働いてみたい職場だったし、住んでみたい町だったから、迷わず福島を離れることにした。それまでの仕事が、もう身動き出来ないくらいに、ボタンの掛け違いが起きていたので、あの町から逃げ出したかった、という本音もあった。

 平屋の一軒家、3LDKに一人暮らし、が福島での私のスペック。もうね、福島で腰を落ち着けようと思っていたから、ずっとここで生活して行こうと思っていたから。ダイニングセットにカウチソファー、大きめの冷蔵庫にオーブンレンジ・・・ありとあらゆる、“心地の良い暮らし”が出来るものを揃えて来た約10年分の荷物たちが、山ほど家の中に詰まっていた。

 金沢まで、この荷物たちを運ぶことを考えた。だけど、3LDKの荷物を運び入れる部屋を借りるのも、荷物を送る郵送費も、何もかも割に合わない。だって、期限は2年だから。この先金沢で働いていける保証もないし、もしかしたら思いもよらない場所で仕事をしているかもしれない。割と、安定と落ち着くことに心奪われていた10年だったけれど、40歳も超え、ある種諦めもついた。これは、きっかけだ。これからどう生きていくかを考える。だったらどう転んでも良いように、まずは身軽になるのが良いのでは、と、遅めの断捨離ブームが私にやって来たのである。

 家具・家電は、知人・友人に引き取ってもらった。SNSに載せたりもしたけれど、結果的にみな知り合いが貰ってくれた。最後まで、大物ソファーの貰い手が決まらず泣きそうだったが、私の後に一軒家に入居が決まった友達ファミリーが引き受けてくれた。それでも細々した荷物の多くは実家へ運び、自分の車1台分の荷物と、宅配便で送った段ボール数箱の衣類で、私はいそいそと金沢へ引越したのである。

 金沢の家探しは、実は困難を極めた。何度も言うが2年なのだ。引っ越し代をケチって、断捨離した女なのだ私は。毛頭、金沢で家具を揃える気はなく、持ち物は増やさないと、全て家具付きの家にしようと決めていた。と同時に、地縁も何もない土地で、職場にしか知り合いがいない状況で暮らすことが、過去の経験からも辛いと分かっていた。だから探したんだ、シェアハウスで、誰かと顔を合わせる暮らしを。

 けれど、知っているであろうか、多くの金沢にあるシェアハウスには、年齢制限があるということを。調べ始めるまで、私も全然気づいていなかったのだが、だいたい39歳まで、と上限が決まっていたのだ。私、その時点で齢40を超えており、いくらホームページ上で素敵なシェアハウス!と思って問い合わせようとしても、よくよく読んで行くと年齢制限の壁にぶち当たるのだ。もちろん、年代を揃えて価値観の違いを少なくし、揉め事を起こしたくないというシェアハウス側の考え方もよく分かる。一体、多様性の時代は何処?

 色々探し、ようやく見つけた女性専用シェアハウス、念入りに確認したところ、サイト上には年齢制限について触れられておらず、思い切って問い合わせをしてみることに。ここに断られたら、本当に他の選択肢はなくなるのだ。もうその時は諦めて、普通の賃貸を探そうと密かに思っていた。そして、結果は、No。現状空きがないとのこと。どうしたものかと思っていると、オーナーさんの別物件のシェアハウス(その当時、あまり外に募集が出ていない所だった)の空きを確認してくれるとのこと。最後の望みをかけて、待った答えは、Yes!

 最後の最後で、ようやく見つかった我が家。古民家2つをリノベーションで繋げ、一軒家にした建物は、外から見ると、本当に一般の住宅地にある古民家なのだが、中に入るとおしゃれ古民家カフェのごとく、ほっこりと暖かい空間が広がっていた。水回りとリビングは共有で、個室が6室ある。最後の1室に何とか転がり込むことができた。学生から社会人まで幅広いメンバーが既に居住していて、多様な人たちが集うことができればと、あえて年齢制限を設けていなかった点に救われた。ベッド、デスク、冷蔵庫、洗濯機等、生活に必要なものは揃っており、念願の身軽な引越しが現実となった。

 そして何よりこのシェアハウス、抜群に立地が良いのだ。金沢21世紀美術館や兼六園、金沢城公園、香林坊や片町も、徒歩圏内、お散歩圏内なのである。歩いて3分で2軒のクラフトビール屋さんもある。金沢初心者には、まさに夢の様な立地。全てを借景して暮らしていけるのだ。元々問い合わせたシェアハウスはもう少し郊外だったので、どんでん返しで金沢の中心地に近いところで私の金沢ライフはスタートしたのであった。

 今はご近所開拓とともに、帰って来て誰かがいる暮らしを満喫している。シェアハウスの人たちは、仕事でも、家族でもない、何とも言い難い不思議な関係性だ。ただの同居人であるけれど、心地よく暮らしていくためのお互いへの思いやりや、小さなルールもあったりする。ゴミ・掃除当番はあるけれど、ご飯や生活のリズムはそれぞれ。たまーにご飯の時間が一緒になれば、一緒に食べたりはするけれど、強制ではないし、付かず離れずの良い距離感で過ごせている。関わり過ぎないけれど、誰かがいる安心感のほどよい距離感での暮らしが、今の私には心地がよい。そんなシェアハウス暮らし、皆さんもいかがですか?

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