愛を受け取る為に私は病になった
まえがき
これは、看護師をしていた時の忘れられない患者さんとのやりとりの一つです。
病名を宣告された直後はショックが大きいために
なぜ「私」が病気にならないといけないのか
「私」が悪いことをしたのか
病気=罪、悪
と 思ってしまう方もいらっしゃるのですが、家族との対話で別の意味にとらえるようになったがいました
この瞬間に立ち会えたことを忘れないように、、
エピソード
この患者さんは急遽入院・手術することになり運ばれた病院で、別の重篤な病気が見つかった方でした。
急遽手術になったことはもとより、重い病気が見つかった事ショックが強く術後のリハビリの経過が芳しくない方でした。
彼女の担当でなくてもお顔を見にいってご挨拶したり、体調が良さそうな時にはくだらない話をしたり…すこしの時間でも関わる時間をもてるように気をつけていました。
ある日また、いつものように病室に伺いました。
他愛のない話をた後、お部屋が少しあついように感じたので帰る直前に一言
「お部屋暑くないですか?それか上着脱ぎますか?」と声をかけました。
「じゃあお部屋の温度を下げていただけるかしら?この上着は脱ぎたくないから…」
なぜだろう、疑問に思っていると患者さんがこんなお話をしてくれました。
「この上着はね、息子にもらったの。遠くで仕事をしているけれど私が手術するっていったら飛んできてくれた。そしてこの上着と、メッセージカードをくれたの。
『仕事があって近くにはいられないけれど、心は近くにいる。この上着を着ている間は僕と一緒だからね。一緒に頑張ろう。』
よくできた息子よね。
なんで私がこんな病気になっちゃったんだろう、なにか私わるいことしたのかな。
どうして、どうしてってことばっかり考えちゃってた。
そうだ、私は私の為だけじゃなく応援してくれる息子のためにも早く元気にならないといけないんだった。」
そう言ってとびっきりの笑顔を見せてくれました。
それから彼女はリハビリを懸命に、懸命に行って、別の病院に転院することになりました。
転院当日に挨拶に行きました。
「あの時お話しした看護師です。リハビリ頑張ってらしたこと伺ってます。退院されるとのことで挨拶しに来ました。」
すると・・
「あの時の看護師さんにずっとありがとうと言いたかったんです。本当に助かりました。あれから息子ともたくさんはなしてね。また息子に助けられたことがあるんです。本当にリハビリが辛かった時、息子に電話をかけました。そしたら
『お母さん、大変やねえ。よう頑張ってるよ。僕もなぜお母さんが病気にならないといけなかったのか考えたんだよ。
今、お母さんは「愛をうけとるため」に病気になったんだと思う。
今までお母さんは僕たちを含め、周りの人にたっくさん愛をあげてきたでしょう?
だからね、今度は貰う番なの。病気になって、周りからたくさん愛をもらえってこと。だからたくさん頼ってね。一緒に頑張ろう』
って言ってくれたの。また、息子に助けれらました。
これから周りの方を頼ることが多くなるかもしれないけど感謝の気持ちを忘れずに生活して行きたいと思います。
気づかせてくれてありがとう。」
と声をかけてくれました。
私がその時感じたこと
退院する直前に、彼女が頑張る理由に気づけてよかった。
ご家族が対話をすることができてよかった。
間接的ではあるけれど、対話を生み出すきっかけを作れたことが嬉しかった。
そして率直にそれを私に共有してくれたことも本当に嬉しかった。
こんな瞬間に立ち会うことができた私は、看護師として・一人の人としてすごく幸せだと思います。
この件で色々感じたことはあるけれど人間の強さを一番濃く感じました。
懸命に生きようと向き合う患者さん、
でもやっぱりいつも強くいられるわけではない。
「病気になるなんて、何か悪いことをしたのかしら」そう考えていた方が、
病気になったのは愛を受け取るため
笑顔でお話ししていただけるようになるなんて。
ご家族の支えがどれだけ助けになっているか、愛の力を目の当たりにしたエピソードでした
おわり
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