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【連載第9回】オンラインフォローアップのリアル

山口たく(やまぐち・たく)1972年生まれ。都内大手名門進学塾やプロの家庭教師として、15年以上に渡り御三家中や最難関国公私立高校受験を指導。
その後、理想の教育を求めてニュージーランドに教育移住し、Ties. JNZ(Terra International Education Services. JNZ)を設立。これまでに国内外で教えた生徒は数千人にのぼる。オンライン講師歴はすでに10年超え。
現在は『望む場所で、望む仕事をしながら、世界に貢献できる喜びを実感できる未来を与えられる教育』をモットーに、日本人留学生や現地在住日本人子女に指導を行っている。また、10年近い海外子育て・教育の経験を活かし、『ニュージーランド教育&国際バカロレア受験コンサルタント』としてさまざまなメディアに出、教育相談はもちろんのこと、留学や国際バカロレア教育に関するコンサルティングを行っている。二児を子育て中。

さてここからは、オンライン学習をする時の塾のフォローアップサービスの内容の充実度を見極めるための基準。それを理解するために、各サービスがどう実施されうるか、についてお話ししていきます。  

まず、最初にお話ししたいこと、それはこのフォローアップサービスこそ、今後塾が徹底してオンライン化していってほしいことになります。何故ならそれでなくても忙しい親の時間を節約できるだけでなく、塾側の業務も大幅に合理化でき、その分生徒管理等、本来塾がすべき仕事にもっと集中できるからです。  

さて、話を元に戻し、早速各種フォローアップサービスについて、個別にみていくとしましょう。ざっとみて、以下の5つほどのサービスが考えられます。

1)個別質問室
2)公開質問室
3)学習・進路相談(含 説明会)
4)メンタルケア
5)面談  

では順に、各サービスの種類について具体的に説明していきますね。

1) 個別質問室  

まずは、個別質問室についてです。こちらは対面授業に見立てると、生徒が個別に先生のところまで質問に行くイメージですね。オンラインで実施する場合には、大きく分けてチャットとライブ形式、そして動画の3種類の方法があります。例を挙げながら、順に説明しましょう。  

   チャット形式

まずチャット形式の場合ですが、こちらはチャットアプリやホームページに設置するチャットボックス等を使って行います。チャットアプリはライングループやSNSが提供する既製のものを使用するケースもあると思いますが、今後は多くの塾が自分のホームページ内に専用のチャットボックスを設置していくと思います。  

生徒はまずそのホームページ内の生徒専用サイトにIDとパスワードを入力してログインし、チャット画面に質問を入力します。わからない問題の写真を撮って投稿することもできるでしょう。その質問に、待機している先生が回答します。回答はチャットボックスにそのまま入力することもあるでしょうし、紙に解き方を書いてそれを写真に取るという方法もあると思います。質問を先生が見たかどうかについては、既読マークで確認できるので安心です。  

   チャットによる質問サービスはAIになる

ちなみに私はこのチャットによる質問サービスの一部、特によくあるパターンの問題の解説には、将来的にAIが大きな力を発揮すると思います。これはすでに多くの企業がAIによる質問対応を実施していることからもお分かりいただけるはずです。これらが実現されれば、先生の待機時間にかかわらず、良くある質問なら24時間365日、いつでも気軽に質問できるようになるでしょう。  

    ライブ形式

次にライブ授業形式を見てみましょう。こちらはチャットよりもずっとイメージしやすいと思いますが、生徒が質問があるときに、スクリーン越しに先生に質問するサービスです。こちらはチャットのようにいつでも気軽にというわけにはいかないので、予約が原則になるように思います。  

ライブ形式による質問は、まず塾のホームページから予め予約を取り、指定の時間になったら生徒専用ページからログインするか、塾から送付されるURLにアクセスしてミーティングルームに入ります。ここではライブ授業同様、ZoomやGoogle Meet、Microsoft Teamなどのアプリケーションが利用されるでしょう。

生徒はログイン後、指定時間内で先生に質問をします。内容によっては事前に質問をメール等で送るかもしれませんし、テキストを使うならその場でページを指定して質問することもできます。先生は教室のホワイトボードかオンラインホワイトボードを使って解説をします。

     オンラインホワイドボードがおすすめ

私がおすすめなのは断然、オンラインホワイトボードです。これなら生徒もタブレットとスタイラスペンを使って書き込めますし、ホワイトボード上に生徒も先生も簡単に写真が貼れるのも便利です。またその対面の質問と違い、オンライン授業同様、解説に写真や動画を駆使できるのも魅力といえるでしょう。その上この質問は録画も可能なので、動画をもらえば繰り返し見直せる便利さまであります。  

最後は動画を使った形式について説明します。動画で質問というのはピンとこないかもしれませんので、具体的な例を挙げて説明しましょう。  

この形式の質問には、Flipgridなどのアプリが便利です。こちらはすでに日本の公立校でも授業に導入されています、まず生徒は自分のノートやテキストを使って、質問内容を説明する動画を撮ってアプリにアップします。先生はそれを見て、 オンラインホワイトボードなどで解説したものを録画し、アプリにアップします。これを生徒は見て確認するという流れです。質問から回答まで少し時間差がありますが、チャットに比べて動画で解説を受けられ(繰り返し見られますし)、ライブ形式と違っていつでも質問できる手軽さが魅力です。こちらもAIの進化次第では、良くある質問をAIが選別して、事前にある回答パターンとマッチングして瞬時に返信という時代も来るかもしれませんね。  

2) 公開質問室  
次は、公開質問室です。こちらは対面授業に立てるなら、授業前後に設置されている質問室に行って質問する感覚です。  

公開質問室は塾側が日時と参加人数を指定し、オンライン上のグループミーティングという形式で実施されることになるでしょう。使用されるシステムはライブ授業同様、ZoomやGoogle Meet、Microsoft Teamなどのアプリケーションになると思います。  

具体的には科目別・学年別、さらにはレベル別に設置された個別のミーティングルームを事前に予約し、指定日時になったら塾側から送られてきたURLをクリックして参加します。公開質問室に入れる人数は、制限時間や先生のキャパシティ、参加者のレベルや科目などで上下するので一概には言えませんが、おそらく十数名が限度でしょう。  

公開質問室の最大のメリットは、他の生徒の質問を聞くことで、集団効果が期待できます。質問している問題のレベルや、それに対する先生の対応などを見ながら、自分のレベルを確認できるとともに、その解説の中で新しい気づきを得ることもできるでしょう。  

さらにもう一歩進んで、先生がこの公開質問室を利用して生徒同士が教え合う「チームティーチング」を行うことも可能です。やり方は簡単。ある生徒の質問をホワイトボード上で共有し、解説ができる生徒を先生が指名して説明させます。やり方は画面上にスタイラスペンで書き込みながら説明するだけ。さながら教室で、先生が生徒を指名して黒板の前で説明するような感じですね。また時間が許せば、その解説について他の生徒の意見を聞き、より良い解説を聞いたり、内容を議論するなども可能でしょう。  

もちろんこの公開質問室でも、写真や動画は存分に活用できるので、生徒は興味深く学ぶことができるはずです。しかも録画をしておけば、後からまた動画を見直せるメリットまであります。この点から考えても、対面質問よりはるかにオンラインによる質問室の方が効果が高いと思います。  

3) 学習・進路相談(含 説明会)  

3つ目は学習・進路相談についてです。これは生徒や保護者向けに行われる説明会や合格実績発表会などが該当します。最近の中学受験はいうまでもなく情報戦ですので、塾が親子向けに提供する様々な最新情報はとても貴重です。  

塾によって内容・開催手段は様々だと思いますが、ここでは生徒向けの学習・進路相談と、保護者向けの合格実績発表会について取り上げたいと思います(保護者面談については後述します)。  

まず、生徒向けの学習・進路相談ですが、これは通常対面形式で、講師室や受けつけ、空き教室などを使って行われています。多くは各塾が作成した受験情報誌などを片手に、生徒の話をヒアリングし、先生がいろいろアドバイスすることが多いでしょう。この情報誌には「印刷当時の最新情報」が掲載されていますが、インターネットを使えばより最新の情報を見られます。また学校選びであれば、情報誌に載っている情報よりも、直接学校のホームページを見たほうが早いでしょう。またYoutubeなどには文化祭や体育祭の動画がアップされていることもありますので、それらも積極的に活用すれば、より生徒もイメージが持ちやすいはずです。

こうした状況を考えると、今後はパソコン画面を講師と生徒が一緒に見ながら学習・進路相談が実施されそうですが、もしそうなったらわざわざ塾まで足を運ぶ必要がありますか?私には、オンラインでも全く問題ないと思えます。  

さらに遠方の教室なら時間もお金もかかりますし、その間に何かあったらという心配もありますよね。ひょっとしたら駅まで送迎が必要かもしれません。それがオンラインで代替されたら、その時間や心配は全て不要になります。こう考えても、こうした相談については全て、オンライン化すべきだと強く思います。  

これは保護者向けの合格実績発表会や進学情報セミナーについても全く同様です。私も現役塾講師時代には、大きな会場で実施される発表会に行っていましたが、来て欲しい保護者の方に来てもらえなかったりして、もう少しどうにかならないだろうかを思っていました。こうした発表会が平日に実施されることも大きかったかもしれません。  

また膨大な量の資料を印刷して入り口で手渡ししたり、プロジェクターを使って映写しながら説明するスクリーンは見にくいこともあり、さらに会場を暗くすることでメモを取りにくいなどの弊害もありました。もちろん会場費もかかりますし、このイベントのために誘導も含めて多くのスタッフを動員する手間を考えると、実施側にも参加者側にも大きな負担がかかるシステムになっているのです。  

もしこれをオンラインのウェビナー形式で実施したらどうでしょう。実施者側は資料をPDFでまとめて参加者にメールで送り、説明時にはスクリーン上にスライドを出して説明するだけ。もちろん会場のように見にくいことはなく、鮮明な画像で確認できます。当たり前ですが、会場費は無料。大量の誘導スタッフの代わりに、数名のシステム管理スタッフを配置すれば事足ります。またウェビナーを録画すれば、当日参加できなかった方も気軽に見られますよね。私は特にこの録画された内容をぜひ家族全員で見て、今後の受験戦略をみんなで考えて欲しいと思っています。

4) メンタルケア  

4つ目はメンタルケアサービスです。こちらのサービスは対面授業に見立てるなら、カウンセリングやメンタリングといったところですね。  中学受験は大人が想像するよりもはるかに、過酷で厳しい戦いです。その戦いに向かうのは、わずか12歳以下の幼なさが残る子供たち。だからこそ中にはそのストレスでメンタルが弱ってしまう生徒もいます。でも気丈な子供たちはそんなそぶりを見せず、元気に振る舞うこともあります。中には親に心配をかけまいと、家庭では努めて振る舞っている子もいます。  

こんな子供たちの悲痛な心の叫びに気づくのは、塾講師の仕事です。講師の最終的な役割は合格をさせることですが、メンタル面が不安定だと学習にも悪影響が出やすく、成績も安定しないことが多いものです。私も講師時代は可能な限り時間をとり、子供たちとの対話を心がけていました。たわいもない世間話をきっかけに、子供が本音を泣きながら話だし、それをきっかけに成績が向上していった例は枚挙にいとまがありません。  

さて話が逸れてしまいましたが、こうしたメンタルケアも学習・進路相談同様、授業時間の前後に、講師室や受けつけ、空き教室などを使って行われることが多いでしょう。ただ私がメンタルケアで生徒を呼んで話すときに苦労したのが、他の人の目と耳でした。相談内容は時に家庭のことなど、他者に聞かれたくない内容もあり、他の生徒も出入りする場所では口を閉ざしてしまう生徒もいました。また空き教室を使うこともできますが、密室で二人きりで話すのも憚られることもありました。  

でもこれがオンラインであれば、そうした心配は全くありません。例え講師室で対応したとしても、ヘッドセットをつけて話していれば声は聞こえませんので、プライバシーは完全に守られます。また自分の部屋から相談できれば、精神的にもリラックスし、落ち着いて相談できるメリットもあります。  

    オンラインメンタルケアの素晴らしい利点

さらにこのオンラインによるメンタルケアには、もう一つ素晴らしい利点があります。それは塾以外の場所にいるメンタルケア専門家のサポートを気軽に受けられるという点です。当然ですが講師は受験のプロですが、メンタルの専門家ではありません。本来であればカウンセラーが最適の仕事です。しかし塾もカウンセラーを常駐させるとコストもかかるので、簡単に導入はできないでしょう。しかしこれがオンラインでなら、カウンセラーは自分のオフィスから必要な時だけアドバイスできるので、コストパフォーマンスも良くなります。また生徒側も自宅からいつでも気軽に専門家に相談でき、まさに両者にとって大変メリットが大きいと思います。

5) 面談  

最後は面談サービスについてです。こちらはいうまでもなく、保護者面談や生徒対象の個別面談などが該当します。  

もうここまでお読み頂いたあなたなら、この面談サービスもオンラインで十分代替可能であり、むしろオンラインの方がいいと思って下さるのではないでしょうか。  保護者面談の一番の目的は、子供の現状把握と今後の学習方針の確認です。現状把握については主に模試や小テストなどの結果に基づいて説明されると思いますが、これらはデータ化しておけばスクリーン上で簡単にシェアできますね。また、間違えた問題やその類題などの説明も、スクリーン上でならスムーズに実施できるでしょう。また、学校紹介などは学習・進路相談同様、オンライン実施なら授業風景や文化祭風景など、手軽に動画を活用でき、非常にわかりやすく理解できると思います。  

私がオンラインでの保護者面談を実施することに特に賛成な理由は、実施時間が柔軟に設定しやすいので、普段参加が難しいお父さんにも参加してもらいやすくなるからです。そうすればご夫婦間でも情報が共有でき、子供へのフォローもより効果的になるでしょう。またこちらも録画すれば後から繰り返し見られ、お互いの主張や情報の齟齬がなくなって、塾と家庭の連携もよりスムーズになるメリットもあります。  

さて、いかがでしたでしょうか。オンラインによるフォローアップサービスの内容と、こうしたサービスがオンラインで行われることのメリット、合理性が少しはご理解いただけたでしょうか。  

次項では、オンライン家庭教師とプライベートレッスンの選び方についてお伝えしたいと思います。


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