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【連載第4回】未来型学習法習得のアドバンテージ

山口たく(やまぐち・たく)1972年生まれ。都内大手名門進学塾やプロの家庭教師として、15年以上に渡り御三家中や最難関国公私立高校受験を指導。
その後、理想の教育を求めてニュージーランドに教育移住し、Ties. JNZ(Terra International Education Services. JNZ)を設立。これまでに国内外で教えた生徒は数千人にのぼる。
現在は『望む場所で、望む仕事をしながら、世界に貢献できる喜びを実感できる未来を与えられる教育』をモットーに、日本人留学生や現地在住日本人子女に指導を行っている。また、10年近い海外子育て・教育の経験を活かし、『ニュージーランド教育&国際バカロレア受験コンサルタント』としてさまざまなメディアに出、教育相談はもちろんのこと、留学や国際バカロレア教育に関するコンサルティングを行っている。2児の父。

未来型学習法習得のアドバンテージ  

ではここからは、中学受験をオンラインで行うことで、受験後の学習にどんなアドバンテージがあるのかについて説明します。

言うまでもないことですが、中学受験での合格は決してゴールではなく、その後続いていく長い学びの「スタート」に過ぎません。その意味でも、このオンライン学習のアドバンテージを理解しておくことは、とても意義があると思います。  


OECD(経済協力開発機構)の2018年の調査によると、日本の学校のICT機器使用頻度は、OECD加盟国中で最下位です。教師のICT機器を使いこなす技能も、調査参加国77カ国で最下位。

「生徒が学習に使えるICT機器があるか」

「インターネット接続があるか」

といった調査項目についても、軒並みOECD平均を下回っています。(OECD, “Pisa 2018 Results Where All Students Can Succeed”, Organization for Economic 2020)  

これは私自身も10年間の海外生活を通して、肌感覚で実感しています。私の子供たちが通う公立の学校では、小学校高学年から学校にパソコンやタブレットなどの端末を持ってくることを奨励されます。これをBYOD(Bring your own device)と言います。

学校の教室には電子黒板が設置されており、先生がその電子黒板に書き込んだ内容は生徒の端末のスクリーンにリアルタイムに反映されて行きます。また指名された生徒は自分の端末を使ってホワイトボードに答えを書いて発表することもできます。途中で授業に関連する動画を見たり、一緒にリサーチをオンライン上で行い、その情報をもとにディスカッションすることも。プレゼンテーションもオンラインを活用して行われ、フィードバックをオンラインで行うこともあります。私の子供は小学校5年生で、「地球は何人までの人口を支えられるか」というテーマでオンライン上でのプレゼンをしていました。 

 
ここで皆さんにお伝えしたいことは、こと教育のオンラインかという観点では、残念ながら日本は他国に比べ、大きく遅れを取っているということです。教育のオンライン化は、今世界で急速に進んでいて、その流れから日本だけが大きく取り残されてしまっているのです。それを如実に示したのが、コロナウイルス拡大化における学校教育の対応です。  

コロナウイルスの世界的拡大に伴い、多くの国では日本以上に厳しい都市封鎖(ロックダウン)政策を行いました。会社やお店の閉鎖はもちろん、学校も全面的に休校となりました。日本でも全国一斉に休校になりましたが、一部の先進的な私立校を除けば、多くの学校は子供に教育をする術を失いました。それは多くの中学受験塾も同様だったことは、誰もがご存知のことでしょう。  

しかし世界では、教育においては事情が異なる国が数多くありました。少なくとも日本のように、教育システムが機能しなくなることはなく、子供に最低限の教育を国や他の教育機関が提供できた国も多くありました。その理由はもちろん、教育のオンライン化がすでに進んでいたからです。ここでは教育のオンライン化が、今回のコロナウイルス化でどう子供たちに貢献したかを、ニュージーランドを例に挙げて簡単に説明しましょう。  

ニュージーランド国旗

私の子供が通う公立校では、ロックダウンが発表された「当日」に4週間に及ぶロックダウン期間のオンライン学習マニュアル(学習計画)が発表されました。この驚くほど迅速な対応が可能だった背景には、以前から学校教育の中にオンラインシステムが採用され、活用されていたからに他なりません。

彼らの学校は徹底したペーパレス化が行われていて、入学手続きから各種お知らせ、申し込みから支払いまで全てオンラインで完結します。授業もGoogle classroomというシステムで管理され、時間割はもちろん課題や先生からの指示、質問対応までオンライン上で行えます。

つまり対面で行われるのは授業と課外活動くらいだったので、課外活動はできなくなったものの、授業は対面からオンラインによる双方向ライブ配信に切り替えるだけで、何の問題もなく教育が継続できたのです。  

想像してみて下さい。もし日本の学校でもこのようなオンライン教育が以前から普及していたら、ウイルスの蔓延でこれほどの混乱は起こらなかったのではないでしょうか。それは中学受験の塾でも同じこと。子供たちは自宅にいながら、進度の心配をすることなく、またウイルス感染の不安に怯えずに、淡々と受験学習を継続できたかもしれません。 

 
私はニュージーランドでたくさんの外国人の方から、ウイルス拡大化の日本で教育がどうなっているのか聞かれました。日本は最先端の技術を持っているのだから、オンラインを使って子供たちが問題なく学習しているはずだ、具体的にどんな画期的な教育システムを使って学習を進めているのか、参考に聞かせて欲しいと複数の方に問われ、答えに窮してしましました。

そして実は日本では今全国の学校休校に伴い、教育システムが麻痺していて、数ヶ月にわたって子供たちは学習を思うように勧められていないのだと答えると、一笑に付され・・・ハイテクで知られる日本に限ってそんなはずはない、冗談はさておき、本当はどんな教育をしているのかと食い下がられました。

しかし実際に日本で起こったことは、日本の技術を尊敬している諸外国と比べるべくもない状況だったことは、日本の多くの方の知るところだと思います。  

バックスクール


私はこのウイルス問題を機に、日本でも教育のオンライン化を進めざるを得なくなるだろうと思っています。もちろんインフラの整備や経済格差などの問題もありますが、今後もウイルスの脅威が完全に去らない現実があり、世界各国は今まで以上に教育のオンライン化を進めるでしょうし、日本もそれに追従せざるを得なくなります。学校教育の中でコンピューターを使った学習はより一般的なものとなり、授業内容もオンラインを最大限に活用するように変化し、もう過去のアナログのみの教育には戻りません。  


そうした学校教育の変化を見据えるだけでも、中学受験時からオンライン教育に習熟しておくことは、中学校に進学した後で大きなアドバンテージになることは明白です。何故ならこうした新しいシステムに適応するには時間がかかるからです。アナログでしか学んだことのない生徒が、デジタルやオンラインへの適応に四苦八苦している間に、すでに習熟した生徒はそれを活用して、どんどん上のレベルに登っていくチャンスが生まれます。そこで生まれる差異は、想像するより大きいものでしょう。  

これは決して大袈裟なことではなく、本当にこと教育のオンライン化に関しては、日本は危機的なほど世界から遅れをとっています。世界で進む教育のオンライン化の流れの中で、日本人の意識改革が強く求められているのです。

そんな今だからこそ中学受験をオンラインで乗り切るという新しい時代の発想を、より多くの方に持っていただきたいと願います。  


この章は連載第1回~4回で終わり次の章にうつりますが、その締めくくりとして、オンライン学習で中学受験に合格することが可能かについてのアウトラインを、次の記事でご説明したいと思います。

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「中学受験 オンライン学習法-合格への秘訣-」 山口たく 著

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