囀る鳥は羽ばたかない　第５３話　２【百目鬼復活祭】

【2023年08月03日】

怒涛の５３話の感想が案の定超長文になったので
気になるところの【感想・深読み・妄想】をこちらに分けました。
全編あっちこっちで盛りだくさん。
感想言いたい、深読みしたい、そこから妄想を広げたい。

※毎度の注意事項：
　以下がっつりネタバレ含みます。
　登場人物の心情とかストーリー解釈とかは
　あくまで個人の感想・妄想です。

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○寝てる矢代を見つめる百目鬼
上半身裸だけど下はちゃんとスラックス履いてる。
４年前と今、なにもない部屋だけど寝具はちゃんと揃えてる。
８巻特典でも服を着たがるとか食事に気を使うとか。
百目鬼って生活の基礎がちゃんとしてるなあと思わせる描写がちょくちょくあるんですよね。しっかり育てられたんだろうし、きちんと育って大きくなったんだなあ。

ていうかシャワー浴びる前に履き直してベルトまで締めたのか。
ちゃんとしすぎでは。

○車内でのやり取り
危うい色気を醸し出し、髪を下ろした姿を誰にも見せたくない。
井波に限らず自分以外の男と接触しようとすれば腹が立つ。
百目鬼の嫉妬と独占欲を矢代はなにひとつわかってないようだけど
矢代だって似たようなことあったでしょ。
自分以外の誰とも仲良くなってほしくない（特に久我
自分だけ優しくしてもらえなくて落ち込む
純然たる嫉妬だったし、優しくされなくても百目鬼のこと嫌いにならないでしょ？


○矢代の気づかなさ
自己肯定感の低さ、恋愛偏差値の低さ。
他人が自分を必要としてくれるわけがない、という思い込み。だから欲しがらない、すぐ引く、あきらめる。
己の恋情を「歪み」とか「呪い」とか認識も超ネガティブ。

これ、義父から与えられた心の傷のひとつだと思う。
かわいいかわいいと言いながら幼い心と身体を蹂躙し続け、矢代が成長し「男の身体」になってきたら見向きもしなくなる。
いらなくなったからと捨てられた。
レイプは問答無用で重罪だけど、これもこれでひどい精神虐待だと思う。
きっとほかの人間も同じように自分のもののように扱っては、やがて捨てるんだろう。
だったら先に自分から捨てる。誰のものにもならない。
なりたいけど、きっとなれない。傷は深い。

自分を本当に愛する人も、大事にしたい人もいないと思っているとしたら。
じゃあ七原がずっとそばにいることはどう思ってるんだろう。
影山が「身内」と言ったことは？
人それぞれ形や意味が違っても、矢代を愛して必要としてずっとそばにいてくれる人、たくさんいるのに。


○４年前のあの時の
言語化した独占欲を矢代は『呪い』と言ったけど（私も以前言っちゃったけど）
本編の感想の方であれは破邪の呪文、と解釈したものの、『呪縛』でもあるかなと。マイナスな意味じゃなく、いい呪縛。
その言葉とセックスの相乗効果で百目鬼以外受け付けなくなったんですよね。
百目鬼以外に身体が反応しない。
なにより百目鬼以外に抱かれたくない。
あの直後に当時の飼い刑事にプレイの誘いを受け、一瞬黙った後返事を濁した。この時点で矢代はもう、百目鬼以外には反応しない体になっていたのでは。井波のレイプが原因ではなく。
レイプされるまで本当に自分の身体の異変に気付かなかったんだとしたらそれはなぜか。
投獄中に求められて初めて気づいた百目鬼同様、性欲を感じることもなかったのでは。
なくなったわけではなく、身体同様性欲も百目鬼以外には反応しなくなったのかも。
…すさまじいな独占欲の言霊の力。

今回も井波からの誘いに一瞬黙り、答えを躊躇した。
百目鬼に抱かれた矢代はもう、井波に触られることすら嫌なんじゃないの。


○その井波主催の動画鑑賞会
動画＝矢代とのハメ撮りを百目鬼に見せる。
撮るだけでも相当ゲスいのに他人に、しかも矢代を慕っていたとわかってる百目鬼に見せるとは。虫唾が走るヒールとは思っていたけど想像以上だなこいつ。
井波はその動画を、矢代への保険、脅しの材料として撮ったと言っていたけど
それが本当だとしたら、どう使う気でいたんだろう？
そんなものが流出したらヤバいのは井波の方では。
「しょっぴくぞ」に対する矢代の「無理無理、ネタなら俺に分がある」の会話が動画のことなら、まさに矢代の言う通りで。
なんならその動画をコピーして矢代も持っているのかも。
そういうところぬかりなさそうだし。
だとしたらいよいよ井波がヤバい。職も失い、命も失いかねない（忍び寄る三角さんの影）いやそれでいいけど。むしろそれで。

ハメ撮り確定で深読みを進めてますけど、
それを百目鬼に見せると言った意味。

井波が本気で恐喝の材料にするつもりだったとしたら、それはハメ撮りそのものではなく「勃たない、感じない矢代」の方の可能性も。
便利に使いまくってきた矢代の身体が使い物にならない。
人に知られれば面子がつぶれると思ったかもしれない。
（ヤクザは面子が大事って前誰かが）
だとしてもそれも矢代は意に介さない。
ヤクザじゃないし、どうでもいいからね。
そして井波は、百目鬼も矢代のその状態を知っていると思っている。
かっさらわれた後、治ったかどうか試しに来た矢代に「あいつはどうだった？」と聞いているし。ああなんかもう何もかもゲスい。

…いや、待って、で？っていう。
で、そんな動画を百目鬼に見せる意味は？
そもそも以前ぼこぼこにされた相手とふたりきりになれる？
井波は加虐性が強いけど、百目鬼の暴力性も熟知してるはず。
ということは…
罠の可能性もある？ひとりじゃなく、数人で待機しているとしたら？
ボコられた恨みもあるし、矢代の血まみれのシャツで冤罪をぶち上げた過去の汚い実績もある。そんなお得意の冤罪で、百目鬼を「逮捕」するかもしれない。
何するかわからないぞこれ。百目鬼ホント気を付けて。


○百目鬼の「井波に会う旨味」とは
矢代が城戸に言った「犯せよ」をそのまま使ったように
井波が言った「お前に会っても旨味がない」にひねりなく返しただけかな。
井波に直接対峙してもう矢代に会わせないようにし、なんなら駆除することが目的で、ずっとその機会をうかがってたとしたらやっぱり！？ですよね！？て感じだけど。

ただこの人ホント、自他ともに認める高性能重戦車で、４年前もその性能を目の当たりにしてたけど、今現在の綱川の高評価を見ても、単独で敵に突っ込んでっては叩き潰すということを何度もしてきたんでしょうね。
今回も敵地にひとりで乗り込むと言って七原に止められても大丈夫の一点張りだったし。（いいタイミングで来てくれて助かったよ甲斐ありがとう）
絶対にうまくやれる自信があるんだろうけど、あいつ文字通りの悪徳警察官だから…
どうか無事に戻ってきてとしか。
ていうか敵地のすぐそばに矢代（と七原）を置いて行っちゃったけどそれはいいの？
矢代のすぐそばになんかあやしい人いるよ！？


○しかし動画か…
百目鬼がそれを見たら、何度もしつこく繰り返してきた「矢代の現状を知らないとどうにもならない」ふたりの関係が大きく変化する。

でも私はそれ、井波から「聞いて知る」と予想してたんですよね。
電話とか（今回の携帯を奪うシチュエーションはまさにそれ）その辺でばったり会ったときにペラるとか。
動画…動画はエグいな…でも一目瞭然ではあるしなあ。
一目瞭然の動画を見ながら井波本人の解説付きでしょ。
４年前見せられてきたプレイとは全然違う、ただのレイプ動画。
「刺青を見た矢代」パターンになるかもしれない。瞬間着火で最大火力。
繰り返すけど高性能の重戦車ですよ。矢代の不慣れなポカポカパンチとは威力が違うからね。
井波ひとりだろうがプラス複数の警察官だろうが我を忘れてぼっこぼこにしてしまいそう。それこそ父親の時以上に。
百目鬼の手が綺麗なままとは思っていないけど、井波の血で汚してほしくはないんですよ。
それに相手は腐っても警察官（言いたい放題）、そんなことしたらいろいろ面倒なことになる。
命まで奪うようなことはしてほしくないけど、生かしておいても…うーむ。


○そしてその後の百目鬼、
いろいろうまくいって無事だったとしても
矢代の現状を知った百目鬼を思うとつらい。
知っては欲しい。絶対に知らなきゃとは思うけど、知らずに投げつけた暴言、荒い性行為。
反省が変な方向に向かないといいけど。
矢代が百目鬼には身体が反応した意味を考え、正解にたどり着きますように。
そして矢代も、すべてを知った百目鬼の本心を疑わず受け入れますように。
『呪い』をかけたのが百目鬼なら、解けるのも百目鬼だけ。
呪縛を抱擁に昇華できますように。


○思い出した。
矢代は百目鬼に呪いをかけられたと思っているけど
だったら矢代も百目鬼に呪いをかけたからね。
（６巻、車中の大暴言）
百目鬼の甘い呪文に対して、矢代がかけた呪いは心底ひどい。
優しいセックスを全否定、とことん傷つけた。
百目鬼のは呪いじゃない、でも矢代のはマジ呪いだ。
もしかしてその呪いのせいで百目鬼は矢代には荒いセックスがいいと思い込み、今実行してるんじゃないの？
百目鬼の呪縛も、矢代にしか解けない。


○でも
「そんな前髪下ろして通常の３倍増しの綺麗でセクシーでかわいい姿を俺以外に見せるな」（意訳）とはっきり言うとか、しかもタメ口とか、井波以外とヤっても怒んのなと言われてそら怒るだろ（意訳）ときっぱり言うとか、
百目鬼の抱きつぶしビフォーアフターの変化がとても大きくて、わたくしホッとしています。
これまでの百目鬼だったらきつくて決めつけがちな喧嘩腰の物言いで返し、また売り言葉買い言葉になったかもしれない。
（そんな姿で男を誘うつもりですかとか、怒ってほしいんですかとかさあ）
井波の元に行こうとした矢代を阻止する姿もカッコいい！！
隠さない嫉妬と独占欲万歳！！！！

○席に戻って
百目鬼の悪態をつきまくり、フォローに回る七原に「さっき抱かれました」と言わんばかりのネタもボロボロこぼし、プンスカしてる矢代ですが
矢代が饒舌な時って何かしら胸の内を隠したい時では。
井波が待つホテルで、部屋の中に入ってプレイを見たくないと百目鬼に言われた時、矢代自身も戸惑うくらい饒舌だった。
百目鬼の部屋で、したくないと言われた時も暴言で追い詰めた。
矢代の呪いー車内で百目鬼のセックスを全否定し、優しいセックスをさせない呪いをかけた。

情報をもらうためのプレイと言いながら、本当は止めてほしかった。
部下とはしないと言いながら、抱いてほしかった。
ついて来られたら百目鬼の命も危ない、自分の傍から離したい。
自分を偽り、暴言で覆い隠す。

では今回は？

邪魔しやがって
の「邪魔」とは。
ふつうに考えて「情報と引き換えに身体を使わせに行こうとしたら百目鬼が邪魔しやがって」なんだけど、
「百目鬼に抱かれたらもう他の誰にも身体を触られることすら嫌になったから井波とはもう終わりにしたいと思ってその交渉もしようとしていたのにあいつがその邪魔をしやがって」（ノーブレス）説を推したい。

ただ、そのまま百目鬼を井波の元に行かせたことはちょっと違和感があって。
いつもの矢代ならもっと強く止めたんではないかと。
なのにさらっと百目鬼を見送った。
私ですら思い至った「百目鬼が危険かも」、矢代も当然考えたはず。
井波は4年前、百目鬼に暴言を吐いた。矢代とのプレイの後、また懲りもせず暴言吐いてぶちのめされた。
その井波が百目鬼と会う。嫌な予感しかしない。
とりあえず行かせたけど、念のため、百目鬼をもしもの事態から守るため、七原の元に戻るまでに何か手を打っていたのかもしれない。
たとえば甘栗、あるいは鮫鯨さんたち。
百目鬼を助けて、ついでに井波を――
深読みというかもう希望ですけど。

で、席に戻って渦巻く不安をべらべらしゃべって紛らわせていたのかも。
いやホント何度も繰り返すけど、百目鬼無事に戻ってきてね。


○ところで
杉本ってどこでなにしてるの？
実は私、杉本は優秀な部下だとは思うけど信用しきっていない節もありまして。
４７話で「カネに勝る力はない」と笑顔で語っていた彼、
つまり金さえ積まれれば矢代たちを裏切ることもしそうで。
もし、今回の情報も大金を積まれた杉本が流したフェイクだとしたら？
山川が匿われてるのって、「金の成る木」だからでしたよね。
金つながりで杉本が以前から山川を知っていて交流があり、そちら側に引き込まれたという可能性もなくはない？
杉本が金を妄信していると描かれてから、なんとなく嫌な予感がするんですよね。杞憂ならいいけど。


○嫌な予感と言えば
カフェのあやしすぎる店員、左耳にピアスしてたけど
その後登場した綱川が、似たようなピアスを右耳にしてるんですよね。
私はこの店員は敵側の人間と思っていますが、綱川配下の可能性もある？綱川直属の部下？ピアスを左右で分ける仲の！？
（暴走する下衆の勘繰り


○本誌の表紙
美麗で素敵で私は今までの本誌表紙イラストで一番好き。
ふたりの「俺の」が聞こえてきそうな独占欲丸出しの表情が実にいいんだ。
このイラストがのちにグッズ展開されたらほいほい財布開くよ。


○本編の扉絵
見る人それぞれに様々なイマジネーションを掻き立てている扉絵。
私は扉絵に意味を考えたこと、実はないんですけど

暗い草むら（湿地帯かも）（砂漠ではない）で自分のネクタイで後ろ手に拘束されて跪く矢代。
百目鬼は矢代の前に立ち、頬に革手袋のままの手を添える。
自分のネクタイで縛られているのは「自分で自分を縛り付けている」という矢代自身の呪縛。自分では解けないし、解く術も知らない。
百目鬼に解いてほしいと思いながら、解いてはもらえない、という諦念がわずかに伏せる目に表れている。
百目鬼はその縛りを解きたいが、自分に解かれることを矢代が望んでいるかどうかわからない。拒絶されるかもしれない、でも。
握り締めた右手は迷いで身動きできない百目鬼そのもの。矢代の目を見て真意を探る。

で、あおり文「本当に望んでいたものは…」

深読みが過ぎますか。自覚はあります。

この扉絵に悪い意味、哀しい未来は感じられないけどそれも人それぞれだなあと思いました。
（ＳＮＳでいろんな意見を読みながら

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深くて底なし（どっちよ）の囀る、人によって見方感じ方も様々。
私の長々な戯言にお付き合い、ありがとうございます。
今後も言いたいことは
同じこと何度も繰り返し言いたいと思います。