赤ちゃん同盟

赤ちゃんはペロリストである。彼、彼女たちはまずはペロし、我々はペロされる。赤ちゃんの、赤ちゃんによる、赤ちゃんのための一方的なペロ行為だった。

「ペロリストが来たぞ!」
オムツで高速ハイハイをする赤ちゃん同盟軍に包囲された。その行動の早さ、読めなささ、大胆さに大人は舌を巻き、口をつぐむ。ありとあらゆる生活用品はペロされ、大事なものから口に入れられる。大人にできることは一刻も早く洗剤類、刃物類、アルコール類、電気器具類、火器類、紙類などを手の届かないところに隠すことだけである(意外とある)。
「大人たちに告ぐ!」
赤ちゃんが言った(ような気がする。)ニコニコえんえんしながら次のようなことを要求した(気がする)。
「赤ちゃんは自由で守られる存在!よって以下のことを絶対とする!勝手におもちゃをしまわないこと!嫌いな食べ物は出さないこと!自由への冒涜は許さない!」
キャッキャと他の赤ちゃんたちも手を叩いて賛同している。
「次!赤ちゃんを置いて洗い物をしに行かない!寂しいでしょ!家事はあと!抱っこは最優先事項!赤ちゃんのそばを離れないで一緒に遊ぶ!大人の都合は二の次!」
わがまま放題な宣言をしながら、赤ちゃんはあくびをした。
「それから、それから…まだまだある…お風呂もトイレも一緒にすること…泣きたい時はそばから離れないこと…」
各々の親がヨシヨシしながら赤ちゃんを回収していく。抱っこされて、みんなうっとり気持ちよさそうだ。
「それからね、いつものお歌を歌うこと。ヨシヨシして…それから…絵本はたくさん…じゃなきゃ、泣いてやるんだから…」
ヨシヨシされながら、赤ちゃん同盟軍は解体された。そうだね、そうだね、と頷いてもらいながら、赤ちゃんたちは夢の中に落ちていった。大人たちは赤ちゃんの寝顔に癒されながら、昼間のわがままなペロ行為を全て水に流して許してしまうのだった。

おやすみ。また明日、かわいいわがまま聞かせてね。


と言う妄想をしながら子育てをしていますという話。

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