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『志村流』志村けん/三笠書房(王様文庫)

新型コロナウイルスによって命を落とされた志村けんさんの著書です。
20代後半の私はドリフ世代ではないのですが、子供の頃からケーブルテレビで「ドリフ大爆笑」の再放送をよく見ていたので、志村さんのことが大好きでした。多くの方々と同じく、今回の訃報に接し、大変胸が痛みました。

訃報後、テレビでは各局が志村さんの追悼番組を放送し、ドリフの付き人だった志村さんが、日本中に名を馳せるようになり、長きにわたって芸能界で愛されてきた様子が紹介されていました。靴も買えないほどの貧乏を味わった志村さんの過去には驚きましたが、何より、誰と接するにも腰が低く、礼節を欠かさない姿が印象的でした。

本書に書かれている志村さんの言葉も、飾ることない人間味豊かなものばかりです。亡くなっても、その人が生前に何を考え、どう生きたか、その生きざまに触れることができるのも、本の魅力ですよね。志村さんほどの著名な人の死に接し、改めて本の価値を発見できました。

『志村流』。シンプルですが、良いタイトルです。このタイトルだけで、「あの志村けんの生き方ってどんなものなんだろう」と、興味を引かせるほどの偉大なコメディアンが志村けんさんです。

「仕事」と「酒」と「女」のイメージが強い志村けんさんですが、この本に書かれていることは、極めて常識的なことばかりです。本書には『当たり前のことが出来れば、仕事も人生も絶対に成功する』という副題がついていますが、読めば読むほど、志村さんが「凡を究めた非凡な人」であることがよくわかります。老若男女に愛されるスターが考えていたことは、聞けばだれもが「そうだよな」と思うことばかり。でも、なかなか実践できない人間の弱さも、志村さんは分かった上で淡々と凡事を徹底していたようです。

最近は、人と違うことをして名を馳せたり、非常識を美学とする風潮もありますが、志村さんは誰よりも常識をわきまえていたからこそ、非常識に思わえるようなコントで笑いを生み出すことができるのでしょう。

とかく人は、人の努力のプロセスを見ず、結果だけをまねようとして失敗するものですが、成功している人ほど、涼しい顔をしていて水面下で必死に足を動かしているんですね。

現状に不安や不満は尽きないのが人間の常ですが、いついかなる時も自分を見失わないで目の前のことに丁寧に取り組む。そんな大切さを教えてくれる人が志村さんだと思います。

最近はこの手の本は読んでいませんでしたが、久しぶりにいい本に出会えました。新型コロナで日常が変化し、先のことばかり考えて心が落ち着かない人に読んでもらいたい一冊です。

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