〈41.ニューヨークは終わらない〉

 ウラジミールさんは言った。


「これからは貿易でピンハネすることができなくなり世界中でフェアトレードが行われるようになる。今まで貧しかった国が豊かになり、食料生産していた国は自分の国で食料を消費するようになる。金融と貿易で成り立っていたニューヨークは崩壊するだろう。」


 ピンハネとは人を不当に安い賃金で働かせて利益を取ることだった。そして、フェアトレードとはそんなやり方をやめて公平な利益を与えましょうという考え方だった。


「ニューヨークが崩壊?」


 僕は驚いた。アンサーくんは付け加えた。


「アメリカでは保守派とリベラル派の対立が激化している。というより保守派が迫害されている」


 ダイアナさんはこう言った。


「黒人が迫害されてた時には問題だと思わなかったの?」


 ウラジミールさんはまた説明した。


「アメリカでは『国をしっかり守るべき』という価値観が否定されるようになってきたから、これからアメリカもニューヨークも廃れていく。犯罪を取り締まる警官がいなくなり、品物を運んでくれる物流業者もいなくなり、火事を消してくれる消防士もいなくなる」


 アンジュちゃんは悲しんだ。


「ニューヨークが終わっちゃうの? 大好きだったのに」




「いや、ニューヨークは終わらない」


 そこへ現れたのはエマニュエルおじいさんだった。みんなは驚いた。


「エマニュエルおじいさん! 亡くなったはずでは?」


 アーサーくんが驚いて聞いた。


「体はなくなっても魂はなくならないんじゃよ。私は魂だけ戻ってきたんじゃ」


「私は夢でも見ているのか? でも、目の前にいるのは確かにエマニュエルさんだ」


「ニューヨークは終わらないってどういうことですか?」


 僕は聞いた。エマニュエルおじいさんは答えた。


「ニューヨークは終わらない。ニューヨークは本当の意味で平和な街に生まれ変わるため一時的に大変な時期を過ごすことになる。その時期をすぎると平和で豊かな街になる。


 全ての闇が暴かれ、秘密は明かされ、嘘がつけなくなり、ごまかしが効かなくなる。


 誰も犯罪する必要もないくらい平和で豊かになり、差別もなくなり、どんな人種も仲良くなり、麻薬中毒や犯罪被害で亡くなった人は心を成長させて生まれ変わる。地球で平和に生きたいと願う者はみんな地球で生き続けることができる」




つづく

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