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アイデアを紡ぐアイデアプロセッシング:本に意見を求める読書

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アイデア・プロセッシング:
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Step1: 課題抽出・課題設定
Step2: 情報散策
・情報散策
・本の散策
⇒本に意見を求める読書
Step3: グループ編集:情報の素材化、分類と階層化
Step4: シナリオ・物語編集
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 未来を読み解くとき、基礎知識として多くの本を読むことは避けられない。大量の書籍の中から良書を探し、効率よく読み進めるためには読書のテクニックが必要となる。

Step2: 情報散策

●本に意見を求める読書

○効率よく本を読むということ

 読書は「始めから終わりまでじっくりと読む」、「何度も読み返す」ことが必要だという考え方がある。本と向き合い、著者の伝えたい内容を理解するために、自身の中で熟成するために必要なプロセスだ。

 一方で、世の中に大量の本が存在し、良書も悪書も混在している状況で、まずは数をこなすことから始めみるのは悪くない。そして、時間がなくてなかなか本を読むことができない方に、本によって読み方を変える読書をお勧めしたい。最初から最後まで熟読しなお何度も読み返す本もあれば、必要な部分を参考意見として流し読みする本がある。途中でダメだと思えば「つん読」や「捨読」に回してしまっていい。自分なりの強弱をつけて、取捨選択する読書だ。

 読む姿勢を変えてみることも必要だ。「自身の問いと仮説をもって主体的に本に意見を求め、考えを掘り下げることを目的とする」読書では、主体的に「問い」や「仮説」をたて、意見、解説、反論を求めて著者と議論を繰り返し、「気になる」情報を積極的に収集して、自身の思考を拡張する

 本の読み方を、「読前」「読中」「読後」「再読」という4つのフェーズに分けて解説する。「読前」で本の内容の仮説をたて、「読中」で議論を繰り返し、「読後」にふりかえり切り貼りしてノートに落とし込み、ときをおいて「再読」する。

○「読前」フェーズ (拾い読み、下読み、読書エネルギーの最小化)

 「読前」は、本の概要をつかみ「読後に得られるもの」の仮説を描いて、「読中」の読み方に強弱をつけてテンポ良く読み進めるためのフェーズだ。面倒なようだが、全体的な読書のスピードと理解が圧倒的に変わってくる。さらに、amazonの書評を拾い読んでおくのも、複数の感想・要約によってポイントがつかめるのでお勧めしたい。

1)時間: 30分以内

2)目的: 著者との間に関係を築く、「読中」に向けた感覚をつかむ

3)視点
・自分
 - 自分が期待する内容、何をつかみたいと思っているかを探索
 - 面白そうだと思った目次やキーワードを確認
・著者
 - 著者が執筆した狙いや動機を推測
 - 何について書いたものであるか、構成、部分とのつながり(ネットワーク)を把握

4)組織的な拾い読み
・タイトル、目次
 - 大見出し、中、小の順に確認する
 - 本の構造と概要、関係を把握する

・索引
 - キーワード、専門用語を確認する

・まえがき、あとがき、各章の最初や最後
 - 気になった部分を拾い読む

5)気になった部分をノートに記入

・キーワード: 内容を代表する言葉
・補足: 「キーワード」の言い換え・補足、概要説明
・連想: 自分の解釈から生じる新たな言葉・概念・連想(末尾に「(自)」などの記号をつけておく)

6)仮説を描く: 「読後に得られるもの」の仮説を書き出しておく


○「読中」フェーズ

  「読前」に全体の構成を理解しているのでサクサクと読み通せる。

1)時間: 30分~1時間(徐々に30分に近づくように)、熟読する場合でも数時間で終わらせる。

2)ざっと一読
・好みと直感でテキストを選び、ざっと一読
・気になったテキストにマーカー、キーワードに○、重要な段落の上に横線を記入
・メモを記入
 重要なポイントの要約、疑問、思いついたこと、意見、用語説明など
・「読み返し方」を決める

- つん読: 「読前」で中断
- 速読: 流し読み、必要なポイントを切り貼る(30~1時間)
- 抜読: 重要な個所を熟読
- 熟読: 全体を熟読

3)読み返し
・ラインやメモ、目次を羅針盤にして読み返す
・重要なテキストや図をノートに切り貼る(必要なら数ページにわたるボリュームでもいい)
・構造(見出し、概説)をつかみノートに記述する
・キーワードの理解を深め説明、補足、意見をノートに記述する
・自身で追加してノートに記述する
 - 疑問、分かったこと、意見
 - 類推する、連想する、仮説をたてる
・6W1H+Rをノートに記述する

Where,When:どのような環境や背景か、発生条件はなにか、いつ、どこで
Who:誰が、何が
Whom:誰に、何に
What:何を(する)
Why:なぜ
How:どのように
Result:どうなるのか、どうなったか

4)あえて寄り道をする
 本を読んでいると、何かを思いついたり、他の本が気になったりすることがある。そういうときは我慢せずに、寄り道を積極的にすると発想が広がる。

○ 「読後」フェーズ

 「読中」を振り返り、気がついたことをノートにメモする。

1)時間: 適宜

2)読前・読後比較
 「読前」の仮説を振り返り、自分の問題意識を読前、読後で比較する。

3)自分のテーマへの置き換え
・アナロジーによる連想、似たものを探す
・自分のテーマを振り返り、得られたことをノートに記述する
・他の本との関係を俯瞰し、必要に応じてリンク、コピーを付け加える
・新たに生まれたアイデアの断片の周辺に範囲を広げ、もしくは深くもぐるため、情報探索範囲を横に、縦に、斜めに広げ収集する

4)書籍情報の記録
 読んだ本は、引用書式で記録しておく。
  ex. 著者名(出版年), "タイトル", 翻訳者, 出版社

5)新たな「本の散策」へ
・ 関連する本を探す
・ 新たな疑問、新たな仮説をたてて、新たな「本の散策」へ

○「再読」フェーズ

 読んでいるときの状況や得られた知識によって、まったく違った感想、示唆が得られることが多い。都度、再読し、ノートを再整理するといい。

・1ヵ月、半年、1年後に読み返す
・何回も読み返す
 自分のテーマに重要な影響を与える本は何回も読み直すことが多い。特に含蓄の深い本は、再読のたびに見え方が変わってくる。本書でいえば、「銃・鉄・病原菌」「グーテンベルクの銀河系」「進化の意外な順序」「知の編集工学」などがそれだ。

 本の読み方を工夫することにより、本の散策を効率化するだけでなく、理解を深め、そしてなにより本に興味がわいてくる。本書を執筆するにあたり、「本を読む本[1]」、「探究型読書[2]」を再確認すること、特に「読前」フェーズを見直すことが非常に役にたった。面倒でも、できるところから少しづつトライしてみることをお勧めしたい。

参考書籍:
[1] M.J.アドラー, C.V.ドーレン(1997), "本を読む本", 外山滋比古, 槇未知子訳, 講談社
[2] 編集工学研究(2020), "探究型読書", インプレス
[3] 松岡正剛(2001), "知の編集工学", 朝日文庫





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