1992年から描く未来:社会変化に適応するバーチャル・オフィス/コ・ワーキング
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社会変化に適応するバーチャル・オフィス/コ・ワーキング
●背景:
携帯電話の人口普及率が1.4%[1]、日本で初めてインターネット・サービス・プロバイダがサービスを開始した1992年。インターネットの利用は大学や研究機関がほとんどで、静止画を扱うにも四苦八苦していた時代。
●お題:
⇒到達フェーズ:社内資料
オフィス研究を行っていたチームメンバーの各研究を統合して未来に向けた指針を示す。
●言葉で表現する:
○アイデアを言葉で表現する
※バーチャル・オフィス: 社会環境の変化に対応して、動的に編成して、自由に組み替えできるオフィスのイメージ呼称
〇バーチャル・オフィスの変遷
ここでは、Step3:自律分散型オフィスについて紹介する。
○「ミクロ・マクロ・ネットワーク」モデルでコンセプトを表現する
●サービス・イメージリスト
導き出したサービス・コンセプト例を列挙する。
バーチャル・オフィスのイメージ
1)物理的な制約(空間、時間)をとりはらう
時空間を意識せずにアクセスできる通信手段を提供する。
1-1)空間接続
メインオフィス、サテライトオフィス、ホームオフィス、移動オフィスの空間的制約をとりのぞく。
・高臨場感接続: 大画面スクリーンでサテライト・オフィスをメイン・オフィスに接続、小スクリーンでホームオフィスや移動オフィスを常時接続、瞬間接続可能で「声掛け」することもできる。
・多地点ビデオ会議、テンポラリTV会議
1-2)時差接続
世界各地での時差を積極的に活用し、24時間のシフト分業を可能とする。
・蓄積型コミュニケーション: チャット対話の併用、早送り巻き戻し可能なビデオ会議・通話
・エージェント・代理コミュニケーション: 会議代行出席、代理発表、不在時スケジュール調整/業務指示、ノウハウ提供
1-3)空間・時差接続共通
・社員状態表示: 在籍、打ち合わせ中、ビジー、接客中など
・フレックスタイム・シフトタイム管理
2)グループを組み替え支援
個人/グループの自律性を保ちながら、組織編成やバーチャル・チームを自由に組み替えできる。
・動的組織・グループ編成支援: 電話帳、権限管理、一時参加、グループ編成・個人テンプレート
・デスク・フリー: 個人机の廃止、共用端末を個人IDカードでマイ・デスクトップで立ち上げ
・協調型共有ファイル: 世界をまたがる時空間ロケーション・バーチャル・チームの多重所属、権限管理
3)情報のフィード・バックループ
社内情報のフィードバック・ループを形成して外部環境変化への動的適応能力と社員の自律的行動を促進
ミクロ・マクロ情報共有:
・ビジョン共有: トップや組織のビジョンを随時確認
・社員用戦略情報共有: 企業や組織・チームのリアルタイムな運営情報を社員が確認
・作業状況共有: 個人・チームのリアルタイムな作業状況を経営トップ・管理者・社員で共有
・ノウハウ共有: 組織横断的なノウハウの共有ボード
4)動的適応性の強化
個人/グループの自律性を保ちながら、動的でかつ柔軟性のある組織を構成する。
・動的情報システム: 外部環境や組織の状況変化に合わせて、臨機応変に情報構成を変更できる情報システム
・多次元情報エディティング&ファイリング: データ/処理/リンクを単位とした分散情報のリンク関係を編集して、自由に情報を組み替えるリンクベースのデータ管理
5)創発性の強化
・人材プール: 特殊な才能のある人材がをピックアップした仮想チームを編成、必要に応じてテンポラリに実チームにアサイン、または支援
・企業内企業、社内ベンチャー: バーチャル・チーム管理にて実現
●現代
バブル崩壊以降デフレ経済が続き、ワークライフバランスなど、個人生活を大切し、健康に生きることが活力のあるオフィスとして見直されている。会社単位の異業種連携共同体も一部で実施され、ノマドワーカなど企業に所属しない選択も増えてきつつあり、社長や上司がマイクロマネジメントしない自律分散型組織が注目されている[5]。
コロナ禍の時代、ホームオフィスやコワーキングスペースの設置など想定していたコンセプトは個別に具体化され導入されてきているが、組織を超える情報を積極的に連携するフィードバックループ、例えば「工場の現場の場面情報が重役会の場面と結び付き、マーケティングの場面情報が研究開発の場面と連結される」など、有機的連携組織の意義を理解し具体化するにも時間がかかっている。
参考情報:
[1] 移動体通信(携帯電話・PHS)の年度別人口普及率と契約数の推移
https://www.soumu.go.jp/soutsu/tokai/tool/tokeisiryo/idoutai_nenbetu.html
参考書籍:
[2] 今井賢一, 金子郁容(1988), "ネットワーク組織論", 岩波書店
[3] 北矢行男(1985), "ホロニック・カンパニー", TBSブリタニカ
[4] 今井賢一, 金子郁容(1986), "ネットワーキングへの招待", 中央新書
[5] フレデリック・ラルー(2018), "ティール組織 :マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現", 鈴木立哉訳, 嘉村賢州解説
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