アメリカ大統領選挙と株価

2020年5月8日

過去の大統領選挙の年とその年の株価の動向を調べてみました。結果から言えば、「株価が低迷した選挙年は政権交代が起こる」でした。1932年、1960年、1968年、1992年、2000年、2008年、2016年はまさにそうした年でした。例外は1948年ですが、年初こそ株価は下落していましたが、5月以降急上昇して政権交代は起きませんでした。
1期のみで大統領に再選できなかったのは、1889年から1992年までのブッシュ父大統領だけです。ちなみにこの年(1992年)も選挙直前まで年初来ほとんど株価は動かず(10月末で0%)、4月には年初来安値で-5.9%、10月には-4.9%を試す展開でした。

大統領選挙年の株価の動向と選挙の行方
1932年

株価(S&P500種)-15.2% 10月までの年初来推移
    1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月
SP500     7.94   8.29    7.31   5.83    4.47    4.43    6.03    8.39   8.08    6.96
年初来   12.0% 8.0%   7.0%   5.0% -4.0%  -2.0% -13.0% -8.0% -9.0% -12.0%
結果
世界恐慌の余波がまだ継続しており、5月以降株価の上昇は失速、選挙時期に向けて大幅下落。フーバー大統領(共和党)からF.ルーズベルト大統領(民主党)が大統領を奪取。政権交代。上院下院とも民主党が過半数を得た。
1930年の中間選挙時も株価が低迷した(-28.5%)ことから、上院は共和党が何とか過半数を得たものの56から48議席に大幅減。下院は267から217議席と大幅減し、民主党と同数となっていた。

1948年
株価(S&P500種)-0.7% 10月までの年初来推移
    1月  2月  3月  4月  5月   6月  7月  8月  9月  10月
SP500    14.68  13.93  15.08  15.48  16.69  16.74 15.85  15.97 15.49  16.5
年初来    -4.1% -9.0%  -1.4% 1.2%    9.1%   9.4%   3.6%   4.4% 1.2%   7.8%
結果
第2次世界大戦終了後のユーフォリア期であったものの、年初は株価低迷。しかし5月以降上昇し選挙直前の10月までは株価上昇。途中ルーズベルト大統領の死去で副大統領から昇格した民主党のトルーマン大統領が勝利し、実質2期目にはいった。上院・下院とも前の中間選挙時に失っていた過半数を取り返した。
2年前1946年の中間選挙では、株価が-11.9%と落ち込み、上院下院とも共和党に過半数をとられていた。

1960年
株価(S&P500種)-3.0% 10月までの年初来推移
    1月  2月  3月  4月  5月   6月   7月  8月  9月  10月
SP500    55.61  56.12 55.34  54.37  55.83  56.92  55.51  56.96  53.52  53.39
年初来    2.0% -5.0%  -5.0%  -6.0%  -8.0%  -5.0%  -3.0%  -5.0%  -3.0%  -9.0%
結果
2月以降株価は下げ続け選挙前には年初来-9.0%。それまでアイゼンハイハウアー大統領(共和党)が2期務めていたが、ケネディー大統領(民主党)が誕生した。政権交代。アイゼンハイハウアー2期目はすでに上院下院とも民主党が過半数を占めていたが、この選挙でも民主党が上院・下院とも過半数を獲得した。

1968年
株価(S&P500種)+7.7% 10月までの年初来推移
     1月  2月  3月  4月   5月  6月  7月  8月   9月   10月
SP500        92.24  89.36  90.2   97.46   98.68 99.58  97.74  98.86  102.67  103.41
年初来       -4.4%  -7.4%  -6.5%  1.0%   2.3%   3.2%   1.3%  2.5%   6.4%    7.2%
安値           -5.4% -10.1% -9.8%  -5.6%  -0.7%  2.3%   0.4%  -0.7%  1.9%   5.5%
結果
年初来4月までは不安定な相場で、2月、3月と年初来-10%を試す局面が続いていた。4月以降持ち直すも選挙直前では+7.2%の上昇にとどまっていた。民主党政権が2期連続で勝利していたが、共和党のニクソン大統領が誕生した。政権交代。上院・下院はともに民主党が過半数を獲得した。

1992年
株価(S&P500種)-10.5% 10月までの年初来推移
   1月   2月  3月  4月   5月  6月  7月  8月   9月 10月
SP500  408.78 412.7 403.69 414.95 415.35 408.14 424.21 414.03 417.8 418.68
年初来    -2.0%   1.0%  -2.0%  3.0%   0.0%  -2.0%   4.0%   -2.0%  1.0%  0.0%
(安値)     -2.0%   -2.6% -3.6% -5.9%   -1.7% -4.1% -2.4%   -2.1%  -1.1%  -4.9%
結果
年初来株価は横ばいが続く中、所々で下値を試す展開だった。10月末には年初来0%となっていたが、3月-3.6%、4月  -5.9%、10月-4.9%と年初来の安値を試す展開となっていた。結果、ブッシュ父大統領は2期目を迎えることができず、民主党のクリントン大統領が誕生することとなった。政権交代。
民主党は、レーガン大統領2期目から上院・下院とも過半数を占めていたが、1992年の選挙でも過半数を獲得することに成功した。

2000年
株価(S&P500種)-10.5% 10月までの年初来推移
    1月     2月    3月    4月     5月   6月   7月 8月  9月  10月
SP5001394.4 1366.4 1498.5 1452.4 1420.6  1454.6 1430.8 1517.6 1436.51429.4
年初来    -5.0%  -7.0%   2.0%    -1.0%    -3.0%  -1.0%   -3.0% 3.0% -2.0% -3.0%
(安値)    -8.1%  -9.8%   -8.3%   -8.8%    -7.4%  -3.3% -3.8% -3.0% -3.4% -11.1%
結果
ITバブル(ドットコムバブル)の崩壊により、年初から下げ始め2月には-9.8%の局面もあり、5月までも下値を試す展開が続いた。選挙直前でも10月には、年初来-11.1%の局面があった。クリントン大統領が2期勤め上げたが、民主党の再選はなく、共和党のブッシュJr大統領が誕生した。政権交代。クリントン1期目から守っていた共和党による下院の過半数は何とか死守したもの、上院は共和党と同数となった。共和党は上院でも6年間過半数を維持していた。

2008年
株価(S&P500種)-38.5% 10月までの年初来推移
    1月  2月  3月   4月  5月  6月  7月  8月   9月  10月
SP500 1378.5 1330.6 1322.7 1385.6 1400.4 1280 1267.4 1282.8 1166.4 968.8
年初来 -6.0% -9.0% -10.0% -6.0% -5.0% -13.0% -14.0% -13.0% -21.0% -34.0%
(安値) -13.5% -10.3% -14.4% -9.8% -6.5% -13.4% -18.2% -15% -24.6% -42.8%
結果
サブプライム危機から世界金融危機に陥った年は年初から株価は大きく下落して始まった。1月には年初来-13.5%、3月には-14.4%を試す展開もあった。選挙直前の9月にはリーマン・ブラザーズの破綻もあり10月には年初来-42.8%という局面もあった。共和党のブッシュJr大統領が2期勤め上げたが、民主党のオバマ大領が誕生した。政権交代。
上院は、2年前の中間選挙で共和・民主が同数となっていたが、民主党が過半数を獲得した。民主党は下院で2年前の中間選挙から過半数を獲得していたが、257議席を獲得し圧倒的な勝利となった。

2016年
株価(S&P500種)-38.5% 10月までの年初来推移
           1月      2月    3月     4月     5月   6月   7月   8月   9月   10月
SP500 1940.2 1932.2 2059.7 2065.3 2097 2098.9 2173.6 2170.9 2168.3 2126.2
年初来 -5.0%  -5.0% 1.0%  1.0%   3.0%   3.0%    6.0%    6.0%   6.0%   4.0%
(安値)   -11.3% -11.4% -5.2% -0.5% -0.9% -2.6% 1.5%   5.1%  3.7%   3.5%
結果
年初1月から3月までは不安定な相場が続いた。2月には年初来安値の-11.4%まで調整していた。選挙直前まで緩やかな回復はしたが、緩やかな上昇にとどまった。オバマ大統領民主党政権が2期続いたが、トランプ大統領(共和党)が誕生した。政権交代。トランプ氏の勝利が確定した後株価は急上昇した。
2年前の2014年の選挙以降、上院・下院ともに共和党が過半数を占有していた。

2020年の予想
4つ期末時点では、S&P500指数は年初来約10%下げていますが、このままの状況が続けば、トランプ大統領の再選は厳しいでしょう。すでに2年前の2018年の中間選挙では、共和党は下院の過半数を失っています。上院は何とか過半数を維持していますが、この先株価が低迷するようであれば、共和党は大統領だけでなく、上院・下院とも過半数議席をとれなくなる可能性があります。
     1月   2月   3月   4月
SP500       3225.5   2954.2    2584.6    2912.4
年初来       -0.2%    -8.6%     -20.0%    -9.9%
(安値)    -0.5%   -11.6%    -32.2%   -24.2%

まとめ
大統領選挙の年に、株価が低迷すると政権交代がこれまで起こってきました。年初から株価が調整した年はおおむね政権交代が起こっています。1932年(共和党→民主党)、1960年(共和党→民主党)、1968年(民主党→共和党)、1992年(共和党→民主党)、2000年(民主党→共和党)、2008年(共和党→民主党)、2016年(民主党→共和党)は株価が低迷するなか政権交代となった年です(添付の一覧表参照:オレンジの枠塗)。
1948年も株価が低迷しましたが、5月以降株価は急上昇しました。これが唯一の例外となっています。
2020年は2月から大きな暴落が起こりました。新型コロナ・ウイルスの蔓延が実態経済にも大きく影響を及ぼしています。過去の例で行くと、このままぐずぐずした株価動向が続けば、政権交代が起こっても不思議ではありません。6月以降株価が急上昇して再度過去最高値を試すようであれば、トランプ大統領の再選の芽も出てくるでしょう。
パウエルFRB議長は対策できることを全て出し尽くしています。これでもさらに株価の低迷が続くようであれば、パウエル議長に対するトランプ大統領の口撃はさらに激しくなってくるでしょう。または、新型コロナウイルスの責任を中国にむけてさらに貿易戦争が大きくなる可能性もあります。世論調査よりも株価を見ていた方が正しい判断が下せるかもしれません。

1929年以降の年次株価騰落率と大統領選挙、議会選挙結果


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