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ニコニコ学会のあの人気を生み出した、共通善という価値観|江渡 浩一郎さん

う6月15日、武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論Ⅱ 第5回の授業内にて、産総研の江渡浩一郎さんのお話を聴講しました。

先端的な技術を用いた芸術表現「メディア・アート」領域の数多くの活動とそれらの行動の基盤である、共創のありかたについてお話してくださいました。

1990年代のWindowsシリーズが売り出された頃の時代に、今では当たり前となったwww(worldwide web)に興味を持たれ、そこからネットワーク世界の拡がりの可能性へ強い関心を持ち、そしてネットワークを通じてあらゆる人の考えやアルゴリズムが組み合わさって一つの作品ができあがる創作活動の在り方に着目されていったとのことです。その在り方はまさにコラボレーションで、それがいかに重要かということを体感され、複数の人が共に創作活動するための基盤づくりにシフトされていったとのことです。

そこで生み出されたものの一つが、ニコニコ学会β(2011~2016)であり、5年間の期間限定プロジェクトとして「人々が科学に出会う場所」と掲げて場が創られました。

ニコニコ学会はユーザー参加型研究の場であり、野生の研究者を数多く発掘されたもので、あらゆる研究者がここに考えたことや動画等を投じることで場が創られていき、大きなエコシステムを生み出し、一大ムーブメントとなりました。いわゆる共創型のアプローチです。

共創型アプローチは現在色々なところで使われる言葉ですが、本来的な共創とは何なのか。協業との違いはなにか。協業と共創は根本的に異なるというのです。協業は役割分担や利益配分を事前に決めて協力し合って働きかけるが、共創はそれらを決めずにやるということです。その際に非常に重要となってくるのが、共通善をもつこと。共通善とはいわゆる大目的・ビジョンのようなもので、皆どの山に登って共に創るのかを決めるということです。

ニコニコ学会についても、この共創型のアプローチが成功した理由として述べられていたことは、この「人々が科学に出会う場所」というキーワードで、江渡さんは「日本全国の人を全員科学者にしたい」と想いを伝えてあらゆる人や物事を巻き込んでいったとのことでした。

ユーザをイノベーション創出にまきこむ共創の場を提供する、それは一言で語ると単純に見えますが、共通善として語られるように、善があり皆が善いと思えるような方向性のものであるという熱い想いが重要となることは間違いありません。

ブレークスルーは多様性からうまれる。むしろ多様性からしか生まれないと言われますが、多様性のなかで共創しブレークスルーするなかで、いかに共通善を設定できるかが肝になってくる。この共通善を設定する人でありたいと想いました。

江渡さんは、現在、人体拡張センター、共創の場を営み、肉を探求しながらゆくゆくオンラインに人間が住むことができる世界も考えておられるそうです。江渡さんの今後の共通善と創られる未来を楽しみに思います。


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