焦がれない指

水晶のティーポットにタールが満たされて
薄いポットは弾けそうに震えている
空気は希薄で
床は木星の上にある
烈しい光はありません
画面の点滅はありません
膠は解けません
一番熱いのは足の裏のコンクリート
厚い皮膚で覆われた土踏まず
読まなくても展開のわかる小説
毎度恣意的な記号、堂々巡りの数式
陽だまりの道だけでも
人は生きていけるとか
あるいは
ビルほどの氷の柱が起こす反射
排気ガスの染みついた歩道橋の陰
マッチは湿気ている
灼かれてほしがる翼
灼かれてほしい喉
無力にも
タールが溢れる
木星からの太陽は冷たい

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