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欲求を抑え込むことにエネルギーを使っていた

交通事故によって、一緒に働いていた人がある突然帰らぬ人になるという経験をした。それはあまりの衝撃だったので、最初は実感が湧かないというか、どのように受け止めていいのかわからなかった。だけど、時間が経つにつれてその衝撃がボディーブローのようにじわじわと腹の底から効いてきた。(実際にはボディーブローを受けたことはないんだけど。。)

「豊かな将来のために今を我慢して生きる。」という人生観から、「充実した今を積み重ねることで、充実した人生が作られる。」という人生観にシフトしてしまったことによって、その当時の僕の人生が根底から覆されてしまうような感覚に襲われるようになった。

いったいどうして、僕はこの会社で働いているんだろうか。自分でここに来ることを望んていたんだろうか。自分からこの仕事をすることを望んていたつもりはないのに、いつの間にかこんな仕事をしているのはなぜなんだろう。どこで道を間違えたんだろう。何がいけなかったんだろう。

そんなことを考えるようになった。

明らかだったのは、「僕は居場所を間違えている」という感覚だった。ここは僕がいるべき場所ではない。それははっきりと分かった。

昼休みは公園で空を眺めていた

仕事を手伝ってくれていた人が交通事故で亡くなったからと言って、その仕事が中断するわけでもなく、もちろん、同時に抱えていたほかの案件も止まることはなかった。ということで、相変わらずやることは山積みのまま、僕は残業に追われていた。

交通事故で亡くなってしまった彼の代わりの人は、会社が見つけてくれた。とにかく、すぐにでも彼の仕事を引き継いでもらわないと困るので、もう一度一から仕事を説明しなければならなかった。

もうその時は、僕のメンタルは相当やばくて、一日中社内にいると気が狂いそうだった。そのころは、会社の電話が鳴るのが怖かった。毎日、客先から電話がかかってきて、何時までに回答をくれと時間指定までされてその対応に追われていた。会社の電話が鳴るたびに身体がビクッと反応して、心臓の鼓動が早くなるのが分かった。

そんな状態なので、社内にいるのが苦痛だった。せめて昼休みだけでもと、お弁当を買って一人で近所の公園に行って食べるようになっていた。会社の人と話をするのも苦痛だった。誰とも会話をしたくなった。公園で一人お弁当を食べて、ベンチに横になって空を見つめていた。空を見つめながら、いったいどうして僕はここにいて、こんなに苦しい思いをしながら空を見つめているんだろうか。とそればかりを考えていた。

自分の中に強力なエネルギーが眠っていた

そんなある日のこと、あの渋谷で僕にシンプルな質問をしてきた彼女のことを考えていた。

僕と同級生だった彼女はすでに、自分の才能を生かし切ってある分野で成功していた。学生時代に、僕と彼女に間に、そんなにものすごい差があったとは思えなかった。でも、その時にはとても埋められない差ができていると感じた。いったいどこでこれほどまでに差がついてしまったのだろうか。彼女と僕の違いはどこにあるのだろうか?

そんなことを考えていると、ふとあることに気が付いた。僕は、これまでの人生の中で、自分の内側から湧いてくる興味とか、感情とか、そういうものを抑え込んで生きてきたんだ。内側から湧いてくるエネルギーを抑え込む方向にエネルギーを使ってきた。

彼女は逆なんだ。自分の興味、やりたいことに対して、それを開放する、伸ばす、実現することにエネルギーを注ぎ込んできたんだ。僕と彼女の違いはそこにあるんだ。実は僕の中にも、彼女と同じようなエネルギーの塊のようなものがあって、でも僕はそれを抑え込んでいて、彼女はそれを開放してきた。その違いが大きな違いを生んでいるんだと思った。

僕の中心にも、ものすごいエネルギーの塊があるのに、その周りに玉ねぎの皮みたいに何重もの頑丈な皮のようなものでがんじがらめにして、その存在に目をつぶってきたんだ。それが暴れだすことを抑えてきたんだ。でも、そのことに気が付いてしまった。僕にもあったんだ、そういうエネルギーの塊が。

そのことに気が付いてしまったら、僕の中で、その玉ねぎの皮のようなものが、するすると剥がれ落ちていき、中からなんとも言えない強力なエネルギーが湧いてくるのを感じた。そして、そのエネルギーはあまりに強力すぎてもう抑え込むことは不可能であることが解った。

自分の中で大きな変化が起こったことが解った。もう、これまでの自分ではないし、もう後戻りはできない。そういう感覚がありありと感じられた。それは怖いような気もするし、うれしいような気もする。なんとも言えない体験だった。もう、このエネルギーは押さえられない。それは本当にリアルな感覚だったんだ。

ますます会社が嫌になった

その日を境にして、ますます会社が嫌になった。もう、自分のエネルギーを抑えられなくなっていた。それでも、現実は何も変わっていはいない。仕事は山積みだし、毎日、会社の電話は鳴った。公園で昼食を食べて、空を見上げて何とかしのぎ続ける日々が続いた。

やがて、身体に異変が起こるのは時間の問題だった。

(つづく)


自分がうつ状態に陥って、そこから這い上がってくる過程で考えたことなどを書いています。自分の思考を記録しておくことと、同じような苦しみを抱えている人の参考になればうれしいです。フォローとスキと、できればサポートをよろしくお願いします!