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嫁さんの話を続けるね。

福岡赴任から3年ぶりに戻ってきて、久しぶりに顔を出したスポーツクラブのトライアスロンサークルの飲み会で、僕は嫁さんに出合った。

その後、たびたび、そのサークルに顔を出すようになって、嫁さんとも親しく話すようになっていた。

彼女の背景には山々が見えた

当時(今でもそうかもしれないけれど)、自転車競技の練習場として、休日の大井ふ頭が使われていた。
休日になると、どこからともなく自転車乗りが大井ふ頭に集まってきて、集団走行などの練習を行っていたのだ。

その中には、当然、トライアスリートも多かった。

彼女が住んでいたマンションは、僕の家から大井ふ頭までの通りに道にあったので、僕が車で彼女をピックアップして、大井ふ頭に行く機会が何度かあった。

その行き来の車の中や、練習が終わった後の食事などの間に、いろいろな話をするようになった。

そのころはまだ、彼女が長野の田舎の村で育ったこととか、まったく知らなかったのだけれど、彼女にはなんとなく「山のイメージ」があった。
本当に不思議な話なのだけれど、彼女の背景には山の景色が見えるような気がしていたのだ。

だから僕は、彼女といるととてもリラックスできた。
「この人の前では、格好つける必要が無いんだ」と感じた。
そんな感覚は初めてのことだった。

年頃の男というのは、女性の前ではつい格好つけてしまうものだ。
みっともないところは見せられない、という意識が働くのだ。
だから、どこかでいつも緊張している。

でも、この人の前では緊張する必要がない。
今まで僕が出会った女性にはない感覚だった。
だから、なんとなく山のイメージがあったんだろうと思うんだ。

しばらくして、彼女が長野の出身だという話を聞いて、なるほどと思った。
東京や福岡の女性たちにはない雰囲気をまとっていたからだ。
そして、僕のイメージに出てきたあの山々は、おそらく彼女のふるさとの山なんだろうと思った。

太い縄で縛られていた僕

彼女と付き合うようになってから、彼女が僕に初めて会った時の印象について話してくれることがあった。

初めて会った時に、トライアスロンサークルの忘年会会場になったお店の前に集合した。

最初にも書いたように、僕は3年ぶりの参加だったから、知らない人ばかりだった。
だから、みんなとはちょっと離れたところに立っていた。

そんな僕に気づいた彼女は、まだ、自分たちの仲間だと知らないうちから、「ああ、この人は何かに縛られていて、窮屈そうだな。」と思ったと言った。

まるで、何か太い縄で縛られているようなイメージがあったと。
「その縄が見えるようだった」と言った。

それを聴いてとても驚いた。
だって、当時僕は、本当にいろんなものに縛られていて、とても苦しい思いをしていたのだから。
そのあたりの詳しいことについては、このnoteにもずっと書いてきた。
当時は、「こうあるべき」がたくさんあって本当に苦しかったのだ。

そんなわけだから、僕が隣に座った時に、「私がこの人の縄を解いてあげなければいけない」と思ったらしい。
本当に、驚くべき話なのだけれど、彼女がそう言うのだから、本当のことなんだろう。

人柄は外見に滲み出る

彼女には、僕を縛る縄が見えていて、僕には彼女の故郷の山々が見えていた。

「人を外見で判断してはいけない。」というけれども、人柄は外見に滲み出るものだと思う。

その人の服装やファッションはもとより、言葉遣い、しぐさ、表情などに、内面が色濃く反映していると思う。
だから、どうしてもその人柄が滲み出てしまうんだよね。

まあ、そんなわけで、長野の村で育った女性に会ったのは初めてだったし、何よりも、女性の前で格好をつける必要が無いと思ったことが初めてだったので、僕にとってはとても不思議な出会いだったというわけだ。

(つづく)

※ちなみに、この記事の写真は、彼女の故郷のシンボル的な山。高社山。

自分がうつ状態に陥って、そこから這い上がってくる過程で考えたことなどを書いています。自分の思考を記録しておくことと、同じような苦しみを抱えている人の参考になればうれしいです。フォローとスキと、できればサポートをよろしくお願いします!