Fリーグ2022-23 プレーオフ決勝プレビュー 新たな時代の前に、立川は第2のシュライカー大阪となれるか
プレッシャーのかかった準決勝に勝利した勢いからか。はたまた、頭のなかが冷静になっていなかったのか。試合後の公式記者会見の場で、立川アスレティックFCのキャプテンである日本代表FP上村充哉は「名古屋の一強時代は終わったと思っている」と口走った。
この時、ツイッター速報で会見の様子を打っていたのだが、この言葉が出た時、思わず顔を上げてしまった。上村は特に表情を変えた様子はなかったが、内心では焦りがあったのかもしれない。会見が終わってしばらくしてから、広報から「名古屋の一強時代を終わらせる存在になりたい」という意図であるとの訂正が入ったのだ。20年以上、スポーツ報道の現場に身を置いているが、初めての経験だった。
すでにツイッター速報で言葉を配信していたので、事の顛末を紹介することにさせてもらっているが、フットサルが人気スポーツではないことを示す、ある意味、象徴的な出来事だなとも感じる。もっと大手メディアが会見の内容を配信していたり、ライブ中継が入っていたりすれば、訂正などしようがないからだ。
個人的には、訂正を入れることなく、現在のチームの代表兼選手であり、チームの元キャプテンであるFP皆本晃と同様に、ビッグマウスキャラで行ってほしい気持ちが強かった。もちろん、名古屋オーシャンズの一強時代というのは、10年以上に渡って継続的に出し続けた結果の上にあるものだ。そのため、たとえ今年のプレーオフで立川が勝利したとしても、立川が名古屋と肩を並べたと言い切ることはできない。それでも、そういう気概を持っていることを示す言葉として、非常にインパクトがあるものだ。
また、この1年に限れば、確かに今の日本フットサル界は「名古屋と立川の二強」と言える状況にある。昨シーズンの全日本フットサル選手権、今シーズンのオーシャンカップは、いずれも立川と名古屋が決勝で対戦して、タイトルを一つずつ分け合っている。今シーズンのレギュラーシーズンは、勝ち点「13」の差がついているが、名古屋が1位、立川が2位である。その直接対決の結果は1勝1敗。名古屋がホームで3-2の勝利を挙げた一方、立川は2,000人を超える観客が集まったホームで4-1の勝利を挙げている。
そして上村の言葉とは背景が異なるが、実際に来シーズン以降のFリーグでは、名古屋の一強時代が終わる可能性が高いと思っている。上村は立川が名古屋と肩を並べる存在になることを前提にしているが、僕はしながわシティが、Fリーグ・ディビジョン1(F1)への昇格を決めたことが、新時代の到来を告げると考えている。豊富な資金力を有するしながわは、F1昇格を機に、さらなる戦力補強に出るはず。すでに多くの選手へオファーを送っているという噂もあるが、選手が今オフからすぐに加わるかは難しいところ。それでも、2、3年後には多くの選手を日本代表に送り出すクラブになっていることは間違いない。
今回のプレーオフ決勝は、この「二強時代」を前にして、立川がFリーグ王者として名前を刻めるかどうかの決戦になる。プレーオフ準決勝と違って、プレーオフ決勝には、シーズン1位の名古屋にアドバンテージはない。前の週にバルドラール浦安との試合ができており、試合勘があること、スポーツコートのフィーリングを把握していることは、第1戦に向けたアドバンテージになる。
これまでであれば、連戦になればなるほど、プレーオフは名古屋に有利という感覚があった。印象としては、走れる若手の数は立川の方が多く抱えているように映るが、セントラルがなくなり、選手たちが連戦を経験することが少なくなったなか、今もフィジカル面で名古屋が他を凌駕しているのか、あるいは経験の差を見せてねじふせられるのかは興味深いところだ。いずれにしても、立川は駒沢で行われる最初の2試合のうち、最低でもどちらかを勝たなければ、立川の戴冠は難しくなるだろう。
当初、「このプレーオフ決勝を機に、名古屋、しながわ、立川の3強時代の到来を告げることになるか」というテイストで、このプレビューを書こうと思ったのだが、現時点ではこの先、立川が継続的に優勝を争えるチームになる姿は想像しにくい。どちらかと言えば、かつてリーグを制した時のシュライカー大阪のように、チームとしてのピークが来ている印象がある。現在の名古屋は、あの年の名古屋以上に強いことは間違いないが、選手権とリーグ戦で勝利していることもあり、立川のなかに名古屋に対する苦手意識はないだろう。
3チーム目のFリーグ王者誕生となるか。それとも、名古屋があらためて一強時代の継続を示すのか。プレーオフ決勝の第1戦は、2月18日の14時にキックオフを迎える。
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