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それでも僕はハッピーエンドを望んだ【Spec Ops: The Line】

いつか書きたいと思っていたが、この度「#心に残ったゲーム」というキャンペーンをやっていたのでここで書くことにした。

他の人の記事を見ていると「是非遊んでください!!!」とオススメしているような印象を感じる記事が多いと感じたがここではあえて遊んでほしくない、でも心に残ったゲームを取り上げたい。

※スクリーンショット等の画像は貼っていませんが、グロテスクな内容を書いていますので、ご注意ください。


このゲームの概要

このゲームはドイツのゲーム会社が作ったTPS(三人称視点のシューティングゲーム、日本で有名なのはスプラトゥーンやメタルギアなどと同じジャンル)で、PCやPS3などで販売された。

シューティングゲームとしては

撃って敵を倒す→敵が反撃してくるので隠れる→弾薬をリロードして飛び出し撃つ

を繰り返す凡庸なシューターでこれといった面白みも何もない(一方でクソゲーというわけでもない)。しかし、シューターとして面白みがないことがこのゲームを語る上で重要なことなのだがそれは後で説明したい。ちなみにマルチ対戦モードもあるらしいがもう8年前のゲームなので人はほとんどいないし、一度も遊んだことはない。


アンチハッピーエンドな自分

突然にはなるが、僕はハッピーエンド、特にアメリカ映画みたいなテンプレ(強大な敵が現れる→主人公やその仲間が協力して倒す→ハッピーエンドみたいなの)ハッピーエンドが嫌いだ。理由を聞かれると回答に困るが、ストーリーが予想できちゃうから、ストーリー突っ込みどころが多いから、負けた敵に同情をしてしまい(判官びいきとでもいうのだろうか)、映画の雰囲気に入り込めないからなどがあるのかもしれない。ゲームでも洋ゲーのキャンペーンは苦手でCall of DutyやBattle Fieldの新作を買った時もキャンペーンはほぼやっていない。そんな中Steamのセール漁りでたまたまこのゲームを見つけ、好評とのことだったので600円払って遊んでみることにした。


※ここから先はストーリーのネタバレを含みます。遊びたいと思った方はSteamに行って買ってみましょう。そんなにスペックもいりません。



































やっぱりここまで来ちゃったか。まあオススメしないゲームだから全部読んでからでもいいかもしれないね。


救いようのないストーリー

このゲームの魅力はストーリーにあるがその中身は陰鬱なストーリーで、下手な鬱ゲーより気分が悪くなる。まず初めに主人公は砂漠に覆われた大都市ドバイにいる味方部隊を助けに向かう。そこで敵と戦うことになるわけだが、このゲームにはいわゆる黒幕がおらず(というより既に死んでいる)助けるはずの味方と殺し合う。その結果、民間人を大量に(しかもかなりエグいやり方で)虐殺してしまいそれを主人公たちは敵のせいとし、いないはずの黒幕に立ち向かっていく。

特にこのゲームの素晴らしい点として、徐々にこのゲームのメインテーマである「シューターゲーへのアンチテーゼ」を問いかけており、制作者の意図を強く感じることができる。序盤は普通のFPSのキャンペーンのように簡単なチュートリアルから始まり、主人公達がドバイに来た目的を説明してくれており、「砂嵐に覆われたドバイに残った部隊を助ける」英雄になるために敵を殺していく、という流れをスムーズに理解できる。

しかしながら前述した虐殺事件以降(この場面でも丁度いいタイミングで強力な武器が置いてあり、これを使って対処しろというよくある構成になっている)何のために戦うのか、極限状態で自身の良心をどう守るのかといった問いかけが始まり、それは昨今の勧善懲悪なシューターゲーのストーリーの批判に繋がっていく。

極限状態の時ならば人を殺すことは許されるのか?

主人公たちは多くの許されない(現実でも、普通のゲームでも)民間人への虐殺を行ってしまうがそれを「仕方のないこと」と割り切り、嘘をつき、その責任をすべて敵に擦り付け敵の本陣へ向かう。蛇足にはなるが、このゲームでは民間人への発砲、殺害のペナルティは存在しない(むしろ発砲していかないと摘む)。その点もこのゲームの変わった(と片付けていいのだろうか)点だろう。よく勧善懲悪ものを斜めから見たときにあるような「敵にも家族がいた」とか「元々は善人だった」といったような弁明どうでもよく感じる。いや、そう割り切らないとやっていけない状態に主人公はなっていく。特に主人公たちの口調がストーリーを通じて荒々しくなっていくところは、主人公たちの感情の変化を強く感じていく。一方でこのストーリーを通じて少し違った感情を持つ人が一人だけいる。そうプレイヤーだ。

プレイヤーVS制作者という戦い

ここまでのストーリーを見てピンと来た人もいるかもしれないがストーリーの内容自体は「プラトーン」や「地獄の黙示録」といった反戦映画と似たような内容になっている。だが映画と違いゲームではプレイヤー(受け手側)がストーリーに介入していき、より強い印象を受ける。映画だとストーリーの内容を受け取るだけが、ゲームでは自身の手で人を殺している。普段僕たちゲーマーが喜々としてやっていることがこのゲームでは自身の心に深く刺さる(もちろん気にしない人もいるだろうが)。ゲーム中でも「英雄らしくなってきたか?」や「ゲームのし過ぎじゃないか」などいろいろな点でこれまでのプレイを批判してきて良心の呵責に責められるのもポイントが高い。

たかが数時間のプレーだがそれでも捜査しているキャラクターに同情を感じてしまい、少しでも救いのある終わり方をと模索するがそんなストーリーはどこにもない。様々な箇所で選択肢があるが全て同じ結末を迎えるようになっている。

特に印象的に感じた出来事を一つだけ紹介する。ストーリーの途中で難民たちからリンチを受ける場面があるが、もう二度と民間人への虐殺をしないと誓っていた自分は、攻撃をせず、逃げようとして死んでいった。そもそもそのような選択肢はなく銃を撃つことでしかシナリオを進めることができなかったのだが、それでも自分は何とか幸せになる道筋を作ろうと努力し泡と消えた。

あんなにベタなハッピーエンドが嫌いだった自分がハッピーエンドを模索していたのだから驚きだった(実はただベタなストーリーが嫌いなだけなのかもしれないが)。

最終的に幻聴を聞いていただけで黒幕はすでに死んでいたことが分かり、それまで行っていた悪行(シューターゲーとしては当たり前に行っていること)が全て英雄になりたいと行動した自分のせいだったことが分かったあと主人公は最後の選択をすることになる(1つを除いて全く救いのないストーリーだし、残りの1つもしっくりは来ないストーリーだが)。


ゲームの評価

ひたすら陰鬱なストーリーを浴び続けることになり、あまり良い気分にはならないが鬱ゲーとして見たのならかなりの良作と言えるだろう。一方でゴア表現が強かったり、ゲーム的な爽快感はほとんど得られないため人を選ぶ、というより普通の万人にはお勧めできないだろう。そもそも遊んでいて辛くなるのでもう二度とやりたくない。


それでもやりたい、という人はどうぞ。


Gentlemen, Welcome to Dubai

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