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青野くんに触りたいから死にたい



※最新刊12巻までのネタバレあり。
ご注意ください。


























「青野くんに触りたいから死にたい」12巻が発売されたのですぐに読んだ。
グロくないのに怖い。だけどすごく面白くて登場人物が魅力にあふれる。

話が進むにつれて明かされる主人公とその彼氏(幽霊)が抱える問題。
主に機能不全家族で育った子供の苦悩が描かれている。

最新刊では主人公優里とその姉である翠ちゃんのやり取りが
息を吞むほどの迫力があり、漫画だと分かっているのに
今、目の前で優里が話しているようだった。


暴力。この話の中では「殴る」の言葉で語られていたけど
無視、性加害、モラハラなどの暴言、殴る以外の暴力だって
もちろん含まれていると思う。

「家族」とはなんと便利な言葉かと思う。
そしてその便利さは自分自身にも染みついて判断力を鈍らせる。

家族なんだから耐えなきゃ、家族なんだから許さなきゃ。

本当にそう?
自分のことを大切にしてくれない家族なのに?


私は昔から10歳年上の姉が怖かった。
機嫌の悪い時は傍若無人に当たり散らし、時には暴力も振るった。

「殴られると、どうして恥ずかしいのだろう」
これも漫画の中に出てくる台詞だ。

私も、恥ずかしかったのだ。
だけど外面のいい姉が気まぐれに友人の前に姿を現すたびに
「お姉ちゃん綺麗だね、頭もいいんでしょう?」
なんて褒められるから
「違うよ。あいつは褒められるような人じゃないんだよ」
と言いたいけど証明できるわけもなく
ただ笑い話にできるような余白を残しながら
「普通に殴ったり蹴られたりするよ~?」
なんて笑って話していた。


母からは無理やり行きたくないところに連れ出されそうなとき
無視して引き返していたら、背中を蹴られたことがある。

父からは夫婦げんかの仲裁に入ったとき、
顎を思い切り殴られて意識が飛びかけたことがある。


私はそれを、まるで心がそこに存在していないかのように無視した。


19歳の時、どうにもならなくて精神科を受診した。
注意力がかなり散漫になっていた。
現金を持たずに家を出てしまい、家族を呼ばれて母にばれた。
何も聞かれなかった。

数年後、母が家計簿に残した短い日記を目にしてしまった。
私が精神科を受診し呼び出されたその日。
「鬱なのか?はーー。こんな時に迷惑をかけやがって」
と書かれていた。



「家族」をあがめて
「結婚」に心酔し
「子供」を勲章のように思う人がいる。

彼ら彼女らはとても幸せだと思う。
それは結構なことだとも思う。
だって何も悪くない。素晴らしき事。


だけどね、それを当たり前にされて
そうでない人間にそれを押し付けるのはやめてほしい。
だって、それを受け入れてしまったら
私の、私たちの存在がなかったことのようになるでしょう?
わかるかな。


こんな文章を打ちながらもう涙も出ないくらいには
私は私の生い立ちを受け入れている。


おそらくだけど、私よりもっと受け入れていないのは姉だと思う。

私はずっと姉を強い人だと思い、自分を弱いと思っていた。

だけどここ最近姉のことを知れば知るほどに思うようになったことがある。
この人もしかして、私よりずっと弱いのかな?


身内以外の人間から嫌われることを過剰に恐れ
出来もしないことを出来ると言ったり
自分にはさも人脈があるようなそぶりを見せ、期待させる。
時には家族を売ることも厭わず
自分の地位、価値を上げることに必死だ。


「殴る」人は寂しいから殴る。
自分と同じようにみじめで、孤独で、価値のない人にしたくて殴る。

誰かから受けた傷を、自分より弱いものにつけて
それを見て癒されている。

ぞっとするけど、真実なのだと思う。



自分が若い時苦労したのだから、後輩にも同じように苦労してほしい。
自分だけ楽するなんて許せない。という人がいる。

実際にその人と話したとき、そんな考え方の人がいるのかと心底驚いたことを覚えている。



だけど世の中には私が知らないだけで
そんな人が想像よりはるか多く存在しているのかもしれない。
誰かを踏み台に強い私を装いながら。



「その人にどんな事情があったとしても、許してあげる必要はないんだよ」
「だってあなたもその人と同じくらい大切な存在だから」

これも作中に出てくる台詞だ。



私はやっぱり許せない。
私の家族を許せない。
私は家族を愛しているかもしれないけど、好きではない。

母の弱さも、姉の弱さも、父の弱さも、
すべて私への暴力だったから。


私は、許せない自分を赦す。
誰かがいう「家族なんだから分かり合えるはず」という言葉には
何の価値も感じられないから。


傷つけられた私は生きている。

許せないままの私はここで生きている。

愛する人とただお互いを大切にしあう関係を求めて
私はこれからも建設的に、強く、生きていく。

仲の良い家族に触れるたび
「うらやましいな」と思う私を抱きしめて生きていく。


誰かの価値観には沿わない。
強制を望むなら、関係を断ち切ることも手段のひとつだ。
私が守らなければならないのは、私の心のみ。


もう誰にも私を攻撃させない。
誰にも私を傷つけさせない。


世界中に私と同じような思いや、もっと辛い目に遭った人たちがいるのでしょう。「同じ」だとは言いません。私の苦しみを誰かが完璧に理解できないように、私もあなたの苦しみをすべて知ることはできないから。


それでも、ひとりではないと思っていいでしょうか。

あなたにもぜひ、そう思ってほしいです。

どこかで闘っている人がいる。私の他にもいる。

そして私はそのすべての人に生きて、幸せになってほしい。

幸せがなんなのか、それはきっと各々知っているはずです。

それを大切にしてください。
馬鹿にしないでください。
尊重して守ってください。

あなたの価値観を
あなたの望みを
あなたが辛かったことを
あなたが忘れたくないことを
あなたが許したいことを


生きましょう。
私たちはおそらく強いのです。

その強さはすべて自分のために使っていいのです。

誰かのために何かを成し遂げなくていい。

なんなら使わなくてもいい。


弱さに傷つけられても生き残った私たち

その手で自分を傷つける人のことを守らないで。
強さはすべて自分を愛することに使っていいんです。



生きようね。

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