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すてきな女むてきな女⑥

2月の再開以来、なっちゃんとは頻繁にLINEをするようになった。どの友達よりも頻繁に連絡を取っている。

『この間のあと寝る、聴いた?』

私がなっちゃんにすすめた又吉のラジオ。それは【あとは寝るだけの時間】。
昔一緒に暮らしていた又吉、パンサー向井、サルゴリラ児玉の3人が、リビングで寛いで話しているのをそのまま放送しているような番組。リスナーはそれをこっそり盗み聴きしているような感覚になる。
クスクスと笑える話や、不意を突かれ大笑いしたり、同じ放送を何度聴いても楽しい。
「あと寝るを聴いてたら、R(なっちゃんの娘)がママの笑い声が気持ち悪いって笑」
「あと寝る聞いてたら、私の笑い声にママがびっくりしてた。」
なっちゃんも聴きながら大笑いしているみたい。

なっちゃんがおすすめしてくれたのは【隣の雑談】。
ジェーン・スーさんと桜林直子さんが雑談するポッドキャスト番組。
雑談と言ってもちょっと高度なものが多い。頭の片隅にある言葉ではあらわし難いモヤモヤの話とか。かと思えば時々、本当にどうでも良い話の時も。
分かる分かると共感したり、そうかな?と疑問に感じたり、ちょっとバカバカしくて笑えたり。

ラジオはパーソナリティーがテレビよりも近く感じる。テレビと違ってメールや手紙を読んでそれに答えてくれたり、一方通行ではないからかもしれない。テレビでは聞けない細かい話やプライベートな事も語ってくれる。
その人の人柄がダイレクトに伝わってくる。


3月。
なっちゃんは長期休暇をとり娘のRちゃんとスリランカへ旅立った。お母さんの介護から少し解放され束の間の休息。
帰ってから旅行の報告と素敵な写真を沢山送ってくれた。写真を見ているだけで私も癒される。
そういえば長らく海外旅行に行ってない。

4月。
実家に帰ると母がなっちゃんから私へのお土産を預かってくれていた。スリランカの紅茶とお香。
この日は他の友達と約束がありなっちゃんには会えなかったので、私はなっちゃんがまだ読んでいない、又吉の『月と散文』に手紙を添えて母に託した。

その後のなっちゃんとのLINEでは当然、又吉の話になる。
「(又吉)なんで独身なんやろ(うちらもそうやけど)」
「あんなに魅力的やのになんでやろうって思う。又吉の相手がなっちゃんか私やったら面白いのにー。ってこれ打ちながらにやけてしまった。」
「むくみちゃんか私やったら3人で暮らすって約束にしとこ笑笑 だいぶ妄想がひろがってきておかしなことになるわ。」
「又吉も長谷川書店、絶対気にいるわ。それで3人でブックカフェとか開いて。めっちゃ良いプラン!」
「私も同じこと考えた!笑」
「めっちゃウケる」

又吉となっちゃんと私。3人とも独身。
私達の妄想は又吉の知らないところで勝手にどんどん広がっていく。

5月。
ゴールデンウィークの帰省に合わせ、なっちゃんと再会。
またまたなっちゃんが地元のビストロを予約してくれた。いつもありがとう。
前回同様、話すことに夢中で食事がなかなか進まない。途中何度もお店の人に急かされながら食事をする。
私達は食べるのが遅くて少食。2人とも食べきれず、同じくらいの量を残す。
食べ物を残すのは本当に申し訳ないし嫌だけど、ごめんなさい。

そしてハセショヘと向かう。
今回はネンさんに連絡を入れていたので居るはず。
「お久しぶりです。」
「あっ。」
こちらを見てネンさんは驚いた顔をしている。
「えっ?2人とも知り合い?」

ハセショにはなっちゃんも私も1人で訪れている。
ネンさんは勿論、なっちゃんと私が繋がっている事は知らないので驚いていた。
「どんな関係?」
「小学校の同級生。今年になってある縁で再会して。」
「2月に1回来てんけど、ネンさんお休みで。」
「それで、連絡くれたんや。今日何かあったなと思っててんけど、思い出せへんで…。今、カレンダー見たら『むくみ』ってちゃんと書いてたわ。」
ネンさんは店のカレンダーを見ながら、いつもの
ように穏やかな微笑みを浮かべてそう言った。

3人で近々ハセショで行われるイベントの話、近くの洋菓子店のおじさんの話、自費出版の本はどうやって選んでいるのか、などなど沢山話した。
多分、1時間くらいネンさんの仕事の邪魔をしていた。
(迷惑な客すぎる)

そして、前回と同じようになっちゃんが私の本を、私がなっちゃんの本を選ぶ。
気がつけば2〜3時間ハセショに滞在していた。

「この後、〇〇(和食系ファミレス)にいくよね?」
「勿論。」
ハセショからファミレスに移動し、夕食も食べようということになった。

またまた話はあちこち飛び回る。お互いのパートナーの話、身体の話。

「最近コンタクトで本が見にくくって。でも駅の電光掲示板も見にくいし。」
「分かるー。老眼、この数年で急に進んできた。私はモノビジョンにしてるで。」
「モノビジョンて何?」
「コンタクト、片方は遠くが見える度数にして、もう片方は近くが見えるようにしてるねん。」
「そんなことができるの?」
「うん。自分で調節してる。」
「じゃあ今度、むくみちゃんにコンタクト合わせてもらおうかな。」


私は眼科のクリニックで働いている。
大学病院、検診センター、企業看護師、治験コーディネーターと色々な職場を経験して、落ち着いたのが眼科だった。
特殊科(一般的な外科や内科以外の科)での勤務がスタートだった私は、看護師としての劣等感があって、看護師を辞めたいと思った事が何度もあった。
でも眼科で仕事を始めてから、私にはこの仕事が合ってるなと感じるようになった。一般的な看護師としてはへっぽこかもしれないけど、眼科でエキスパートになれればそれでいいかなと思えるようになった。


なっちゃんの家から私が働く眼科までは2時間くらいかかる。
でもなっちゃんは私にコンタクトを合わせて欲しいからと遠路遥々来てくれる事になった。

「私は出版社で働いてたんよ。日本中あちこち飛び回ってたし、お出かけするのにも良い季節だし全然大丈夫。むしろ楽しみ。」
本当になっちゃんは素敵だ。

ファミレスからの帰り、閉店間際のハセショに再び顔を出した。ネンさんはびっくりしていた。
「まだ一緒にいてたん?仲良いなぁ。なんか2人とも似てるね。」

今日も7〜8時間一緒にいた。


今回なっちゃんが私に選んでくれた本
石牟礼 道子 著 苦海浄土
よしもと ばなな 著 海のふた

私がなっちゃんに選んだ本
町田 康 著 告白

購入した本(自分で選んだ本も含む) 上段:なっちゃん 下段:私 
フライドポテトは鉄板

石牟礼さんの事は存じ上げていなかった。何でも凄い人らしい。ということしかまだ分かっていない。

よしもとばなな 海のふた 
なっちゃんはこの本を読んで読書が好きになったらしい、思い出の一冊。
今、読んでいる途中。

舟を編む
この映画が大好きで、少し前にNHKでやっていたドラマも良かった。
原作を読んでいなかったので、購入。

最近、読書ができていない。
書きたい欲が強くて、読みたい熱が低下している。

誰かに書け、と言われている訳でもないのに、何でこんなに書くことに追われているんだろう。

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