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【全文公開】不登校の子はなぜゲームに熱中するのか 16年の取材から見えた親の心構え

不登校新聞

 「うちのこがゲームに熱中して困っている」「ゲーム障害になったらどうしよう」。不登校とゲームをめぐり、悩まれている親御さんはすくなくありません。そもそも、不登校の子どもはなぜゲームに熱中するのか。そして、親はどんな心構えで子どもと向き合えばよいのか。不登校経験者と心理・医療の専門家の語りから考えます。

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 この数年、「ゲーム障害」に関する報道や記事が散見されるようになりました。背景には、2019年5月、「世界保健機関」(WHO)が「ICD―11」という国際疾病分類に「ゲーム障害」を加えたことが関係しています。「ゲーム障害」とは、ゲームの開始・終了など時間のコントロールができなくなっている状態であり、かつゲームが生活の中心になっており、家庭や職場または学校などで問題が生じている状態が、ある程度長期間(基準は12カ月)続いている状態を指します。そもそも、子どもはなぜゲームに熱中するのか。そして、親に必要な心構えとはどのようなものかについて考えます。

つらい現実から離れるために

 ゲームに熱中する理由について不登校経験者へ取材をすると、「学校のことを考える時間がつらい」「ゲームの世界では達成感が得られる」という声がよく聞かれます。つまり、つらい現実から離れるためにゲームをしていたということです。

 Aさんもその1人で「ゲームによって、現実の世界から自分自身を遮断できた」と言います。ひきこもっていたAさんはその後、ゲームを通じてできた知人とともにゲームイベントに参加するようになるなど、ゲームがひきこもりを脱するきっかけになったと言います。


命の浮き輪 ゲームの卒業

 「ゲームは不安の海におぼれて、命が沈んでしまわないための浮き輪の役割をはたす」。そう指摘するのは、およそ半世紀にわたり、不登校の子どもと親の支援に携わってきた心理カウンセラーの内田良子さんです。子どもからゲームを没収することはタブーとされる最たる理由がここにあります。ただし、ゲームを長時間していることは親としても気になるところ。この点について内田さんは「親が学校へのこだわりを捨て、家を居場所に学校の外で学び育つことを、心から認められるようになると、子どもがゲームに費やす時間はぐんと減る」と指摘します。 

 それでも「うちの子がゲーム障害になったらどうしよう」と悩まれている親もいると思います。臨床現場でさまざまな子どもたちと向き合う児童精神科医の関正樹さんは「親が心配している子どもの大半は『今、ゲームに熱中せざるをえない理由』がきちんとあり、いずれはゲームを卒業していく健全なゲーマーである」と指摘します。これはさきほど紹介した不登校経験者の声とも重なるものです。また、「うちの子はゲーム障害かも」と見なすことについては「どこかふつうとはちがう異質なものとして理解するということになる」と警鐘を鳴らします。

 不登校とゲームをめぐり、「ゲームの没収」のほかに親がしてはいけないこととして「ゲームの約束事を親主体で決める」「成績と結びつける」などがあります。しかし、そうした細かいテクニックうんぬんの前に大事なことは「今はゲームが必要なんだ」と信頼する心構えであり、わが子を見る際の親のまなざしをふり返るということです。親が自分を「困った子」として見ているか、「困っている子」として見ているかは、子どもも敏感に感じ取ります。こうした親の心構え、親のまなざしの見直しこそが、命の浮き輪であるゲームから子どもが卒業していくうえで大切なことだと、不登校経験者や専門家への取材を通じて感じています。(編集局・小熊広宣)

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1998年に日本で初めて創刊された不登校の専門紙。 創刊前年の夏休み明け前後に発生した中学生の自殺等をきっかけに、「学校に行くか死ぬかしないという状況を変えたい」との思いから創刊しました。 ミッションは「学校で苦しむ子どもが安心して生きていける社会の創造」。