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6月交流会「ヘイジツロードショウ」

こんにちは。スタッフの古川です。

学校へ行けなかった平日、何をしていましたか?

たとえばゲームをする、とかペットとたわむれる、とかお昼ご飯をつくる、とか・・・・・・。“テレビを見る”とか。状態や心のようすは人によって千差万別ですが、当時していた行動はどの地域、どの世代をみてもよく似ているもの。学校に行かずテレビを見るというのは不登校生の大半が共通して持つ経験と言えます。

今回は不登校ラボの交流会の一環として「不登校だったころ見ていたテレビ番組」というテーマのもと、 ぼおっと眺めていた番組をまとめ、全員で一本の番組表を作成するイベントを開催しましたので、そのレポートを記していきます。

イベントのルールはかんたん。参加者は不登校をしていた当時を思い返し、「こういう番組を見ていた」、「こんな内容だった」、「この言葉が印象に残っている」などの会話をしていきます。そのなかから、当時の放送時間にあわせた午前6時から翌日の午前0時までの番組表を埋めていきます。放送局や時代、曜日は一切関係なし。とにかく参加者それぞれのつぎはぎな記憶から、番組表の完成を目指します。当日の参加者は全員20代であったため、2000年代後半から2010年代後半の番組が多く登場しました。それでは内容を見ていきましょう。

まずは朝6時から9時。この時間はテレビを見ている人、見ていない人がはっきり分かれました。不登校後半期間にフリースクールに通っていたAさんは、通学のある日にしっかりと起きられるよう、毎日朝は学校に通う同級生と同じくらいの時間に起きていました。そのため早朝から放送される番組とは縁があったと言います。『ポンキッキ(フジテレビ)』『おはスタ(テレビ東京)』など子ども向けの番組から、『スッキリ(日本テレビ)』、『めざましテレビ(フジテレビ)』といったニュースまで、家族で朝の仕度とともに見ていたといいます。対して、参加していた筆者の僕は、朝の番組を当時まったく見ていません。朝のリビングという家族共同の空間を自室にこもることで避けていたからです。このように、朝の時間帯は人によって視聴状況に大きな差が見られました。

次に10時から17時、日中の時間帯です。この時間こそ、いわば不登校のゴールデンタイム。学校へ行かない状態を、つらくとらえている人も楽ととらえている人も同様に暇を持てあます時間です。おもな番組として『笑っていいとも!(フジテレビ)』、『ヒルナンデス!(日本テレビ)』といったお昼のバラエティや、『ひるおび!(TBS)』、『グッディ!(フジテレビ)』などワイドショーが多く名を連ねました。家でお昼ご飯を食べながらこれらの番組を視聴していたという回想が多く、なかには紹介されていた料理をつくりながら見ていたという人まで。さらに「当時のワイドショーの内容は?」とトークを続けていくと「イチロー、ヤンキース移籍」や「トランプ・クリントン米大統領選」など時代を感じるニュースが相次ぎました。

また、この時間帯の番組として根強い人気を誇ったのが「映画」でした。今でこそ配信サービスが充実しており、見たい番組を見たいタイミングで見ることができますが、数年前の僕らにそのような環境はありません。毎日お昼に映画を1本放送する『午後のロードショー(テレビ東京)』は、することがない期間の大きな楽しみだったとBさんは語ります。『シャーロックホームズシリーズ』から海外のB級サメ映画までさまざまな作品と出会ったことが、現在の知識や興味にもつながっているそう。ほかの参加者からも、『羊たちの沈黙』、『プラトーン』など当時初めて見た映画が今も強く記憶に残っているという声があがりました。


最後は夜18時から24時。学校に行く行かないを問わず、テレビをつける人の多い時間帯です。筆者の僕はこの時間、おもに野球中継を見ていました。不登校期間に何か好きになるものを見つけようと考えた結果、ほぼ毎日放送される野球に白羽の矢が立ったのです。以降、好きになった千葉ロッテマリーンズは現在でも応援を続けています。ほかにも『天才てれびくん(NHK Eテレ)』、『Q様(テレビ朝日)』、『しゃべくり007(日本テレビ)』といったバラエティ番組が名を連ねました。


こうして「不登校のテレビ番組表」が完成しました。イベントを振り返ると、やはり不登校生にとって大きく記憶に残るのは「学校に行っていない時間」であるのだなと感じます。それぞれが抱える罪悪感や背徳感とは対照的に、明るく光っているテレビ。時に我々を傷つけ、時に希望を与えてくれていました。映画やスポーツ観戦といった生涯の娯楽へつながることもあります。あれから時代は変わっていますが、このようなメディアを通したコンテンツが、元不登校の体の一部をつくっていることはまちがいないのでしょう。なにはともあれ、「テレビ」という切り口から当時を振り返ることができ、とても楽しい時間になりました。

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