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スライドボード

唐揚げが食べたい…。
無性むしょうに唐揚げが食べたい…。
 
車を走らせながら、
どこの弁当屋にしようか迷う。
 
ギリギリまで迷った
一番近くのお店に入店。
 
店内でメニューを見る…が、
もう唐揚げしか見ていない。
 
だが、唐揚げにも選択肢があった。
 
4個、6個、10個
 
(個数選べるんだ…。
 いや~唐揚げ食べたいとはいえ、
 10個は無理…。
 と言うか4個以上は多すぎ…。
 写真を見る限り4個で充分な大きさ。
 これでお腹いっぱいだって…)
 
注文が決まる。
 
「すいません唐揚げ弁当お願いします」
何個になさいますか?」
 
4つでお願いします」
「では番号お呼びしますので、
 少々お待ちください」
 
やがて奥の方からパチパチという音と、
揚げものの良い香りが流れきた。
 
「10番でお待ちの方、
 お待たせしました唐揚げ弁当です。
 ……ありがとうございました」
 
弁当を受け取り、車に乗り込む。
 
弁当を助手席に置き、
車を走らせ自宅へ向かう。
 
車内は幸せな匂いで充満じゅうまん
満たされすぎて…若干拷問じゃっかんごうもん
 
早く食べたい…
気持ちばかり先走さきばしる。
 
交差点を右折する。
すると唐揚げ弁当が音を立てた
 
シャーーーッ!
 
「?」
 
(何、今の?)
 
弁当を見ても、
微動びどうだにしてない。
 
(ダメダメ。
 ここは運転に集中集中)
 
そして今度は左折
 
シャーーーッ!
 
「?!」
 
(また?!)
 
気になったがもうすぐ自宅。
そのまま車を車庫に入れる。
 
かばんと弁当を持って、
自分の部屋にけ上がる。
 
芳醇ほうじゅんな香りが自室を包む。
 
中央のセロハンテープをがし、
いざ唐揚げ弁当とご対面…。
 
「???」
 
(ん?なにこれ?)
 
弁当の半分はご飯。
そして残りのとても広いスペースに、
伸び伸びと唐揚げが4つ寝転がっている。
 
私は弁当を持ち上げ…傾けてみた
 
シャーーーッ!
 
もう一度。
 
シャーーーッ!
 
これはもしかして…
10個用の容器じゃないの?
 
私の目の前で、
軽快に右へ左へ移動する唐揚げたち。
 
まるでスライドボードで、
練習をするスケート選手のように。
 
当店の唐揚げは、
お客様のお口に入るまで、
トレーニングを欠かしません。
 
そうひと言、
書いてくれれば良かったのに…。
 
では、いただきます♪


 このお話は若干フィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。

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